【PR】20年来のジャンプファンが集結! おっさん3人が語り尽くす『週刊少年ジャンプ』
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昨年8月に集英社がリリースしたアプリ「Myジャンプ」が今回大幅にリニューアル。ユーザーが「編集長」となって、週刊少年ジャンプやヤングジャンプ、ジャンプSQ.などさまざまなジャンプ雑誌に掲載された約450タイトルの中から、好きな作品を選んでオリジナルのジャンプが作れるという、ファンにとってはまさに“夢のアプリ”だ。
そこで、子どもの頃から『週刊少年ジャンプ』を愛してやまない3人の大人に、ジャンプについて熱く語り合ってもらった。
参加者プロフィール

小田雄太さん(36歳)
COMPOUND inc. 代表。グラフィックデザイナー/アートディレクター。多摩美術大学講師。2015年に東京タワーフットタウン内にオープンしたテーマパーク「東京ワンピースタワー」ではCI/サイン計画を務めた。ジャンプ愛読歴は高校1年生~現在。
山内康裕さん(37歳)
マンガナイト/レインボーバード代表。マンガを介してコミュニケーションを生み出すユニット・マンガナイトで、マンガ読書会やイベントをプロデュース。マンガ関連の企画会社であるレインボーバードでは「東京ワンピースタワー」をはじめマンガの関連施設や企画を手がける。ジャンプ愛読歴は小学5年生~現在。
ヨシダプロさん(41歳)
ライター/イラストレーター/編集者。おもしろWebメディア「デイリーポータルZ」で、「かませ犬オリンピック」や「あらゆる本をジャンプっぽくする」などジャンプネタを多数執筆。ジャンプ愛読歴は小学1年生~現在。
――本日は『週刊少年ジャンプ』の中でも、“黄金期”として名高い90年代頃をリアルタイムで読んでいた方々に集まってもらいました。さっそく、みなさんの作った「Myジャンプ」を見せていただきましょう。
※今回は10コスト(月額480円)の中で選定
僕はこれです。
小田さんのMyジャンプ
僕はこんな感じです。
山内さんのMyジャンプ
僕は、ジャンプは今こそ黄金期だと思っているんです。なので、現在連載中の作品だけで選びました。
ヨシダプロのMyジャンプ
――さすがジャンプっ子なチョイスですね。ちなみに、子どもの頃にジャンプを読んでいて興奮したシーンってありますか?
興奮したといえば、『ドラゴンボール』(鳥山明)のトランクス初登場シーンですね。
あぁー。

フリーザが地球にやってきたけど、悟空は死んでしまって戦える奴が誰もいないと。そこで、最後のコマに誰かの足だけが出て、次の週に続く…という形で終わったんですよ。その回がちょうど小学校の修学旅行が始まった日で(1991年)。バスの中で友だちと「あいつ誰だ!?」ってすごく盛り上がりました。超強くなったヤムチャじゃないか、とか(笑)。
覚えてる。あのカプセルコーポレーションのマークも謎で、いったい何が起こるんだ!?ってなったよね。
そうそう。結局、未来から来たっていう斜め上の展開だった。
そんなのわかんないよっていう(笑)。コルド大王もトランクスに一瞬で殺されて、見事に「かませ犬(※ 主人公たちを引き立てるやられ役)」になって。いいかませ犬っぷりでしたねぇ…。
そういえば、僕が中学生の頃に模写したドラゴンボールのイラストを持ってきたんですよ。

これ、どこのシーンか当てていい? ナッパの悟飯への攻撃を目の前でかばったピッコロが、「き…きさまといた数か月……わ…わるく…なかったぜ……」って悟飯に告白するところ。
正解!
この展開、泣かせますよね…。
僕、ここがもう大好きで。『ドラゴンボール』で唯一泣いたシーンですね。超泣いた。
僕がよく模写したのは、フリーザ編のピッコロ。ナメック星人・ネイルとの融合でパワーアップして、一瞬だけ強くなるんだけど、第三形態のフリーザにあっという間にやられちゃって。登場キャラの中で一話しか最強にならなかったって思うと切なくなって、その週はピッコロを模写しまくりました。
――ピッコロ大人気ですね。『ドラゴンボール』のほかにも、連載を追いながら興奮した作品ってありましたか?
『SLAM DUNK(スラムダンク)』(井上雄彦)の山王戦のラストスパート。最終話まで数週間、1つもセリフがないまま試合が進んでいって。勝負が決まったときに、両チームの選手10人がそれぞれ違う表情を見せるんですが、どれも納得できる顔だったんですよね。「マンガって、ここまで表情だけで伝えられるんだ」って感動しました。

