#ミシロ鎮守府　まとめその１

五十鈴改 @isuzu_kankore

「第一回提督候補生、全員不可はなし、脱落者ゼローーーふむ。元々が少ないとはいえ、これはひとえに儂の教官としての手腕と思っていいのかな」 「お爺さんの指導が温かったんじゃない？」叢雲の言葉に笑いが起こる。このノリにも全員慣れた。 #CG鎮守府

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俺達は来た時と同じく、幹校のロビーで教官とその秘書艦と向かい合っていた。 #CG鎮守府

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ーーー数ヶ月後。 #CG鎮守府

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(な？)教官がニヤニヤしてその艤装を指差す。 (はい、納得しました)俺も思わずニヤリとして小声で返す。 「聞こえてるわよ！」直後、額に何かが当たって視界が傾く。 叢雲がさっきまで使ってた朱肉が宙を舞っていた。 #CG鎮守府

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少女はフンと鼻を鳴らす。 「それで私達のことを変に心配して任務に失敗したらそれこそ本末転倒だけどね。自衛隊でも服務の宣誓ってあるでしょうに。事に臨んでは危険を顧みず、ってね」 そう言ってそっぽを向くが、頭の上の耳のような艤装は嬉しそうにぴこぴこ跳ねていた。 #CG鎮守府

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「最初に他所から借りた艦娘で演習なぞするとな、どうしても道具を使うような感覚が抜けなくなる。儂は貴様等にはなるべくまっさらな気持ちで艦娘と向き合って貰いたいと思うとるよ」 パイプを外すと、「な」と隣で作業している少女に笑いかける。 #CG鎮守府

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「第一、という事は他にも理由が？」 「フ、それ位の洞察はできるか」ニヤリと笑うと、デスクからパイプを取り出し燻らせ始める。 「カウンセラーの授業の時、艦娘は少女でもあるという話はしたな？その認識をしっかり持ったまま貴様等には着任して貰いたいが…」 #CG鎮守府

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この件についてはある時教官に直接聞いた。 曰く、 「主に機密上の理由というのが第一。諸君等の育成については極秘プロジェクトのようなものでな、それだけ期待されてると思うとってくれ」教官はそれで話を終わらせようとしたが、俺は言葉尻を目ざとく捉えた。 #CG鎮守府

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もう一つは、実地経験について。 艦娘や艤装についての知識は座学で存分に叩き込まれたが、肝心の艦娘自身には叢雲以外お目にかかれていない。 既に稼働している鎮守府の見学や、実際の艦娘の指揮訓練などあっても良さそうなものだが。 #CG鎮守府

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俺を含めた数人は遠慮なく吹き出すが、大半は曖昧に苦笑じみた声を出す。 「ふん、捻くれたボケしかできない誰かさんに似ちゃったのよ。皆、こういうのは真似しちゃダメだからね」 さっきよりは笑う奴は増えた。 #CG鎮守府

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「元々艦娘は年端もいかぬ少女達。ハードたる肉体と艤装だけでなく、ソフトー心もしっかり見てやらんといかん。 ……でないと、気が付いたらこんな捻くれた秘書艦になってしまったりするからの。ーおい、ここは笑うところじゃ」 #CG鎮守府

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ただ、特異な点は幾つかあった。 その一つがカウンセラーとしての学習。これは実際に試験を受けて資格を取得することが要求された。 #CG鎮守府

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提督候補生、といっても基本的にやる事は自衛官時代に聞いてた幹校とそう変わらない。 人の命を預かる者としての心技体、それぞれを座学と訓練、そして日常生活の中で鍛えていく。 教官からの容赦のない叱責と罵倒。まぁ概ね予想通り。 #CG鎮守府

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……こうして、俺の提督候補生生活は幕を開けた。 #CG鎮守府

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「まぁ、なってしまったものは仕方が無い。儂も諦めて"貴様等"の育成に取り掛かるが－－－」 そこで言葉を切り、ゆっくりとこちらを見回す。その眼には長年の現場で研ぎ澄まされたであろう鋭い輝きが宿っている。 「やるからには徹底的にやる。覚悟しておけ」 #CG鎮守府

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「さて、諸君らの中は元自衛官もいると聞いている。儂も一応はそうでな、引退して悠々自適に……と行きたかったのだが、情勢がそうは許してくれなくなった。こんなポンコツも引っ張り出して手当たり次第に人を掻き集めて、いよいよ後がないということじゃ」 #CG鎮守府

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「－－－諸君、栄えある提督候補生の選抜、まずはおめでとうと言っておこう。 本来なら日を改めてお偉いさんも出席する盛大な入隊式なぞ執り行われるんじゃろうが……まぁ色々と都合があってな。許せ」 悪戯っぽく言ってはいるが、目の鋭さは本物だ。 #CG鎮守府

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受付で部屋割と場所を告げられ、とりあえず荷物を置く。 10分後、候補生は全員ロビーに集まり、1人の老人と一隻の駆逐艦と対峙した。 #CG鎮守府

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一緒に来た十数名ほどの提督候補者と共に、提督教育施設が増設されたという士官学校内へ入る。引率は銀髪の少女。叢雲と言うらしい。あれが艦娘か。 #CG鎮守府

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2週間後、俺は引き継ぎを済ませて最低限の荷物と共に江田島の地を踏んでいた。 ……懐かしいなぁ。 #CG鎮守府

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「一応、任務に支障が出ないことを条件に前職との兼業も許可されているそうです。向こうで安定してきたらそちらも考えてみてはいかがでしょう？」 ちひろさんが書類を渡しながら言ってくれた。兼業か…考えとこうか。 #CG鎮守府

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「後任者を見つけてある。出向日までに引き継ぎを済ませておくように。では私は次の予定があるのでな」 そう言うと立ち上がり、来た時と同じペースで去って行った。 「……唐突ですね」正直、話がよく飲み込めない。 #CG鎮守府

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「まぁ、経験が無いよりはある方がいい、程度の認識だろう。他には315プロから信玄誠司なども挙がっている」 あぁ、あのアイドルも元自衛官だっけ。 「……分かりました。私が担当しているアイドルについては？」 #CG鎮守府

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美城常務がつかつかと横を通り過ぎ、目の前のデスクに座る。 「さて、概要はちひろ君から聞いていると思う。今回のスカウトは我々の選出ではなく、海軍省直々の要請だ。恐らく君の前職も関係しているのだろう」 「確かに海自にはいましたが、士長止まりでしたよ」 #CG鎮守府

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と、背後のドアが開く音。 「確かにキミのPとしての手腕は我が346の看板を背負う者としてはまずまずといったところだが、それは平均と比較すると上という事でもある。卑屈になる必要はない」 「美城常務！」 「すまない、少し会議が長引いてな」 #CG鎮守府