フォビドゥンフォレスト1話後編・1 おにぎりウォーズ

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フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

「フォビドゥンフォレスト・1話中編」をトゥギャりました。 togetter.com/li/1010216

2016-08-10 00:32:36
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(前回までのあらすじ:俺は片桐。田舎町・風科(かざしな)に住む高校生だ。幼馴染の瑠梨たちと生徒会をやってる。そして夜は北の森で妖怪退治だ。今日は雪をかき分け施設点検だけ、の筈だったが出現の徴候があるらしい。寄り道を終えた俺は仲間のクワガタたちを拾って、僚勇会の施設へ向かった)

2016-08-18 23:23:09
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フォビドゥンフォレスト1話後編1・「おにぎりウォーズ」

2016-08-18 23:23:59
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秘密基地から小走りで10分南へ進むと、でかい屋敷が見える。その手前、屋敷の北側の森の入口に平屋の建物がある。入り口の上、横書きの看板に書かれた「風科猟友会」の文字は、暗くても横のオレンジの照明でよく見える。建物のサイズは大きめのコンビニくらいだ。一階部分はな。 1

2016-08-18 23:28:17
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開け放しの入口に張られた二重のカーテンを開けて中に入る。正面の壁に張られた森の地図や鳥獣の写真が目に入る。部屋の中央は広く空けられ、机や棚は両脇にまとまっている。正面奥の隣の部屋とはドア無しで繋がり、大人3人が並んで通れる。いざって時は正面入口から奥まで一気に走っていける訳だ。2

2016-08-18 23:30:49
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部屋の左側のホワイトボードには予定表や動物の目撃情報やら仕事関連、右側には食器棚やポットなんかの休憩・応接用具がある。他所の「猟友会」のこたぁ良く知らねぇが、多分どこもこんなもんだろう。 「ギリギリですんません、遅くなりました」 「いや、まだ大丈夫だよ」 3

2016-08-18 23:40:02
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応対してくれたのは松島のおっさん。風科の西のほうで喫茶店をやってる。歳は年金が貰えるのどうのくらいで、白髪混じりの髪だが顔はまだ若々しい。 「結局、霊波の反応はどうなったんすか?」 「ああ、佐祐里お嬢さんから聞いたんだね。実は、会議がまだ続いてるんだよ」 「え、まだっすか!?」4

2016-08-18 23:43:01
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集合予定は8時…つまり今で、出発は半の予定だ。妖怪退治が確定してれば今ごろ皆揃ってるはずだ。気の入り方が違ってくる…ギリギリに来た俺が言うこっちゃねぇが。今朝までの予定通りに施設整備だけなら、「出発の」10分前に集まってりゃ間に合うから、皆ゆっくり来ることが多い。今みてぇにな。5

2016-08-18 23:50:45
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この様子じゃ出現兆候を知らされてる俺達のほうが少数派っぽいな。 「流石にもう終わるとは思うがね、出発式の時に言うんだろうさ」 反応が無くても妖怪に急襲されることもあるし、どの道武装はしていく。だから現状はまだ深刻じゃねぇが、やっぱ落ち着かねぇな。去年のこともある。 6

2016-08-18 23:58:12
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「ところで、もう食事はしてきたかね?」 「少しは」 「取り合えず向こうでお茶やお菓子でも食べて待ってれば良いさ。その様子じゃ君はあんまり食べる余裕がなかったんじゃないかね?」 「ま、そっすけどね」 俺の虫籠を見てそういった。ファー付きの布で巻いて中にはカイロも入ってる冬仕様だ。7

2016-08-19 00:05:22
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「作る時間が無いなら、たまにはウチにも来なさい。まあ君の寝床からは遠いのか」 そういや前は月に2.3回は行ってたが、最近は良くて月1だ。この半年忙しかったもんな…。食いに行く時間で自分でなんか作れるし、学校や家からも遠回りだしなな。 「そっすね。久々にオムライスが食いてぇです」8

2016-08-19 00:12:52
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鶏肉が絶妙に柔らかくふっくらしたライスと引き立て合い、それを包む半熟の卵も出来立てと半分食べ終わった頃とで触感が変わってくるのが良い…やべ、一応軽く食ったってのに腹減ってきた。 「ちょうど良かった。向こうにおにぎりもあるんだが…」 「まさか!」 つい机越しに身を乗り出しちまう。9

2016-08-19 00:19:25
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「ウチからもオムライスむすびを持ってきたよ」 「…やった!」 と叫んだのは俺じゃねえ。後ろから入ってきたラッタだ。 「お前、まさか一足先に」 「おぉう…レベル2まで、様子見てきた…」 コイツが俺より遅い場合は大体そうだ。呼吸がまだちょっと荒いしな。この野郎め。 10