あのまま終わっちゃうのが、また最高だったね。
続きはどうなるんだろうと思ったら最終回を迎えて…まぁ、そうなるよねと納得しました。
僕はまさにバスケ部だったので、最後のほうはつらくて読めなかったです。よく部員で『SLAM DUNK』のキャラにたとえると誰だみたいな話をしてましたが、「こんなにうまくないな、俺」と。
――リアルタイムだからこそ味わえた、ほろ苦さかもしれませんね。
あとは、小6の頃に読んだ『ジョジョの奇妙な冒険』第3部(荒木飛呂彦)の承太郎vs. DIO戦。DIOがスタンド「ザ・ワールド」で時間を止めるじゃないですか。僕もドキドキしながら一緒に息を止めて、2人の戦いに没頭していました。

ジョジョは子どもの頃の自分にはまだ難しくて、毎号『ドラゴンボール』とか『幽遊白書』の後にじっくりゆっくり読んでたなぁ。
僕は第1部から読んでたけど、子どもだったから全然おもしろくなくて!(笑) イギリス人だわ、犬は殺されるわ…最初は「よくこんな作品を編集部は続けているな」って思っちゃってました。でも、どんどんのめり込んでいって、今となってはこの作品が世に存在していることに感謝しかないです。

――ヨシダさんは、ジョジョのお気に入りキャラはいますか?
僕は第4部の吉良吉影です。「静かに暮らしたい」っていう、平穏な生活を愛するキャラが大好きで。大学生のときは、吉良吉影になりたいって思ってました。魅力的だった分、ラストの展開はもう…。
「激しい『喜び』はいらない…そのかわり深い『絶望』もない………『植物の心』のような人生を…」ってね。
あとは第3部のホル・ホースの「一番よりNo.2」っていうセリフも好き。ジョジョは「人間賛歌」という作品テーマ通り、学ぶことが非常に多かったです。

ジャンプの歴史は“かませ犬”の歴史
ほかにも模写したといえばこれ、ヤムチャ先輩がやられているシーン。

かませ犬といえばヤムチャですよね。
『北斗の拳』(原作:武論尊、作画:原哲夫)に登場する「南斗五車星(なんとごしゃせい)」は知ってますか? その5人のなかで、「炎のシュレン」と「風のヒューイ」っていうキャラが、一瞬で殺されるんですよ。
――ヨシダさん、かませ犬について話すときが一番いい顔してますね。
あとは、『キン肉マン』(ゆでたまご)の「ビッグボディチーム」。主人公チームに挑んで、たった3コマで瞬殺される奴ら。あれもいいかませ犬ですね。
それから、ジョジョ第1部に出て来るトンペティ一派。ダイアーの必殺技「稲妻十字空裂刃(サンダークロススプリットアタック)」がジョナサンにもDIOにもあっさり破られる。
『聖闘士星矢』(車田正美)の一角獣星座の邪武(ユニコーンのじゃぶ)とかもね。
『聖闘士星矢』だと、蟹座(キャンサー)のデスマスクもすごい。やられ声が「あじゃぱアーッ!」「うぎゃぴー」だとか、聖衣(クロス)に見放されてパンツ一丁になるとか。当時、自分が蟹座だと学校で「デスマスクだ」っていじられるから、牡牛座って言い張ってる奴いましたもん(笑)。

「車田先生は蟹座に恨みでもあるのか?」って思うくらい扱いがひどいキャラでしたよね。いわば、ジャンプの歴史って、かませ犬の歴史でもあるんですよ。
――名言ですね。
あと、かませ犬キャラは、2回目の登場でどうなるかがおもしろくて。
1回目は「俺のほうが強いぜ」って出てきて負けちゃうんだけど、その後ヤムチャみたいに改心する場合もあれば、デスマスクのようにしょうもないキャラのままのパターンもある。
改心というと、『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』(監修:堀井雄二、原作:三条陸、作画:稲田浩司)のポップとか。
そう! 僕、ポップが大好きなんです。ラストで、大魔王バーンの必殺技を指2本で無効化しちゃうんですよ。自分のことを凡庸と思っていた彼の才能が、最後の最後で開花するシーンには感動しました。最初は敵を前に逃げてばっかりだったから。
だけど『ダイの大冒険』にはクロコダイン先輩って名かませ犬がいるからね。図体がでかい奴って、いいかませ犬になるんですよ…。
――最近のジャンプ作品にも、かませ犬キャラっているのでしょうか?
最近はいない気がします。
確かに、印象的な“名かませ犬”はいないかも。
「うぎゃぴー」なんて、あからさまなセリフも言いませんよね。どのキャラにもちゃんと個性があるというか。最初かませ犬かと思いきや、後から力をつけたりする。
『ONE PIECE』(尾田栄一郎)でも、倒されたキャラがまた出てくるじゃないですか。汚名返上のチャンスを与えているというか。
扉絵で「その後」を描いたりしますもんね。
思えば『SLAM DUNK』にもいないんだよね。90年代半ば以降の作品は、どのキャラにもドラマが用意されるようになったかも。
今も印象に残る、ジャンプ巻末の作者コメント

