ニンジャスレイヤー:ネヴァーダイズ 【7:ポラライズド】 #1

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

斜めに斬られたスリケニストは緊急回避を試みる。「イヤーッ!」「グワーッ!」しかし跳ぼうとした彼の傷口が炎を噴いた。イグナイトだ。彼女はレネゲイドの打撃を炎によって押し戻し、そのままそれを旋回させて、スリケニストに叩きつけたのだ。スリケニストは炎に耐えたが、生じた隙は致命的だった。

2016-07-22 15:52:23
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「イヤーッ!」ヤモトはスリケニストと交差し、斜めに跳んだ。二刀目はスリケニストを横に裂いた。十字傷がスリケニストの身体に深々と刻まれた……「サヨナラ!」爆発四散するスリケニストを後ろに、チリングブレードはヤモトをなお追った。構えた刃が白く冷たく光を放つ。「絶対に逃がさんぞ!」

2016-07-22 15:55:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」二者は再び斬り結び、北へ、北へと移動していく。一方のイグナイトは道路を挟んでレネゲイドと向かい合い、かざした両手にカトンを集めていた。「なんか知らねェけど、めちゃくちゃ調子いいんだ、今のアタシはさ!」頭上に極彩色のキンカク。

2016-07-22 16:00:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「成る程、アルゴスに秘密はあっても嘘は無しか」レネゲイドはバクチクをホルスターに戻し、素手のカラテを構えた。「ただでさえ俺のカラテはお前のようなカトン・サイキッカーとの食い合わせが悪いというのにな」「尚更ブン殴ってやるよ」「消え失せる寸前の派手な花火、派手に楽しめ。未来など無い」

2016-07-22 16:10:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「うるッせェーんだよ!」イグナイトは仰け反り、身体の数倍サイズの巨大なカトン・リングを作り出した。レネゲイドは走り出した。北へ。「イヤーッ!」KRA-TOOOOOM!「イイイヤアアアーッ!」KABOOOM!KABOOOM!爆発が北へ伸びる。イグナイトは力の充填の為に膝をついた。

2016-07-22 16:15:18
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「クッソ……」イグナイトは頭を振って立ち上がる。街路は己の破壊的なジツによって抉れ、積雪が消し飛んでいた。レネゲイドを倒した手応えがなかった。制御の利かないカトンをかいくぐるようにして、逃れたか。彼女はヤモトと合流すべく走り出した。己の中に再び湧いてくるカトンの力は不気味だった。

2016-07-22 16:20:45
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廃ビルの高層階から外を見たナラキは衝撃に打たれた。「本当なのか。こんな」青年は呟いた。慰霊碑前はさながらネコネコカワイイのゲリラライブ会場だった。膨れ上がる人々はいまだにその数を増し続けていた。集まった人々は身を寄せ合い、ざわめき、無数の蝋燭は橙色の光を放ち、空には花火が弾ける。

2016-07-22 16:30:47
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『モシモシ。正直、バリケードの補強と負傷者の収容で手一杯だ』ブチタの通信が無線機に入ってきた。『ハイデッカー連中は、じっと黙ってる。不気味だ』「ああ」ナラキは唾を飲んだ。張り詰めた空気は痛いほどだ。このマルノウチで何が起こっている?状況の全貌を把握している者は居るのだろうか?

2016-07-22 16:34:46
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当初はひっきりなしに続いていた小競り合いは、次第に散発的な頻度となって、今は一旦の膠着状態に至っている。ハイデッカーは始めは「火消し」に躍起だった。だが、外部から集まってくる者達の数に際限はなく、彼らをその都度排除する事も不可能だった。彼らは徐々に方針を変更したようだった。

2016-07-22 16:37:40
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それは人々の勝利を意味するだろうか。到底そうは思えなかった。空では極彩色のキンカク・テンプルが自転している。尋常の光景ではない。なにかひどい出来事が慰霊碑前の人々に襲いかかる前触れに思えてならなかった。だがこの状況下で何ができるというのか。「どうにか。せめて朝まで」ナラキは呟く。

2016-07-22 16:51:51
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カメラマンのタダマキはおそらく今も慰霊碑前で人々の姿を撮影し、定期的にそれを電波に乗せているだろう。朝になれば眠っていた人々の目にもそれらの光景が届く。今この時を乗り切れば……闇に紛れた非道行為さえやり過ごすことができれば。(アイエエエ!)ニューロンに知らぬ誰かの悲鳴が届いた。

2016-07-22 16:55:03
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(アイエエエ!)(アイエエエエ!ヤバイ!)ナラキは当惑した。他者の声が聞こえるのだ。(誰だ?何だ?)ナラキは呼びかけた。(戦車が……!)それから実際にどよめきが起こった。ナラキはふらつき、壁に手をついた。目を閉じても極彩色のキンカクは見えていた。キンカクの下、戦車の列が迫り来た。

