【隻腕の墓標】第二話

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ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

2-95 にしても、鳥海さんも艦娘なのに、こんなものを作ることができるのか。正規の艤装には及ばないものの、武器としては劣るとも勝らない代物であるようにうかがえる。 ……ひょっとして、金剛さんがブンブン振り回していたあの竹刀も、まさか鳥海さんのこしらえたものなのだろうか。

2016-08-22 15:09:44
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

2-96 「お、ハマーン!具合はどう?」 と、ちょうど良いタイミングで金剛さんの声が聞こえた。金剛さんにも出撃任務が降りていたことは知っていたので、いずれ武器庫で艤装を装着するために会うとは思っていた。

2016-08-22 15:10:42
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

2-97 「それを言うなら金剛さんの方、」 ですよ、の言葉は飲み込んだ。 榛名さんのお姿で知っていた金剛型戦艦の艤装を、金剛さんは装着していたなかった。背中に艦橋をセットされておらず、艦娘には珍しい"籠手"をはめていた。

2016-08-22 15:11:01
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

2-98 そして一際目を引くのは、金剛さん自身の身長をゆうに超える巨大な剣だった。艦艇の外壁を何枚も重ね溶接したものを研磨したような見た目。刃渡り2メートルはありそうな両刃の大剣。斬れぬものなどあんまりない、艦娘はおろか深海棲艦ですら防ぐに値しない、巨大な暴力の塊がそこにあった。

2016-08-22 15:11:40
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

2-99 「な、なな何ですかこれは!?」 「何って、」 Great Swordネ!と金剛さんは笑う。

2016-08-22 15:11:52
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

2-100 「金剛はね、艤装を装着できないの」 鳥海さんが補足する。 「Frendly Fireで味方を沈めてしまってね!」 「以来ですよね、艤装が装着できなくなったのは」 「トラウマってやつね」

2016-08-22 15:12:23
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

2-101 ベッドでもがく金剛さんの姿を思い出す。マヤが、おそらく沈めてしまった艦だろう。 「じゃあ金剛さんが素振りをしていたのは、この武器を扱うためなんですか」 「イエース!この剣重すぎるのよ」 「重さがないと深海棲艦の装甲が斬れないって言ったのは金剛さんじゃないですか」

2016-08-22 15:16:46
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

2-102 「そうだっけ」 「その分私が鍛えるからどんどん重くして!って言うから、私も重くしたんじゃないですか」 「でもそのおかげでね、艤装を使わずともマトモに戦えるようになったの。ハマーンのShieldも、鍛えれば右腕として活躍すると思うヨ。頑張り屋さんだから、きっと扱えるね」

2016-08-22 15:18:40
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

2-103 そうでしょうか、との言葉は飲み込んだ。 この盾を使って、生き残れる保証があるとは思えなかった。深海棲艦との過去の先頭経験が、私にそう告げていた。 でも、金剛さんは違った。艤装を装着できない圧倒的デメリットを、大剣を手にすることで克服して、こんにちまで生存している。

2016-08-22 15:19:04
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

2-104 ならば。 「ありがとうございます、頑張ります」 私は、新しい右腕を信じてみることにしてみよう。 自分の信じる自分を信じろ、との金剛さんの言葉を思い出す。

2016-08-22 15:19:19
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

2-105 「一緒に生きて帰りましょう、浜風さん」 鳥海さんの言葉に頷く。 右腕の盾が軽く感じられるように、私はなれるのだろうか。久しぶりの出撃に踊る心と、右上に圧し掛かる重さの矛盾に、胸が苦しくなりそうだった。

2016-08-22 15:19:40
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

2-106 だが、ひとまずは。 久しぶりの海だ。全力で挑もう。

2016-08-22 15:19:49
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