木村草太先生の報ステ(H280524)発言に関連して解散権の制約を考える

基本的に自分の勉強整理用まとめです。比較憲法学、政治学的な視点は基本的にいれていません。「法学部で憲法学として勉強する範囲のまとめ」というところでしょうか。なお、流れがわかりやすいよう時系列は少し入れ替えています。
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ドン・プロタジオ @meisouchizu

大石眞先生は、芦部説について「当事者の間で形成され、規範的効力を認められるべき「国政上の習律」が認められることを前提とした議論」ではないか(『憲法講義Ⅰ』)と述べられているので、そういう習律の確立に期待していたものと思われます。 twitter.com/ginkanmuri_020…

2016-05-25 21:45:24
銀冠 @ginkanmuri_0202

芦部先生が「不当」という不明瞭な言葉を用いてまで解散権の濫用を牽制しようとした(少なくともその様に見える)のは、実務上の不合理回避の為やむを得ないとしてなし崩し的に認めた7条解散に、僅かでも歯止めをかけようとされたのかなぁ……と。 twitter.com/meisouchizu/st…

2016-05-25 21:08:28
ドン・プロタジオ @meisouchizu

なるほど。長谷部先生のこの論文ですかね。ci.nii.ac.jp/naid/400017555… 木村先生の話も、若干説明にマズい部分はありましたが、解散権に何らかの方法で歯止めを設けるべしという問題提起としては良かったのかもしれません。 twitter.com/inotake77/stat…

2016-05-25 22:15:40
井上武史 Takeshi INOUE @inotake77

私の記憶違いでなければ、長谷部先生がそのような見解だったと思います。ただ、ご関心は両院の任期の一致か、ねじれの防止だったかもしれませんが。 twitter.com/meisouchizu/st…

2016-05-25 22:07:31
ystk @lawkus

なお、たまたま今日書いていたので引用するが、解散権行使の大義とか正当性とかに関する俺の見解はこういうものです。俺個人の見解というより、通説的見解としても、違憲の問題はそうそう生じないということだと理解している。 twitter.com/lawkus/status/…

2016-05-25 00:22:25
ystk @lawkus

いわゆる7条解散について解散理由の正当性の議論はどんどんやればいいと思うが、内閣の解散権を法的に縛るような議論にはなりにくいよね。法的な論点は、「違憲ないし違憲状態の定数不均衡を是正しないままの解散は違憲か」くらいかね。基本的には政治問題なので有権者が判断することという話になる。

2016-05-24 12:28:35
ドン・プロタジオ @meisouchizu

私もローカス先生と同じ見解かな。内閣の解散の是非については政治的批判の対象にはなっても、法的に拘束することは困難で、結局のところ、解散総選挙における国民の判断如何によって決せられると。ただ、これはこれで、複雑な意思の表明である選挙で信任されたなどとは言えないという話にもなるのだが

2016-05-25 22:08:04
penben @penben2020

ちなみに7条解釈の普通の説明は、たとえば、「『国民のために』とは、天皇自らの権威に基づいて国事行為を行うのではなく、天皇が国民の信託に基づき、国民の統治における正統性を根拠として行われることを意味する。」(新基本コン憲法39頁(山元))。

2016-05-25 11:49:03
penben @penben2020

「『国民のために』とは、『国民に代わって』あるいは『国民の信託に基づいて』という意味であり、本来国民の権原に属するもの(であり)…天皇が明治憲法下のように自己固有の権原に基づいて行うのではないということを意味し、国民主権のもとでの当然の事理」(野中他憲法Ⅰ(5版)・124頁)。

2016-05-25 11:52:29
penben @penben2020

であり、およそ、「実質的な意味で国民の利益になるように」などは含意されていないし(そうだとすれば解散以外の国事行為にも全部同じ議論を当てはめるのか?)、ましてそれが違憲性の根拠となる可能性が示唆された解釈などはとうてい(憲法学の標準的な議論に照らして)一般的とはいえないと思う

2016-05-25 11:55:30
penben @penben2020

発言の文脈や解釈にもよるだろうが、いったい具体的にどういう発言をしたのか気になる…

2016-05-25 12:01:30
penben @penben2020

一般論として解散権の行使が濫用にわたってはならないとはいえるであろうが(なお、その前提として、内閣の解散権は不信任のあった場合に限られずいつでも自由に行使しうると解するのが通説であり、69条限定説は少数である)、その一般論の根拠をことさら「国民のために」という文言に求めるのは(続

2016-05-25 12:12:34
penben @penben2020

続)かえって、他の「国民のために」という文言が明示的におかれていない部分の解釈に困難を生じるおそれもあるし、「国民のため=合憲、国民のためでない=違憲」などという粗雑な憲法談義のタネにしか(ついでにいうと「国民」の要件は法律事項(憲法10条)だ)ならず、妥当ではあるまい。