2016-07-22 16:58:31
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ナラキはそれが他の誰か、バリケード付近の市民のリアルタイム視界であると理解した。道路一杯にひろがった戦車は、粛々と、じわじわと前進を開始した。戦車はバリケードにぶつかり、押し潰しながら乗り上げ始めた。悲鳴と怒号が伝染した。(助けてくれ!)(助け!)(アイエエエ!)「アイエエエ!」

2016-07-22 17:01:35
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ナラキは悲鳴をあげ、頭を押さえて床に突っ伏した。「ダメだ!ダメだ!」彼は勝とうとした。何に。わからない。気を失ってはダメだ。「ダメだ!」ナラキは叫んだ。(ナラキ=サンか!)輪郭のはっきりした声が思いがけず応えた。その声に少し覚えがあった。ローニンの人間だ。(クロマ=サン?)

2016-07-22 17:03:57
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クロマは収容施設アケガを脱出し、ローニンの一員となったキョート人である。(やはりそうなんだな?声が届く)クロマは言った。(どうなってる。急に、悲鳴が)(バリケードだ。南東のポイントで動きがあった。奴ら戦車で押し潰しに来た!)(何だと?)(他のポイントでも恐らく同様の攻撃が始まる)

2016-07-22 17:07:29
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ナラキは鼻血を拭った。(この声……無茶苦茶に押し寄せる。どうにか……)(声の輪郭を捉えると、うまくいく)クロマが伝えた。(知っている奴の声と、手を繋ぐようにして、自分を保つ)ナラキは深く呼吸し、試みた。(皆、聞こえるか)(ナラキ=サンか)(アンタ、ナラキか)幾つかの声が返った。

2016-07-22 17:11:45
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(押し寄せるぞ!戦車が!)ブチタが叫んだ。考えろ。考えろ。ナラキは必死で思考を巡らせた。(マルノウチ駅のB8出口に近い奴、いるか)(私が今、近くにいる!)(あそこ、塞がっているだろう。シャッターを破って、地下に人を逃せないか?今のままじゃ逃げ場もない。潰される)(俺も向かう)

2016-07-22 17:19:14
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(僕はどうすれば)(誘導を頼む。他に動ける奴がいれば)ナラキは窓から身を乗り出した。阿鼻叫喚の惨劇が始まろうとしていた。一方で、バリケード内の人々に流れが生じつつあった。地下鉄のシャッターが破られ、人が流れ込み始めた。ローニンによる誘導だ。察した市民達が協力し、人の流れが速まる。

2016-07-22 17:22:55
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(いけるか……)(引いてるぞ!)(無茶をするな!ぶつかるなよ)引き潮めいて、人々の集まりがじわじわと形を変えていく。(クロマ=サン?ナラキ=サンか?)新たな声。レッドハッグだ。(声。声。どうにもうまくない。状況はわかった。こっちも今、塞がってンだ)(身動きが取れんな)フェイタル。

2016-07-22 17:33:37
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戦闘するニンジャの視界が混線し、ナラキは怯んだ。クロマのニューロンが彼を支えた。他の者達よりも慣れているのだ。レッドハッグとフェイタルはビル屋上でニンジャを相手にしていた。(こいつらをチャチャッと片付けて、向かうからな!)

2016-07-22 17:39:28
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……「イヤーッ!」レッドハッグはバーサークの蛮刀を鞘で受け、後ずさった。「イヤーッ!」バーサークは横へ回り込み、蛮刀で続けざまに斬りつけた。防戦を強いられ、レッドハッグは顔をしかめる。屋上もう一方の端では白い怪物と化したフェイタルが二人のペイガンを相手取ってカラテを振るっている。

2016-07-22 17:45:53
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「妨害者め!死んで退け!」バーサークは唸り、血なまぐさい息を吐いた。レッドハッグは圧力を押し戻しながら敵を睨んだ。「できない相談だね……!ニンジャの相手はニンジャがするのがフェアってもんだろ。死ぬのもまっぴらだ!」一瞬の力の緩急を捉え、脇腹を切り裂く!「イヤーッ!」「グワーッ!」

2016-07-22 17:52:11
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バーサークは後ずさり、はみ出た腸をねじ込み、押し戻した。「カタナなど所詮は細く貧弱な武器だ。痛くも痒くも無し」「アンタがバカなだけだ」「GRRRRR!」その肩越し、フェイタルがペイガンの脚をくじき、のしかかって胸板を食いちぎった。下の悲鳴がいや増す。時間がない。

2016-07-22 17:58:56
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「そっち、そろそろ片付かないか?」「AAARGH!」フェイタルはペイガンを真っ二つに引き裂き、もう一人に向き直った。バーサークがレッドハッグに再び襲いかかった。「俺がお前を殺し、次にあの獣を討つ!」刃と刃がぶつかり合う。レッドハッグは膂力を振り絞る。そのとき彼女は桜色の光を見た。

2016-07-22 18:05:09