空想の街・氷涼祭'16 最終日 #赤風車
「あ!はいこちらでよろしいです!」「おお?早速の効果か?」「いやそれはどうでしょう」 @nowhere_7 あゆ子は門から廻って来た影を出迎える。秋の色と、極彩色が一緒に目に飛び込んで思わず瞬きをする。「ほほう」「……風車売りのお方ですか?」#はなのえ文庫 #赤風車 #空想の街
2016-07-03 13:45:25あっていたことに胸を撫で下ろした一文字は、出迎えてくれた二人に会釈をした。 「ご覧の通り」風車売りの一文字落葉だ、と名乗って、上がらせてもらう。「本を見せてもらおうかと思ったのだがね、…どうした。俺の顔に何かついているか」 @Ne2_co #はなのえ文庫 #赤風車 #空想の街
2016-07-03 13:49:31「いやぁ、珍しいなあって思ってよ。粋なもんを売りやがる」「あっどうぞ…おあがりください。何の本をお探しでしょう?」 @nowhere_7 縁石を示しながら屋内へ上がる。しまった、見過ぎてしまった……風車とは、こんな音がするものだっただろうか? #はなのえ文庫 #赤風車 #空想の街
2016-07-03 13:57:01帰り際に礼がてら風車を見せよう、と一文字はひとりで片づけ、いざなわれるのに従う。「俳句の本をね。今回の祭では歳時記の催しがあったようだが俺は無学なものだからな」 片仮名が分かりやすくなるようなものはないか、と無茶を訊いてみる。 @Ne2_co #はなのえ文庫 #赤風車 #空想の街
2016-07-03 14:01:22「歳時記の件、御存じなのですね」あゆ子は自分のことのように嬉しくなる。そもそも俳句ならば、と、いくつか句集を見繕う。しかし、片仮名。 @nowhere_7 よろしければ私が代わりに、と言おうとしたところでいさなの静止が入る。 #はなのえ文庫 #赤風車 #空想の街
2016-07-03 14:08:42「兄さんにこんなもん出しちゃあ失礼かもしれんが、ま、これ使って見比べながら読むがいいや」と差し出す『片平仮名いろは』…どう見ても子ども向けだ。いさなはあゆ子に「こういうのはな、自分でやんなきゃ駄目なんだよ」と耳打ちする。#はなのえ文庫 #赤風車 #空想の街 @nowhere_7
2016-07-03 14:11:43「助かる。照らし合わせて片仮名を漢字と平なしで読めるように…いや、兎も角これがいいよ」結局は俺の努力次第だろうがな、と一文字は続け、子供向けのいろは本と幾つかの句集を受け取った。――完全に克服はできずとも、照らせば分かる。→ @Ne2_co #はなのえ文庫 #赤風車 #空想の街
2016-07-03 14:18:29「返却の期限などはあるかね。借りた証として記名もするが」本を抱え、畳の香りを胸へ染みこませる。立てかけさせてもらっていた弁慶をさりげなく体の定位置、左肩あたりに傾けて訊けば、青年が若い女性に何やら耳打ちをしているのが見えた。 @Ne2_co #はなのえ文庫 #赤風車 #空想の街
2016-07-03 14:22:10「こちらに記帳をお願いします」と大和綴じにした冊子を開く。@nowhere_7 「書いて写して写して書いて、ちょいと口にも出してみて、字の稽古なんざそれに尽きらぁ」――ドラ猫だってそうやりゃ字を覚えるんだ、折り紙付きだぜ。といさなは笑う。#はなのえ文庫 #赤風車 #空想の街
2016-07-03 14:29:09「まるで実際にそうしたかのように言うね、お主」示された冊子に丁寧に字を綴る。一文字、落葉、と。よみを振るか迷ったが、一度名乗ったのだしいいだろう。 「入りがけに風車が騒がしくしてすまなんだ。黙らせたくとも塞ぐ口がなくてな」 @Ne2_co #はなのえ文庫 #赤風車 #空想の街
2016-07-03 14:33:28「ははは、実際に、そうした、んだよ。あゆ子先生も覚えときな」といさなは快活に笑う…ドラ猫? @nowhere_7 「はい、ご協力ありがとうございます…いえ、本当に綺麗な風車。不思議な音がするんですね」と、弁慶を見上げる。まるで花が咲いたよう。 #はなのえ文庫 #赤風車 #空想の街
2016-07-03 14:37:39どこか得意げな青年には生返事をし、次に女性のほうへ一文字は弁慶を傾けてみせる。 「塞ぐ口というよりも吹く口なら持ち手の下にあるのだよ。そこを銜えて吹き鳴らしても音がする――珊瑚を打ったようだろう。お二方、贈らせてはくれぬかね」 @Ne2_co #はなのえ文庫 #赤風車 #空想の街