2016-08-19 00:23:59
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「あまり無茶するもんじゃないよ」 「ひとっ走りしただけだから…大丈夫、ですって」 今は雪が積もって動きにくい代わりに、殆どの妖怪が眠ってるから夏よりゃマシだ。どっち道単独行動が危険なことに代わりねぇが。 「全くてめぇは本当によ…ほら行くぞ。しゃあまた後でなおっさん」 11

2016-08-19 00:26:47
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俺達は、奥から廊下を挟んだ休憩所兼控え室へ行く。畳十畳ちょいの部屋にデカい座卓がある。 「おはようっす」 「おはようございまっす!」 「おう、きたか春坊」 寛いでた大人達に挨拶する。下は大学生から上は50のおっさんまで十数人。殆どが男。俺らくらいの若いのは…あ、いたわ。 12

2016-08-19 00:31:26
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「おう恵里」 「あ!遅かったじゃないハル!」 頭に三角巾を巻いたエプロン姿の恵里が怒りながら歩いてきた。両手で持つ盆の上におにぎりが10個ばかし乗ってる。卓の上にもあるから第2陣辺りか。 「ラッタは良いのかよ」 「さっき私が来た時に入れ違いで出てきたもん」 「…そうかよ」 13

2016-08-19 00:40:22
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「なんか手伝おっか?」 ラッタが聞いたが、恵里は首を横に振った。 「ううん。後は片付けだけだし、それはやってくれるっていうから。それよりはい」 恵里は片手で盆を持ち直しおにぎりを1つ持つと俺に差し出した、ていうか口に突っ込んできた。 「もご…!?」 何すんだこの女。 14

2016-08-19 00:44:38
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俺は信じられねぇ、という顔で恵里を見たがコイツ俺を見てねぇ。横向いてやがる。 「ど、どう美味しい?」 言われてみりゃまあ、適度な塩味と柔らかさが中々旨い。気づけば口の中から半分以上無くなるところだ。 15

2016-08-19 00:53:15
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「美味しいのね、良かった」 こっちを向いた恵里はそう言った。旨いという気持ちが顔に出てたらしい。ついでにいきなり口にぶちこまれた不満も読み取ってくれや。 「ぷはっ…恵里、お前いきなり…!?」 「あ、おかわりね!はいどうぞ」 やっとのことで口を空けたら二個目をぶちこまれた。 16

2016-08-19 00:55:07
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「どうせあんまり食べてないんでしょ、種類色々あるし、どんどん食べていいからね」 いや旨ぇよ?今度は鮭が入ってる分、米の塩味を抑えてある手間暇は心憎いけどよ、その細やかさは別のとこで発揮して欲しかった。こっちは今オムすびの腹なんだよ。どこだ。ラッタの手の中だ。やべラス1っぽい。17

2016-08-19 00:58:04
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思わず手を延ばしたのも空しく、ラッタはオムすびを見せつける様な動きで自分の口に運んだ。と見せかけて、割って半分だけ口に入れた。 「冗談だって、はい」 そして残り半分を差し出してくれた。持つべきものは出来た幼馴染みだ。誰かさんも見習いやがれ。 18

2016-08-19 01:02:49
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「あ、なんだ。松島さんの食べたかったの?言ってくれれば良かったのに」 言う暇をくれなかったのは何処のどちらさんだよ?そう言ってやりたかったが、まだ二個目が口の中に残ってやがる。急いで飲み込むには勿体ねぇ程度には旨ぇのが小憎たらしい。目線で訴えてみるが不満気な顔をしてやがる。 19

2016-08-19 01:08:31
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ラッタの方を見るとまだ手を突き出してる。悪ぃから取り合えず受け取っておくかと手を出した。その寸前でひょいと延びてきた手に、半分のオムすびをかっさらわれた。 「あ」 呆けた表情のラッタの後ろから出てきたのは日高桐葉さん、俺の師匠で小隊長の一人だ。ってそれどこじゃねぇ。 20

2016-08-19 01:19:43
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「あ~腹減った」 「ちょっ!」 制止しようとしたが遅かった。パクッとあっさり食っちまった。あっという間に飲み込んじまった。せめてもっと味わって食えよ…。 「ん、何がっくりしてんだハル」 「ヒデェ…」 「?」 どうも一杯あるウチの一番近かった一つとしか思ってねぇ様だ。 21

2016-08-19 01:25:55