『魁!!男塾』(宮下あきら)とか『聖闘士星矢』とか、ずっと続いていた劇画タッチの作品の系譜がありますよね。でも、90年代に入ると、そういった作品がすぐに連載終了してしまうことが多くなり、悔しい思いをしました。『聖闘士星矢』の次に車田先生が始めた『SILENT KNIGHT翔』とか。
あー! 最後のページで「NEVER END」って文字が出てきたのが衝撃だった。車田先生といえば、『男坂』も最終ページに大きく「未完」の文字。
『幕張』(木多康昭)最終回の作者コメントもインパクトがありました。連載終了時の作者コメントで、読者の気持ちが再燃することってありますよね。

――先ほど作者コメントの話が出ましたが、みなさんはちゃんと読む派ですか?
もちろん読みます。
好きな作家さんの体調を確認するために読みます。あとは、アシスタント関係の話題みたいな裏話。
たまに先生同士がやり取りしたり。本誌は、こういうのが読めるのもいいんだよねー。
あと、本誌の懸賞ページも好きで。昔からずっと同じ人がグラビアを担当しているんです。
昔から変わらないよね。80年代のジャンプも持ってきているんだけど、こっちもほら。ずっと謎の子役さんが変なコスプレしてる(笑)。

裏表紙の内側にある広告も、系統がずっと変わってない。パワーリストとかトレーニングマシンとか、身体鍛える器具ばっかり。
ホントだ(笑)。
ジャンプは今こそ黄金期!
ジャンプは「90年代が黄金期」ってよくいわれますけど、あれってあくまで発行部数の話ですよね。おもしろい作品がそろっているという意味なら、今の連載作品も磐石で、今まさに黄金期だと思います。
そう、本当に盤石ですよね。『NARUTO』(岸本斉史)の終了をどう乗り越えるかと思っていたけど、まったく心配いらなかった。
総じて作品のレベルが高いですよね。
――現在の連載作品のなかで、みなさんのイチオシはどれですか?
『僕のヒーローアカデミア』(堀越耕平)ですね。オールマイトが宿敵と戦ったときは、もう最終回に向かっているのかってくらい盛り上がりました。いっそこのテンションのまま終わってほしい…と願ってしまったくらいの勢い。

おもしろいですよね。今までのジャンプ作品は、いい役・悪い役っていうのは先天的に決められている話が多かった気がする。対して、ヒロアカ(※ 僕のヒーローアカデミア)は、善悪は後天的に決まるという、アメコミ的な思想が取り入れられていて。みんな「個性」という特殊能力を持って生まれる平等な世界だけど、そこからヒーローになるのか悪人になるのか? 人間がそれぞれどういう道を歩むのか?というテーマを打ち出している。
――テーマが深いですね。小田さんのイチオシ作品は?
一番好きなのは『左門くんはサモナー』(沼駿)。主人公の左門くんって、“カス虫”というあだ名の通り、ジャンプ史上最高にどうしようもない奴なんですよ。だけど、何を大切にして何をないがしろにするかの区別がはっきりしている。主人公だからすべてを分け隔てなく受け入れるんじゃなく、極端だけど自分の意志を強く持っているところが、嫌味がないし、キャラクターとしてオリジナリティがありますね。

