ラストバレット―Keep under―『最後の弾丸―Last bullet―』

22世紀後半。 選ばれた富裕層は自らの安全と権利を守るため『オーバー』と呼ばれる特区を形成。 それ以外の地区を『アンダー』と呼び、管理するようになる――。 続きを読む
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りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

――精査の結果、『兄』の特性、身体能力を最大限発揮させるためには『妹』の存在が不可欠と判明。アークエネミー生成実験に使用している、『サンプルNo.19』を当面の間『妹』として併用することで対応。更に、再度生成した5体の『兄』に対し、記録データから得られた再現記憶を移植する――。

2016-08-24 22:27:42
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

ユウトの斬撃にも似た足払いを背面へのバク転で回避するアルト。ユウトが追い打つ。発砲。空中で無防備に晒されるアルトの背に弾丸が吸い込まれ――。 『右に回避!』 「っ!?」 アリスの叫び。かき消えるアルト。ユウトの弾丸はアルトの影を貫通し、その向こう側の木製の壁に突き刺さる。

2016-08-24 22:32:11
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

刹那、ユウトはアリスの声に反応。右へと跳躍。先程まで立っていた場所が抉れ、一拍遅れて跳躍するユウトの行く手を遮るように、四方からアルトの放った弾丸が降り注ぐ。 『ユウト、その人は――』 決断するユウト。その瞳が金色に染まり、同時に四方を囲む弾丸がその速度を緩める。

2016-08-24 22:34:29
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

――一秒。 速度を緩めた弾丸を回避し、音速を超えて加速したユウトの視界に、同じく金色の瞳を輝かせたアルトが映る。 瞬間。二人はお互いに対して全く同時に発砲すると、一瞬で自ら撃ち放った弾丸を追い越して加速。接近し、射撃と蹴打、抜き放たれたコンバットナイフによる攻防へと移行――。

2016-08-24 22:35:17
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

――二秒。 時間差で二人の元に辿り着く一発目の弾丸。お互いの背後から迫る弾丸を僅かな首の傾きで回避するユウト。大きく身を屈め、ユウトと交差するようにその背面へと回り込みつつ回避するアルト。互いの背を向け合う形になった二人が同時に振り向き、空中で二つの斬撃が交錯する。

2016-08-24 22:37:45
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

――三秒。 交錯は刹那。交わった刃が離れ、アルトはユウトの肩口めがけ発砲。合わせたようにユウトも発砲。息がかかるほどの距離。見切れはしても弾丸を完全に回避することは不可能。ユウトが被弾。アルトは右手に持つ拳銃に直撃し、喪失。ユウトはすかさず踏み込もうとしたが、よろける。

2016-08-24 22:39:16
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

限界の三秒を超え、ユウトの瞳の色がぶれる。A・Dによる加速が終りに近づく。だが恐るべき事にアルトの加速は止まらない。暴風のように繰り出されるアルトの連撃がユウトを捉え、打ち据え、噛み砕く。 「くっ!」 ユウトの左手。固く握りしめた拳銃が撃ち抜かれ、その手から弾き飛ばされる。

2016-08-24 22:41:46
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

ユウトは片方の拳銃を失いつつも咄嗟の見切りでナイフを投擲。更に残された拳銃を再度抜き放つと、アルトの回避ルートを潰すように連続射撃。が、勝機を手にしたアルトにはそれすら眼に入らない。投擲されたナイフによって最後の拳銃をはね飛ばされるも、構わずユウトに接近し、痛烈な一撃を叩き込む。

2016-08-24 22:44:05
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

銃撃後、距離を取ろうと後方へ跳躍中だったユウトはその一撃をまともに受けた。 ピンボールのように吹き飛ばされるユウト。叩き付けられた宣教台が砕け、ユウトはまるで壊れた玩具人形のように神像に激突。バウンドし、受け身も取れず、力無く地面へと倒れ伏す。

2016-08-24 22:45:59
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

「ま、だ――っ!」 激しく喀血しつつも、必死の形相で起き上がろうとするユウト。ユウトは震える両手で残された拳銃を構え、膝立ちの姿勢でただ真っ直ぐに自らの正面へと銃口を向ける。が――。

2016-08-24 22:47:04
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

視力の喪失。 ユウトの視界が闇に消える。それは、限界を超えたA・Dの反動――。 一欠片の光すら失ったユウトに、未だ超音速を維持するアルトが迫る――。

2016-08-24 22:49:22
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

――その時、アルトは確信していた。自身の勝利。相手の死―― ――その時、ユウトは確信していた。彼女の声が、聞こえることを――

2016-08-24 22:51:21
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

『――今』 銃声――そして、静寂。

2016-08-24 22:55:32
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

膝立ちで拳銃を構えるユウトの正面数歩先――腹部を貫通されたアルトが、滲むように姿を現わす。   アルトは何も言わず、ただ自身の体から立ち昇る硝煙を、無感情にみつめていた――。

2016-08-24 22:56:57
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

――炎上するDDSの実験施設と、施設を包囲するGIGの戦闘ヘリ群。 時を遡ること数時間前。GIGはDDSに対して宣戦を布告。即座に攻撃を開始した。 この後、両者による戦闘は全世界規模で繰り広げられ、その戦禍は多くの人々を巻き込んでいくことになる――。

2016-08-24 23:00:06
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

炎上する施設の地下深く。対峙する二つの影。 一方は黒いロングコートに身を包んだ老齢の男性。DDS総帥。ジェラルド・ディグニティ。 そして、もう一方は――。 「まさか、お前の方がここに来るとはな――」 ディグニティの呟きは、彼の目の前に立つ、傷ついた少年へと向けられていた。

2016-08-24 23:01:55
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

「まあいい。手負いでは味気ないが、少しは楽しませて貰うとしよう」 二挺の大型拳銃を悠々と構えるジェラルド。対する黒髪の少年は、拳銃すら持たぬ血まみれの手で、固く握った両の拳を構えた。 「俺が憎いか……だが、ただ一発の弾すら尽きたお前に、何ができる?」

2016-08-24 23:03:53
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

ジェラルドの声に嘲りの色はなかった。彼の言葉は、事実だった。 「――武器なら、あるさ」 少年は言った。

2016-08-24 23:05:01
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

「守ってみせる。それが、俺の最後の――」

2016-08-24 23:06:19
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

――炎上する施設から離れていくヘリの中で、一人の少女が目を覚ます。 目覚めた少女は辺りを見回すと、すぐ横で自分を見つめる少年の姿を見とめた。 「――おかえり。遅くなって、ごめん」 少年の声に、少女の瞳が潤み、それはすぐに大粒の涙となって零れ落ちた。 少女は、帰ってきた。

2016-08-24 23:08:09
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

「お兄ちゃん――」  「――約束。守ってくれて、ありがとう」

2016-08-24 23:13:04
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

ラストバレット―Keep under― 最後の弾丸 ―Last bullet―>>>end ―――――――――――――――◆

2016-08-24 23:14:14
りゅーるー@ここのえ九太郎 @Fw009

自作『ラストバレット』 最終話「最後の弾丸」 更新しました!! ここまでご覧になって下さった皆様、本当に、心からありがとうございます!無事完結出来たのも、全て皆様のおかげです!! kakuyomu.jp/works/11773540… pic.twitter.com/KGGNm1fYWn

2016-08-24 23:30:35
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