【超越】

最悪の事態は起こりうる。常に対案を用意せよ
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雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

最悪の事態は起こりうる。常に対案を用意せよ

2016-06-21 22:06:45
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

コロネハイカラ輸送作戦は、何かとトラブルはあったものの、順調に完遂された。作戦に臨んだのは咆哮艦隊。雪花艦隊の戦闘部隊「第311大隊」は彼らの進軍を妨げる敵艦隊の足止めをすべく、コロネハイカラ沖に散らばって戦っていた。だが、作戦終了も間際というところで問題が起こる

2016-06-21 22:07:47
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

『司令官!聞こえる!?』 第311大隊からの通信だ。長良の焦った声が聞こえてくる。 「何かトラブルでもあったか?」 『島風と萩風が消えちゃったの!忽然と!』 瑠奈花は顔を顰めた。消えたとはどういうことだ?

2016-06-21 22:09:01
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

『さっき敵艦隊に囲まれて…なんとか撃退したんだけど、気づいたら2人がいなくなってたのよ!』 「轟沈の可能性は?」 『有り得ない!二人とも健在だったし、轟沈したなら私のIRCに通知が来るはず』 艦隊の状況を映す司令部室のホログラムにも、島風と萩風の艤装は健在と表示されている

2016-06-21 22:09:34
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

『司令官どうしよう。2人は…』 「作戦を続行しろ、任務優先。今から咆哮艦隊と連絡を取る。向こうの状況を確認次第、次の指令を出す」 長良は了解!とだけ答え、通信を切った。瑠奈花は駆け足でフライトリバティーの司令部室を出た。その数秒後、司令部室の扉は再び開いた

2016-06-21 22:10:56
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

入ってきたのは瑠奈花ではなく、吹雪だった。吹雪は無言で、「島風」と「萩風」のホログラムを睨むように見た。吹雪はしばらく留まった後、踵を返し、瑠奈花が戻ってくる前に司令部室を退室した

2016-06-21 22:11:58
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

【交錯する禁断の糸】第2話-超越-

2016-06-21 22:12:15
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

宿毛湾泊地の書斎で、白雪は静かに読書に耽っていた。白雪はコロネハイカラ輸送作戦は欠席。彼女には他に任務があることを瑠奈花が知っているためである。勿論、留守の間雪花を守るという仕事もあるが。

2016-06-21 22:14:37
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

今は実質オフの日である。皆が戦っている間に休んでいるのは気が引けるような気もするが、これも大事な任務である。白雪の目標はこの書斎の本をすべて読破することだ。今日は7冊読めた。本を棚に戻し、8冊目の本を手に取ろうとした時、白雪は何者かの気配を感じ、動きを止めた

2016-06-21 22:16:27
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「誰…?」 今この泊地には整備技師や清掃の業者くらいしか人はいないはずである。白雪は本能的に、腰のホルスターに手をかけ警戒した。白雪の問に答えるように、ガタンと物音が鳴る。誰かがこの書斎にいる、しかも隠れているとは、こちらに敵意があるということか

2016-06-21 22:18:38
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

やがて、その人物は姿を現した。それは白雪もよく知る吹雪だった。白雪は一瞬警戒を弱めたがすぐに違和感を感じた。吹雪は今、作戦に参加しているはずでは? 「吹雪ちゃん?作戦はどうしたの」 「聞きたいことがある」

2016-06-21 22:21:32
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

吹雪は白雪の問いを無視し、詰め寄った。恐怖か興奮か、白雪は肩を震わせた 「萩風ちゃんのことについて。知ってることを教えて欲しいの」 「萩風さん?」 白雪は目を泳がせた。なぜここで萩風の名前が出てくる?

2016-06-21 22:23:10
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「ごめんね、吹雪ちゃん。私には何のことだかわから…っ!?」 吹雪は白雪の言葉を遮るように、彼女にキスをした。舌を無理矢理白雪の口の中にいれ、絡める 「ね、教えて?」白雪は一瞬惚けていたが、すぐに吹雪を突き飛ばし、腰の拳銃を吹雪に向けた 「吹雪ちゃんはそんなことしない。貴方は誰?」

2016-06-21 22:25:14
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「やだなあ白雪ちゃん。私だよ?」 吹雪は拳銃が向けられていることなど意に介さず、白雪に近づく。その姿は次第にほんの少しだけ大きくなり、髪が伸び、そして目には大きな傷跡が現れた

2016-06-21 22:26:47
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

咆哮艦隊のコロネハイカラ輸送作戦は成功に終わったと知らせを受けた瑠奈花は第311大隊に島風、萩風搜索の指令を出した。海に沈んだ可能性も考慮し、伊168とU-511も招集して徹底的な捜索をかけた 「比叡、吹雪を呼んでくれ」 比叡は頷き、吹雪の通信端末にコールした

2016-06-21 22:28:23
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「司令、少し焦っていませんか」 「そう見えるか?」 「その、大井さんもまだ戻っていませんし…」 瑠奈花は唇を噛み締めた。ソーサラーとの戦い以来、大井は行方不明のままであった。この短期間に麾下を3人も喪失したとあっては大変なことだ。しかもそのうち1人はまだ着任したばかりである

2016-06-21 22:29:43
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「大丈夫、気にするな。きっと事は上手くいく」 いつもの調子で答える瑠奈花に、比叡は少し安心した。瑠奈花がそのつもりならば、自分は彼を支えるまでだ

2016-06-21 22:30:40
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「…吹雪はまだか。遅くないか?」「そうですね…」 比叡がコールをかけてから2分以上経とうとしていた。普段の吹雪なら即座に応えるはずなのだが。気になった比叡は直接吹雪を探しにゆく。しばらくした後、息を切らせた比叡が慌てた様子で瑠奈花の元に戻ってきた

2016-06-21 22:32:25
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「し、司令…吹雪ちゃんもいませんよ!」 「いない?馬鹿な、ここはフライトリバティーだぞ」 まさか飛び降りでもしたと言うのか?この時の瑠奈花達は、吹雪がここから遠く離れた宿毛湾にいることなど想像もしていなかった

2016-06-21 22:33:14
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「意外だな。白雪ちゃんが私を拒むなんて」 口調とは裏腹に、吹雪?は無表情で白雪に迫った。白雪は必死で考えていた。今目の前にいるのは吹雪か、否か 「私の知る白雪ちゃんはもっと素直で、私を求めてくれたのに」

2016-06-21 22:35:12
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

私の知る、という言葉。自らを吹雪と名乗ること。白雪は一つの結論に達した 「まさか貴方…未来から来た?」「察しがいいね」 吹雪はあっさり肯定した。隠すつもりなどないと言わんばかりに 「この時代の吹雪ちゃんはどうしたの?」「安全な場所にいる。心配しなくていい」

2016-06-21 22:37:01
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「今度は私の質問に答えて。萩風はどこにいる?」 吹雪の口調が変わった。正体を現したからだろうか。「知らないわ」白雪は答える 「そう、なら直接頭に聞くまで」 吹雪は白雪を壁に押し付け、頭に顔を近づける。白雪には吹雪が何をしようとしているのかわかった。心を読もうとしているのだ

2016-06-21 22:37:51
雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

この子は一体どれほどの力を…。そう考えた瞬間、白雪の顔は苦痛に歪む。白雪の心に吹雪が入り込んでくる。頭の中をめちゃくちゃに引っ掻き回されている感覚に陥る。白雪は必死に抗う! 「や、やめて…こんなことしても…どうにも…」 「「萩風はどこ?」」吹雪の声が頭に直接響く

2016-06-21 22:39:13