ハコスタアイドルフェスティバル Ep1 前編
- t7s_masarugi
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戦闘で体制が整えるのが遅れるということは、敗北を意味する――。 地面に叩きつけられたハルは起き上がろうとするがその瞬間、またハルは凍らされる。 今回は足だけでない。頭から足の先まで、体の後ろ半分が凍らされてしまったのだ。 しかしミトとは距離がある。
2016-07-21 03:31:26ハルはミトがこちらに近付きながら飛ばしてくる炎の弾を炎を纏った手で掻き消しながら氷を溶かそうとする。 氷を溶かすのと敵の攻撃を掻き消す、この2つを同時に行うことは難しく、ハルは何発か炎の弾を受けてしまったが、ミトがこちらに接近しきる前に氷を溶かし終え、体制を整えられた。
2016-07-21 03:34:14「くらえぇぇぇぇぇ!」 ハルは炎を右手に纏い、ミトへ突進する。 ハルは焦っていた。自分はそこそこダメージを受けているが、ミトは無傷。このままでは負けてしまう。 その焦りはハルから冷静さを失わせ、足元への注意を失わせた。 ハルの足元の凍ったコンクリートへの注意を。
2016-07-21 03:40:40「きゃっ!?」 ハルは足元の凍ったコンクリートで滑り、体が宙へ浮く。 そこへ左手から放射された炎で跳んできたミトが迫る。 そして先程と同じように、炎を纏った右ストレートをお腹にくらう! しかしダメージは先程の比ではない!
2016-07-21 03:43:44「ぐうっ……!」 受けた衝撃を支える足が地面についていなかったことにより、攻撃に対して踏ん張ることも受け流すこともできなかった! ハルは大きなダメージを受けて吹き飛び、ビルに衝突する! 「かはあっ……!」 受けたダメージが大きすぎる! もうHPは半分も残っていない!
2016-07-21 03:47:42そこで手を緩めてくれるほどミト(のデータ)は優しくはない! へこんだビルに食い込んだハルの後ろ半分――つまりビルと接している部分をさらに凍らせにくる! 凍ったハルは氷を溶かして抜け出そうとするがしかし、炎が出ない! 能力を使えない!
2016-07-21 03:51:17「能力が……使えない!?」 驚くハル。当然だ。仮想空間では使えて当然だった炎を操る能力が使えなくなって驚かないハズがない。 この『能力が使えない現象』にはハルの炎を操る能力の『炎をつくる原理』が関わっていた。
2016-07-21 03:55:57仮想空間でのハルは『体温を大幅に上げる』ことによって炎を作り出している。 体温が急激に上がったハルに触れている衣服やハルの周囲の物質、気体はハルの熱さによって『発火温度』まで温度が上がる。 発火温度まで達した物質はその後、自らの発熱反応によって温度が上昇し、発火する。
2016-07-21 04:02:06その炎をハルは操っているのだ。 わかりやすく言うと『ハルが体温をあげて暖まると炎がつくれる』ということである。 しかし、今のハルはどうだろうか。 ミトの凍らせる能力によった何度も体温を下げられ、現在も凍らせられていて段々体温は下がっていく。
2016-07-21 04:03:41そう、『ミトに凍らせられているせいでハルは暖まれなくて炎がつくれない』のだ! 仮想空間では『痛み』などの一部の感覚がない。 そのため、ハルは自分がどうやって炎をつくっているかなど、知らなかった。 普通は『仮想空間だからつくれる』と想像してしまうもので、ハルもそうだった。
2016-07-21 04:06:26まさか発火現象に現実の原理が適用されているとは思っていなかったのだ。 今のハルの状況は、『圧倒的に強い無傷の敵が目の前にいて』、『特殊能力が使えず』、『自分は敗北寸前のボロボロの状態』であった。 しかし。 ――彼女はその状況でも、楽しそうに笑っていた。
2016-07-21 04:08:45「メラメラって――感じです!!」 右手からや左手からではない、ハルは、全身から大火力の炎を出していた。 体温が下がり続けるこの状況でどうしてそんなことができたのかというと、『気合い』、と言う他ない。 彼女は気合いで、先程までやミトの炎よりも火力の高い炎を出しているのだ。
2016-07-21 04:13:17彼女は、絶望的な状況でこそ、逆境でこそ燃える! 1度折れた人間は、折れた分だけ、強くなれるのだ! 「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 ハルは両手から炎の弾を連射する。 しかしそれは先程までのハルやミトが撃っていた『人間の頭くらいの大きさ』の炎ではない。
2016-07-21 04:17:07その炎よりも、二回りくらい大きい炎の弾だ。 「…………!」 ミトは先程までのように炎を纏った手で掻き消そうとするが、あまりの火力と大きさに消しきることができない! 感情がないNPCのはずの彼女が、苦しそうな表情をしているように見えた。 どんどんミトのHPが減っていく!
2016-07-21 04:20:08「お返しだぁぁぁぁぁぁ!!」 ハルは左手で炎を噴射してその勢いでミトの元へと飛び込む! ミトは氷を操る能力で、自分の前に大きな氷の壁をつくる! しかしハルのパンチは氷の壁を砕き、そして! ミトのお腹に、渾身の右ストレートを叩き込んだ!
2016-07-21 04:24:17吹き飛んだミトはビルに命中し、そして! 白い光となって、消滅した。 「勝っ、た……?」 光が消滅したのを確認すると、疑問は消えて。 「やったぁぁぁぁぁぁ!!」 その喜びに今日最も明るい笑顔を見せた。
2016-07-21 04:27:15―――――――― 「コニーさん! チャチャ! 見ました!? ハルが勝ちましたよ!?」 「驚きました……!」 「流石にコニーさんも驚いたず! まさかNPCを一人で倒すなんて……」 またうるさいって言われるかと思ったら言われなかった。それほどハルの勝利はすごかったのだ。
2016-07-21 04:30:23「……でも」 コニーさんは言う。 「このゲームは、『気持ちの強さ』で能力の出力が上がるって説明されたから、NPCはその点においては不利なんだず」 つまり。 「本当の豆腐野郎は、ミトは、あんなモンじゃない……!」
2016-07-21 04:32:43―――――――― 「!」 ハルが喜んでいると、後ろから足音が聞こえてきた。 喜んでばかりはいられない。もうHPは残り少ないし、まだ戦いは終わっていない。ハルは気持ちを引き締めた。 ハルが後ろへ振り替えると、そこにいたのは。
2016-07-21 04:34:55