不知火に落ち度はない　48（長門）

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

結構不味いなこりゃ。いつもみたいに殴って終わりで済まない相手か。 「ちなみに幾らほど必要になる？」 「もう半値ほど」 ５０％割り増しかよ。 そりゃ無理無理。幾らかわからんが強気の対応すぎんだろ。 強気になれるだけの駒を揃えてるんだろうけどな。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そこでちらっと、長門が。 ──俺を見た。 そして、微笑んでみせる。 あ、そっすか。俺そのために呼んだンだね。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

──おい。あの宴会芸俺にやれっての？ ──できるだろう。あの外した宴会芸。 ああ、そっすね。 酔っ払った勢いでやった、あの宴会芸ね。 さあ、ではみなさんごらんあれ。 種も仕掛けもございません。 これから始まるのは一世一大の大パフォーマンス。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

できっかな。久々すぎて自信は無いが。 ソファに腰掛けた脚を見えないようにぶらぶらと降り、目の前の木製テーブルの中心を見定め。 んじゃせーのっっと！！ #不知火に落ち度はない

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脚を全力で中心めがけて跳ね上げる──！！ #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

脚はそのまま真っ二つに机をへし折り、突き抜けたあと斜め45度キープ。 セクシーなおみ足見放題だぞ、この野郎。 ぱらぱらと破片が飛び散り、社長もマッチョメンも凍り付いた。 さて、ここからが追い打ちの時間である。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「うだうだうるせえな社長さんよ」 「おい、兵頭──よせ」 長門が顔色を変えて、俺の腕を掴んでみせる。 若干どころじゃなく控えめで、今にもふりほどいてくれと言わんばかりである。 んじゃ、遠慮なくそうしますわ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「お前もすっこんでろ、艦娘」 「か…はっ」 どす、と膝を長門に入れる。 っておーい。そのリアクションやめて。 めっちゃ身体をくの字に曲げるのやめて。 お前のゴリラ腹筋、そんなんじゃ全然効かないでしょ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

社長さんこと、ボリスの顔をご覧？ 何が起きたかわかってない顔してるだろ？ 多分情報的に言えば、長門の方が俺より強いと思い込んでたんじゃなかろうか。 おじさんぶっちゃけ鍛えてますから、がんばれば蹴り一発でテーブルぐらい真っ二つにできるんすよ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そして、長門は床に崩れ落ちて、ごほ、ごほ、と蒸せてる。 つまり、艦娘＞俺の公式が崩れて、俺＞艦娘という状態になった上、強いと聞いた長門がこのザマなわけです。 相手からすると俺が突然ゴリラに変わって襲ってきた状態だね。 じゃ、もっぱつ揺さぶるかしら。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「こいつの金はどうでもいい。俺のじゃねえからな」 長門の髪の毛を掴んで引き起こすようにする。 見えないように長門が目で言う。 『今日は椿エキスにしてみた❤』って。 うっせえ知るか。良い匂いだけどさ。 「お使いもできねえ部下の割を食うのが苛つくんだ」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そも長門の方がこういうの向きだとマジで思うんですけどさ。 テーブル真っ二つどころか、握りつぶせるゴリラ握力あるんですけどさ。 艦娘が過剰に腕力出しても驚かないのに、軍人が腕力出したら驚くのナンデ？ 社長さんどころか、部下の人がおびえだしてる始末ですよ？ #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「無駄足だったんなら手土産にスパイの首でも持って帰るしかねえじゃねえか。てめぇのせいだぞ、長門」 座り込んでる長門の腹に一発キック。 「げふっ！！」 だからそのオーバーリアクションやめようや！？ 変な趣味に目覚めたらどうするんですか。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

ちなみに蹴った感触ですが、ぶっちゃけ腹筋に跳ね返されてますよ。 「わ、わかった。話す──話すから…っ まずは」 「防音なんだろ──こいつの仕置きも兼ねて、たっぷり楽しめるんだろ」 うっはー。なにこれ引くわ－。 こんな台詞吐ける俺に引くわ－。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

まあ、テーブル真っ二つ&強化型艦娘1発KOなんて相当だわな。 あとは一言付け加えるだけで済むモード。 「命乞いするつもりでで余さず漏らさず喋れ」 即座に襲いかかれる距離を維持しつつ、俺はそう言った。 コサックダンスのやり方は聞けそうにねーなこりゃ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そんなわけでじっくりと話を聞き終わった俺達は、工場を出た。 「ドッキリ大成功だったな」 「俺をどうして連れてきたかわかったけどな？ わかったけどな？」 納得いかねー！ 適任なのはわかるけど納得いかねー！ そりゃチンピラ見かけしてますよ俺？！ でもね！ #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「はまり役だったぞ。善人面しておきながら、本性は鬼畜なゴリラ提督」 「そこですよー！！ 俺のイメージダウン甚だしすぎるんですよ邪悪なメスゴリラ！」 「ああやめて。もうお腹を蹴らないで」 「ご近隣住民さんのイメージをガンガン下げるのやめてくだち！！」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「あれって俺が、同じ目に遭ってもいんじゃねーかふつー？」 「無理無理。女が蹴られてる姿の方がショッキングだろう？」 自分の性別すら武器にするとは相当なゴリラである。 「私の見てくれはそう悪い方ではないからな。加減して蹴っても、痛そうに見えるだろう？」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

それは大いに同意である。 だが、中身はメスゴリラであり、暴力の塊である。 そこを忘れるなよ、紳士淑女諸君。 「しかし北方は厄介だな。大使館などを利用して秘密裏に動ける」 「ああ。モグリの報告が無きゃ、正直見落としてた」 長門の後援会様々である。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「まさか、本気で向こうの軍が艦娘拉致に乗り出してるたあな。大本営にゃ報告できねーぞこれ」 「出しても関与を否定される。恐らく内務省の横槍だろう」 「正規軍を使うレベルまで来てるってことは──」 「向こうは相当追い詰められてる。二度目のソ連崩壊間近だ」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

北方は今、荒れに荒れている。 陸地適応型の深海棲艦の侵攻。 機械化師団の敗北に、新たな地上戦力の投入。 このままじゃ制空権すら怪しくなると噂されている。 第二次世界大戦中の北の大地が再来しつつある。 艦娘が居れば、それは防げるのだろうか。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

例え、焼け石に水としても、そうせざるを得ないのだろう。 そう思うと──響の顔がよぎる。 あいつは、北から逃れてきた『適合者』だからな。 きっと、状況をある程度は見てしまっているのかも知れない。 ケアが必要だと感じた。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「響の護衛を強化するよう指示を出しとかなきゃな」 「私も協力はするぞ。内外併せてな」 「頼むわ。『目隠しイワン』の話が本当ならヤバすぎる」 童話みたいなファンシーさがある名前とは裏腹の話。 隠密能力に長けた正規の軍人で構成されるチームがいるという。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「防ぐさ。お前と、私と、みんなでな」 とん、と。長門が俺の胸を叩く。 「おう。そうな」 心配してばっかじゃ、いらんねーしな。 さんきゅ、長門。 口に出しては言わねーけどさ。 ここまでしてくれるのには、ホント、感謝尽きねーです、はい。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「じゃ。帰って早速用意すっかな」 「ふむ。ところで兵頭？」 はい。なんですかな、長門さん。 袖引っ張るの可愛い年はとうにすぎてらっしゃいませんか？ ふふーん、って感じで見上げても……あちょっと、そそるけどさ。 #不知火に落ち度はない