2016-05-25 12:16:21
penben @penben2020

仮に「そもそも7条説(やその他の説)が妥当でなく、解散権の根拠は69条に求め、かつ解散権の行使は不信任のあった場合に限定されるべきだ」という立論であれば、既存の学説としても少数説ではあるがきちんと存在するし、解釈論として十分ありうるであろう。

2016-05-25 12:27:38
penben @penben2020

木村草太先生の報ステの元発言を確認したが、やはり疑義が多いと言わざるを得ない

2016-05-25 21:39:17
penben @penben2020

・69条により、不信任決議が可決された場合に解散ができることは明確であるが、それ以外の場合に解散ができるのかははっきりした規定がない→これはOK。・これまでの69条以外の解散については7条が根拠とされてきた→これもOK。

2016-05-25 21:42:24
penben @penben2020

・7条は天皇の国事行為の規定であるが3号に衆議院解散と書いてある。ただ、他の行為(たとえば国会の召集)には憲法の他の条項に根拠があって、7条の助言と承認は形式的に天皇にお願いするだけなので、実質的な内閣の解散権の根拠とするには無理があるという説が有力→(続

2016-05-25 21:45:35
penben @penben2020

続)これも7条説に対する批判としてはメジャーなものであり、7条説の弱点として広く共有されているところなので、OKだとおもう。しかし、・7条を根拠に解散できるという説も「なくはない」→その学説評価は疑問。むしろ7条説は(やや消極的な理由ながら)「通説」(含意に留意)ではなかろうか。

2016-05-25 21:48:49
penben @penben2020

・7条説を取る学説も、「いつでも好きなときに内閣が解散できる」と解釈している論者はほとんどいない→「できる」の含意次第の面があるのだが、少なくとも「違憲」の問題を生じる可能性が具体的にあるという論者のほうが「ほとんどいない」のではないだろうか。

2016-05-25 21:52:11
penben @penben2020

・7条を見ても、「国民のために」やると書いてあるから、「国民のために」ならないような解散、たとえば争点がはっきりしない解散とか党利党略による解散は「できないだろうということになる」→これも前同。これを「不当」レベルで批判する学説は有力だと思うが、「できない」との表現は疑問。

2016-05-25 21:54:37
penben @penben2020

木村先生は、その後ドイツやイギリスの例を挙げた上で、「野党から不信任案が出された時点での解散」について、「これは非常に『よくない』解散」であるという表現を使っている。これは「できない」とは区別された表現というべきだとおもう。つまり、(続

2016-05-25 21:59:30
penben @penben2020

続)つまり、木村先生の口語的な説明をより正確な文章に落とすと、「党利党略による解散は『違憲』である。野党から不信任案が出された段階での解散は『違憲とまではいえないが不当』である。」と述べているように解釈しうる(ただし必ずしもそうであるとは断じ難い)。そうだとすれば(続

2016-05-25 22:01:32
penben @penben2020

続)「党利党略による解散」を「不当」の問題として扱っている芦部説等の枠組みからは少なくとも一歩踏み出しているし、違憲審査の対象になるものではない、望ましい憲法習律にすぎないという説からも踏み出すことになろう。そのような見解が現時点で(憲法学上)一般的とは評価しがたいと思う(続

2016-05-25 22:05:41
penben @penben2020

続)もちろん時間の制限のある中でそれを全て正確に説明しきることは困難であることは前提であるが。また、当職などは先端の憲法学説などには当然疎いので、最新の学説状況などは把握しかねるが、少なくとも一般的な憲法の教科書ベースの話としてはそういうことのようにおもう。

2016-05-25 22:08:20
penben @penben2020

まとめると、完全なフリーハンドで解散可能という見解に批判的であることには何ら問題はないが、それを「できない」という「『違憲』を連想させるような表現」で説明することは学説上も疑問だし、その根拠に7条の「国民のために」という文言を持ち出すのは明らかに独自説でしょう、という感じかな。

2016-05-25 22:15:14
penben @penben2020

ただまあ、不信任案を否決しておいて「不信任案が提出されたので解散」というのは確かにわけわかんないけどね…

2016-05-25 22:17:20
penben @penben2020

「そんな解散は、違憲とまでいえるかはともかく不当であると評価するのが憲法学の立場からも一般的ですが、私としてはむしろ明確に違憲と言うべきだと思います」といった発言であれば、特段の批判に値するようなものではないと思います。それこそ賛否は別としてね。

2016-05-25 22:21:36
penben @penben2020

あれ、連ツイの中で「国民のために」の文言引用に対する批判がちょっと抜けたな。それは昼間に述べたということで…

2016-05-25 22:24:13