140ssログ6月

Twitterで書いてた雑多ssのログです。刀です。男同士です。
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やまたに @mw_snc

@mw_snc 無骨な指が水槽をつつく。綺麗な魚だ。三日月の言葉に彼は、そうだろう、と頷いた。銀色の鱗が水面に輝く。片側だけ赤色の瞳がこちらを見ていると思うのは、きっと錯覚なのだ。魚が泳ぐ。もうこの子は、刀も戦いも恋も、全て忘れてしまった。そうしてしまった。(石かり)

2016-06-17 15:47:36
やまたに @mw_snc

山谷の薬研がかけられたのは、鳥の姿になる呪いです。 青い蝶の鱗粉で呪いが解けます。 山谷の薬研といつも一緒にいる人だけが呪いを解くことが出来ますが、その人は呪いを解く代わりに聴力を失います。 #のろいをかけられた shindanmaker.com/628920

2016-06-17 15:50:06
やまたに @mw_snc

@mw_snc 助かったぜ、ありがとうな。薬研は笑う。人の身とは笑えるのだ。嘴でなく、刀で刺すことだって出来る。愛するひとをこうやって抱きしめることだって。宗三、一体誰に解呪の方法を聞いたんだ。教えてくれよ。用意するの大変だっただろう。どれにも彼は答えない。答えられない。(薬宗)

2016-06-17 15:54:08
やまたに @mw_snc

山谷の髭切がかけられたのは、猫の姿になる呪いです。 絵に描かれることで呪いが解けます。 山谷の髭切を最も愛する人だけが呪いを解くことが出来ますが、その人は呪いを解く代わりに記憶を失います。 #のろいをかけられた shindanmaker.com/628920

2016-06-17 15:55:40
やまたに @mw_snc

@mw_snc にゃあ、と猫が鳴く。気持ちよさそうに膝で寝る。喉元を擽ればごろごろと。もう、いいのではないか。膝丸はそんなことを考えた。もう、このままでも。ただでさえ自分のことを忘れそうになる兄者に、俺まで記憶を無くしたら。にゃあお、猫が鳴く。肯定も否定もわからない声で。(髭膝)

2016-06-17 16:00:58
やまたに @mw_snc

山谷の膝丸がかけられたのは、最も大切な思い出以外のすべてを忘れる呪いです。 思い出話で呪いが解けます。 山谷の膝丸に呪いをかけた本人だけが呪いを解くことが出来ますが、その人は呪いを解かない方がいいと思ってい… #のろいをかけられた shindanmaker.com/628920

2016-06-17 15:56:04
やまたに @mw_snc

@mw_snc 兄者、と彼は呼ぶ。それ以外知らないみたいに。それ以外、覚えていないように。膝丸、呼ぶと笑う。兄者それは二つ前の名だ。そうごめんね。まったく仕方ない、と呆れる彼は、僕との思い出だけで生きている。そうしたのは僕じゃなくて、修行から戻ったあの子がしたことだった。(髭膝)

2016-06-17 16:42:24

石かりパラレル(途中)

やまたに @mw_snc

@mw_snc 雷が鳴る。祖母が昔、話していた。雷様はお前を閉じ込めようとしているんだよ。その声が忘れられない。だから、小さな頃から雷が嫌いだった。庭で遊ぶ弟というには年の離れた子供たちにも話しかける。髭切、膝丸、雷が鳴るから部屋におはいり。石切丸は雷が嫌いだ。

2016-06-19 18:18:39
やまたに @mw_snc

@mw_snc 雷が鳴る。鳴っている。晴れた空が一転して、予報にもない雷雲が。ごろごろと響く音に、薄く笑みを浮かべる。雷は好きだ。その音の先に否応なく期待してしまうから。楽しそうだな。月を瞳に写した男がそう呟くほどに、青江は雷が好きだった。

2016-06-19 18:22:19
やまたに @mw_snc

@mw_snc その日、天気予報は晴れだった。だから下の弟にねだられるまま、石切丸は図書館にいった。まだ両の指で数えられる年の弟とは母親が違う。その上の弟とともだ。こちらは社会人なのに、と父親の元気さがいっそおかしい。弟なんた生徒みたいなものだ。そう、石切丸は小学校の教諭だった。

2016-06-19 18:28:37
やまたに @mw_snc

@mw_snc 眠ってしまったのは、夕べ遅くまで採点をしていたせいだろう。弟が手がかからないのもある。年の割りに大人びた弟は、教えなくても危険なことをしない。唯一生命の危険を感じたのは、髭切を道路の向こうに見つけて走り出したときだ。それも、もう随分と昔の話で。

2016-06-19 18:32:14
やまたに @mw_snc

@mw_snc 先生。先生、起きて。声がする。成人した男のような、少年のような声だ。どちらだろう、と目を開けると、長髪の、今度は性別すら判別がしにくいひとが目の前に座っていた。先生、おはよう。長い髪をひとつに結んだ男が笑う。気付けば、外からゴロゴロと音がした。

2016-06-20 06:54:09
やまたに @mw_snc

@mw_snc 会えた。やっと会えた。会えたのに、君は不思議そうな顔でこちらを見た。誰だろう、と顔に書いて。膝丸が彼に見えぬように首を振る。ああ、そうだね。そうだ。僕に会えば、なんて、王子様のキスみたいな奇跡は僕には使えなかった。雷が、僕の悲鳴みたいに騒いでいた。

2016-06-20 06:58:54
やまたに @mw_snc

@mw_snc やあ、と微笑んだのは髭切だった。同じくらい、ともすれば青江よりも少し目線が低い。兄さんたちは図書館だよ。でも、君の知っている彼ではないよ。期待するなと彼は言う。膝丸もまた、無理だと話した。でも、期待してしまったのだ。無理じゃないと信じてしまったのだ。僕なら、と。

2016-06-20 07:05:46
やまたに @mw_snc

@mw_snc 青江。低く柔らかい声がする。青江、おいで。飛び込んだ腕の中は暖かくて、幸せだった。青江、次は人になろう。共にあろう。瀬戸内は付喪の身では広すぎるから。青江。約束だよ、青江。私の青江。懐かしい声。それと同じ声で、彼は、君は誰だいと僕を呼ぶ。

2016-06-20 12:25:27
やまたに @mw_snc

@mw_snc 石切丸は記憶を辿ったけれど、特に目の前の人物に思いあたることはない。初めて見る顔だ。彼は自分のことを知っているのに。そう、彼は何故先生と呼んだのか。教え子にいれば、卒業しても確実に記憶に残るような容貌なのに。怪訝な顔に気付いた彼は、笑って絵本コーナーを指差した。

2016-06-21 16:23:40
やまたに @mw_snc

@mw_snc 彼に教えてもらったよ。その先には弟がいる。それで石切丸は納得した。どうして初対面の人間に職業をばらしたのかとは思わない。あの子は、石切丸を兄と呼ばないからだ。石切丸先生、と膝丸は教え子になる前から呼んでいた。頑なに。

2016-06-21 16:30:57
やまたに @mw_snc

@mw_snc 先生、と呼ぶ。膝丸はこうして生まれたときから決めていた。なんでもいい。兄とは呼ばない。そこに都合よく小学校の先生という肩書きがついていたから先生にしただけだ。兄者。たったひとりの兄を呼ぶ。少し現代には堅すぎるね。兄上。それも不自然だ。お兄ちゃん。それがいいや。

2016-06-21 16:36:45