九頭龍芥(くずりゅうかい)の存在もいいですよね。クズ仲間が現れたことで、作品として強くなった感じがする。
『左門くんはサモナー』は、キャラの立ち位置を自由に変更し、そもそもの前提をくつがえすギャグマンガなのがすごいと思います。ジャンプのギャグ枠って、90年~00年代は『すごいよ!!マサルさん』(うすた京介)や『ボボボーボ・ボーボボ』(澤井啓夫)とか、基本的に主人公がボケて周りがツッコんでいたけど、『左門くんはサモナー』はボケ役とツッコミ役が固定されず、しかも斜めからボケる。これが現在のギャグマンガのスタイルなのか、と。
一方で、『ブラッククローバー』(田畠裕基)みたいな、昔からジャンプにある王道作品もやっぱりいい。現世の地続きではない、ファンタジー世界を舞台にした作品なら、王道も受け入れられるんだな、と。
「この戦闘に誰か乱入してきそうだな」って思ったら、来るじゃないですか。アスタ来そうだな…来た! みたいな(笑)。こっちの読み通りの展開がバチッと来る気持ちいい作品ですね。
予想が当たっても、その通りになったらなったで熱くなってしまう。おもしろいマンガを読む醍醐味の一つですよね。
幼なじみのライバルがいて、ともに魔法帝を目指していて…っていうのが、「『NARUTO』と設定丸かぶりじゃん!」とも思ったんですけど(笑)。でも、やはりこういう王道路線はジャンプに欠かせないんですよね。

「どの作品が一番好き?」という、ジャンプファンにとって最高に楽しく、かつ最高に悩む話題
――斬新な作品が生まれる一方、昔からの王道もある現在のジャンプ。「友情・努力・勝利」というテーマに関しては、今はどうでしょう?
ジャンプのテーマって「友情・努力・勝利」と世間一般では言われていますけど、実はシンプルに「血筋」なんじゃないかと思っています。
――えっ、血筋?
万人に対して一番響くのは「血筋」なんですよね。
そう。少年マンガの構造的に、連載が続けば続くほど、「実は、血筋の結果がこうだった」というテコ入れをしないと、ストーリーが見えてこない場合が多いのかな、と。『ONE PIECE』や『NARUTO』、『幽☆遊☆白書』(冨樫義博)…最初はなんでもない人がひょんなところから能力を手に入れするけど、とどのつまりは親父がすごかったっていう。

読者が実体験として持っていて共通で話せる話題って「血筋」なんですよ。自分の家族構成や生い立ちと重ねて読むから、読者の心をつかみやすいのかもしれない。
自分の母親が滅却師(クインシー ※)だったらどうなるんだろう、とか…。
※ 滅却師:『BLEACH』(久保帯人)に登場する退魔の一族
(笑)
その点、『僕のヒーローアカデミア』の主人公の緑谷出久(みどりやいずく)は、最初から普通の血筋であることが明確ですよね。お母さんは平凡で、本人は「無個性」。オールマイトに見出されたのも、自身の持つ良心のおかげだったようなものだから。
そこは次世代のマンガの特徴の一つかもしれませんね。
――そう考えると、現在のジャンプ連載作品って、ますますバラエティに富んでいますね。
そうですね。昔のようにメインの価値観が一つだけあるのではなく、いろんな価値観を提示する構成になっている。それは、ジャンプ本誌を読まないとわからないんですよ。さまざまな可能性と読み解き方が同居しているのが、今のジャンプのおもしろいところ。多様性がありすぎて、もはや子どもの読み物じゃなくなっているのでは、という気さえしています。
割と大人向けですよね。『ONE PIECE』だって、小さい子にはわかりづらいところもあるでしょうし。でもそれでいいと思います。大人になって読み返すと、ちゃんとわかる。大人にとっても読むに値する作品が多いですよ。
これは3人同じ意見だと思うんですが、ジャンプの黄金期は常に今だと思っています。そういう意味では、「『ドラゴンボール』の頃が黄金期」なんて言うのはやめていただきたい! 今のジャンプは本当におもしろいですよ。大人にこそ、今のジャンプ本誌を読むことをオススメしたいですね。
常におもしろいものを追い求め続けている、時代を映す鏡ですよね、ジャンプは。

――黄金期が今なお続いているというのは、素晴らしいことですね。まだまだ話し足りないようですが、座談会はこのへんでお開きに…!
「ジャンプ」という大枠で語るとキリがないので、作品単位でも座談会やってください。
僕は『るろうに剣心』(和月伸宏)についてしゃべりたい!
「過去の贖罪」っていうテーマがもう最高だね。
志々雄真実を4人がかりで倒しに行って、やられるっていうかませ犬シーンがあってね…。
――話の尽きない大人たち…。少年たちのジャンプ愛は、「NEVER END」ということで。
(おしまい)
執筆:黒木貴啓/企画・制作・編集:有限会社ノオト