産経ニュースに載った「米国国立公文書館の重要資料発掘(上)」という記事を読んでみる(一応完成)
- jomosanzan_ahm
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1.このあまりにもひどい記事について 【月刊正論】保存版!米国立公文書館の重要資料発掘(上) 慰安婦は「性奴隷」では絶対になかった テキサス親父日本事務局・藤木俊一 - 産経ニュース sankei.com/premium/news/1… @Sankei_newsさんから
2016-05-16 22:44:382.すでにはてなブックマークで「既知の資料を『発掘』とか言う」や「雑な史料の読み方」といった指摘がなされているが、自身の理解を確かめるついでで、この産経(正論)記事を読んでこの数日で連ツイしてみることにする。
2016-05-16 22:49:383.まず、前段階として過去に「テキサス親父」名義で有名な既知の資料『日本人捕虜尋問報告第49号』を「発見」したと言って、ひどいトリミングと浅い「史料読解」という、ほぼ同様のことをやらかしている d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/2…
2016-05-16 22:56:434.今回の「発掘」については、いぜんzakzakの「テキサス親父」名義でのこういった記事があったが、書かれている状況的に同じものと思う。「事務局」名義の「発掘」記事は『正論』という媒体ゆえだろうか zakzak.co.jp/society/domest…
2016-05-16 23:02:065.さて、産経(正論)の「発掘」記事だが、細かい問題点を挙げるとかなりの数になりそうなので、まず大枠として、以下の2点を指摘しておく。
2016-05-16 23:05:066.まず、数百点(政府調査だけで260点以上、以降の民間調査で500点以上)におよぶ資料が存在し、それらに基いた各種研究も行われている中で、わずか3つの、しかも既知の資料で、他の資料との比較もないまま、都合の良い記述だけを拾って、全体への「反論」にしているという問題
2016-05-16 23:07:557.次に、「奴隷」という用語について、何の根拠もなく、俺様定義(というか、定義なしの「はずがない論法」)で用いるという問題。
2016-05-16 23:09:599.さて、タイトルに「発掘」と書かれているこの記事、なんと記事本文内で「目新しいものは見つけられなかった」「アジア女性基金等のサイト上でみたことはあるが」「吉見義明氏の『従軍慰安婦資料集』」「2007年には、産経新聞等での報道」と、既知の資料であることを述べてしまっている
2016-05-16 23:15:5710.2007年の産経というのはこのdempaxさんの記事に書かれていることかな d.hatena.ne.jp/dempax/20070512
2016-05-16 23:17:1011.2007年産経記事についてのツッコミは碧猫さんが行っていたようだ。既知の資料を「発見」したかのようにのべ、都合よく「読解」するという、まったく同じことをやらかしていた模様。 azuryblue.blog72.fc2.com/blog-entry-138…
2016-05-16 23:18:4412.さて、今回の藤木氏の記事で挙げられている資料は「東アジア尋問センター(S.E.A.T.I.C)心理作戦班 尋問紀要No.2」「連合国翻訳通訳部 南西太平洋地域 調査報告書 No.120-β 日本での環境」
2016-05-16 23:22:1613.「連合国翻訳通訳部 連合国軍最高司令官総司令部 調査報告書No.120 G-2蔵書 日本軍での環境」という3点。
2016-05-16 23:23:5414.しかし、これらの報告書、そもそも、「テキサス親父」名義でひどいトリミングをしていた「捕虜尋問報告49号」と同じ尋問をまとめたのが東南アジア翻訳尋問センターのもの。さらにそれをもとにATISの調査報告書が作成されている ameblo.jp/scopedog/entry…
2016-05-16 23:25:58※「ATIS」は連合国軍翻訳通訳部のことです。書き忘れていたので追記。
15.少なくとも藤木氏の記事の(上)にはこれらの報告書の関連は記されていないようだ。ここにも史料読解の雑さが出ているように思う。
2016-05-16 23:28:5116.「この書類こそ、慰安婦や慰安所の実態が詳細に書かれている。しかし、理由は定かではないが、これらの書類は、機密解除の1992年当時、吉見義明氏の『従軍慰安婦資料集』(大月書店)、それから
2016-05-16 23:34:1417. 約15年後の2007年には、産経での報道はあったものの、多くは見当たらない。」(産経webページでは3ページ目)などと藤木氏は書いているが、この手の歴史史料でそれだけ表に出ていれば十分ではないかと思うし、
2016-05-16 23:37:5218.他の資料も含めた研究によってすでに全体状況がわかっていて、その既知の内容から特別逸脱するわけでもない一部の資料をそんなに多用する理由がない
2016-05-16 23:38:4419.「一般にはあまり知られていないようだ」って岩波新書の『従軍慰安婦』(吉見.1995)にも資料として使われているんですけどね。そして、吉見教授の『従軍慰安婦資料集』は地方の図書館でも借りることができる。藤木氏の調べが甘いだけ
2016-05-16 23:50:41いったん区切りここから翌日
20.東南アジア尋問センターの尋問紀要2号(以下「2号」)について、「その中には1943年に書かれたマニラ管区通信班大西中佐によって書かれた『認可された食堂と売春宿に関する規則』という小冊子に関して書かれており」(産経4~5ページ目)とあるのだが、
2016-05-17 21:14:0821.吉見『従軍慰安婦資料集』や政府調査資料集でその「小冊子」について書かれているのは連合国軍翻訳通訳部の調査報告120号(以下「120号」)の方
2016-05-17 21:17:2522.「2号」も「120号」作製の元になっていることを考えれば、そこに「小冊子」が入っていた可能性も無いではないがその場合なら吉見『従軍慰安婦資料集』にその旨の記載はあるだろうし
2016-05-17 21:18:1923.『従軍慰安婦資料集』で読める「2号」の第9パラグラフの記載がほぼミッチナの「慰安所」に関する内容しか見受けられないことを考えると、これは藤木氏がなにか勘違いをしている可能性が高いように思う。
2016-05-17 21:19:46