おそまつさま

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1 （ごめんやけど迎えに来てくれへん？） 横山君から電話。 すばるが酔いつぶれたって。 タクシーに乗りたがらなくて困ってるって。 何してんだか。 コートの前を合わせてお店に向かう。 耳がちぎれそうに寒い。 奥の座敷には、知ってる顔も知らない顔も。 そこに横たわるすばる。

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2 横山君が駆け寄って来る。 （ごめんな） 『んーん。大丈夫？』 他の人に頭を下げながらすばるのとこへ。 （疲れてんねやろな。あっという間に潰れてもーたわ） 『そうだね』 最近本当に忙しそうだし。 気も張ってるのかな。 （すばる！ほら、迎え来たで！）

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3 揺り動かされて、薄ら目を開ける。 「…んー？」 目が合った。 眉間に皺を寄せて苦しそうな顔が、一瞬で笑顔になる。 えっ！？ その変化に吃驚して。 「なんでいるん～？」 呂律が回ってない。 体を起こして手を伸ばしてくる。 「なー何で離れてるん～？」

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4 二人っきりのときの甘ったるい声。 締まりのない顔で、私の腰を引き寄せて首筋をペロリと舐める。 焦って、硬直してしまう私。 『ちょ、ちょっと…やめ、っ…』 慌てて胸を押し返すけど。 「ちゅーしよーや、ちゅー」 酔っ払いの勢いに押されて、あっという間に唇を奪われる。

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5 逃げようにも、しっかり抱き締められてて逃げられない。 体をバンバン叩いて抵抗するけど、舌が強引に割入ってきて。 その激しさに一瞬持っていかれそうになった。 『…んっ、ぅ…』 背中にすばるの手が入って来る。 だ、めぇ…っ… 冷えた体に熱い手が触れて、震える。

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6 スパーン！ って、音が響いて、すばるが離れる。 横山君が雑誌を持って立ってた。 「っ…てぇ」 頭を押さえて崩れ落ちるすばる。 ようやく解放されて胸を撫でおろした。 周囲から笑い声が響く。 すばるってば、人がいるとこでこんな…。 恥ずかしくて、顔が上げられない。

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7 （帰ってからやれや！！） 怒鳴って、帰る準備を手伝ってくれる横山君。 されるがままのすばるを引きずって、一緒に店の前まで出た。 （ごめんな。タクシー？） 『…うん』 私の代わりに車を捕まえてくれて、一緒に座席に押し込む。 発車する寸前、手を振る横山君の唇が動く。

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8 ごちそうさん そう、言ったように見えた。 来た時に冷えた体が、今は熱い。 舌と手と、羞恥で。 思い出して、頭を振る。 振動で、寄りかかって来る体。 小さな寝息。 …もう…しょうがない人…。 着いたらちゃんと歩いてくれるかな。 心配しながら、その手を握った。

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9 朝。 横山君からメール。 写真が一枚だけ。 すばるが、溶けそうな笑顔で私にキスしてる写真。 「…おはよ」 体を引きずる様に起きてきたすばる。 慌てて写真を保存して、画面を落とした。 あんな顔して私を見てるなんてこと。 …すばるには、秘密。