2016-07-03 14:41:13「えっ、いいんですか!」風車たちを目前に悩みはじめるあゆ子の後ろで、いさなが笑みを微笑へと変えた。 @nowhere_7 「……何かに焦がれる音だなぁ。海を恋うのか、空を慕うのか。さて」兄さん見繕っちゃくれないか。と客人に役目を投げる。 #はなのえ文庫 #赤風車 #空想の街
2016-07-03 14:47:28任されることも多いので、一文字は然程驚かずに聞き入れる。数秒考え込み、ひとつ引き抜いた。「青年、お主にはこちらを」 黒に、裏地は白。両面に点々と青が散っている。「吹いてみ給え。点が波紋になる」 さて、女性は自分で選ぶだろうか。 @Ne2_co #はなのえ文庫 #赤風車 #空想の街
2016-07-03 14:57:48「おお、ありがとうさん」早速いさなは息を吹き込む。点が溶けて波紋になって――珊瑚の音、にふと、波の音が交じったような気がする。「……気に入った!」 @nowhere_7 「ではっ!これを!」あゆ子が高々と掲げるそれは薄紅――梅花の色。 #はなのえ文庫 #赤風車 #空想の街
2016-07-03 15:02:40「その言葉が何より嬉しいよ、暇なときには吹き鳴らしてくれ」 お主のは梅花のか、と女性に向き直り、一文字は具合を確かめた。「梅雨時だが雨にも強いよ。案ずるな」 ――気になっていたのだが、青年の影の件は追及しないことにする。→ @Ne2_co #はなのえ文庫 #赤風車 #空想の街
2016-07-03 15:07:03「本は早めに返すよ。借り物だということを肝に銘じて取り扱うと誓おう」恩に着る、と言い、一文字はそろそろ居心地のいい図書館を後にすることに決めた。何があっても、ふたつの風車は一緒に咲き続けるだろう、まるでここにある蔵書のように。 @Ne2_co #はなのえ文庫 #赤風車 #空想の街
2016-07-03 15:09:19おう、といさなが唇の端を上げる。咥えたままの風車が呼気で柔らかな歌を奏でた。 @nowhere_7 「また、ぜひお立ち寄りください!」とあゆ子が礼をする。梅の色の――そう、文好む花の、花の兄の色添う風車が、その両手の中で回っていた。#はなのえ文庫 #赤風車 #空想の街
2016-07-03 15:14:43忘れて忘れないで
「はい、風船どうぞ!」くくりつけられた風船を下さい、という本日3回目の頼みに悟は笑顔で風船を渡した。きっと今日の風船放しに参加するのだろう。彼らが観光目的のお客だったのか、誰かを迎えるための訪れだったのかは、悟には分からない。 #空想の街 #孔雀荘へようこそ
2016-07-03 14:53:05「悟君」寝坊したこちらが恥ずかしい。ずっと仕事をしていたと見える友人に、千草はそっと近づいた。「昨日は有難う。一緒に折り紙とかできて楽しかったよ」 今日、姉さんと約束してるんだ、と続ける。このまま出ていいだろうか。 @ueto_rika #孔雀荘へようこそ #赤風車 #空想の街
2016-07-03 15:11:48「千草さんおはよう!じゃなかった、おはようございます!」慌てて言い直して照れ笑い。昨日のお喋りも手遊びもとても楽しくてついつい今が仕事中なのを忘れてしまう。「仇華さんと約束してたんだ。えっと、ちょっと待って!」→ @nowhere_7 #空想の街 #孔雀荘へようこそ #赤風車
2016-07-03 15:16:14「はい!」昨日折り紙で遊んだ時に、こっそり折っていた風車(を模したぺたんこの飾り)を取り出して、悟はへへ、と笑った。「前に、僕に風車をくれたでしょ。今度は僕から何かあげたいなって思ってたから」お揃いの緑、だよ。 @nowhere_7 #空想の街 #孔雀荘へようこそ #赤風車
2016-07-03 15:20:19受け取ったものは、昨日の折り紙でできた、風車。回らないが、相手が作ってくれたものだ。それもこちらのために。「有難う、お揃いの緑、いいね。悟君、緑好きだもんね」大事にもっていくよ、としっかり袷の内側へ仕舞う。→ @ueto_rika #孔雀荘へようこそ #赤風車 #空想の街
2016-07-03 15:25:07「悟君、じゃあ、またね」 千草は受付にいる相手を正視できず、逃げるように玄関へ向かう。「忘れないでいてくれて有難う。でも、」もし自然に薄れるなら、それでいい。そうなるべくしてなるのだから。 そうして、外へ飛び出した。 @ueto_rika #孔雀荘へようこそ #赤風車 #空想の街
2016-07-03 15:31:36