2016夏コミ寄稿ログホラ二次SSメイキング

2016夏コミのログホラ二次本に寄稿したSS作成の裏話を適当につぶやいたものです。
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津軽あまに @kuroyagi6

さて、そろそろはじめようかな。

2016-09-02 21:17:04
津軽あまに @kuroyagi6

これから、夏コミで原稿を寄稿させていただいた九石さんの「レディバードガールズ」のZINさん取り扱い開始記念、寄稿SSのメイキングに関わるツイートをつらつらしたいと思います。

2016-09-02 21:19:44
津軽あまに @kuroyagi6

お話の紹介というよりは「このお話どうやって書いたの、組み立てたの」的な話なので、読んだ人向けのツイートでございます。その関係上、ネタバレの嵐になることをご容赦ください。

2016-09-02 21:21:31
津軽あまに @kuroyagi6

さて、今回の夏コミ九石さん新刊「レディバードガールズ」に寄稿した「古書店ひよこ堂営業中!」ですが、難産でした。超難産でした。今回のテーマは女性ギルドマスター。しかし、マリエールさんや濡羽様はちょっと僕が書くには原作のエネルギーが強すぎる。さあ、誰を主役にお話しを書いたものか。

2016-09-02 21:35:22
津軽あまに @kuroyagi6

そこで思い出したのが、以前ささかまさんがラフを書いていた、「比翼子さん」。多々良さんが店を構えているビル「変人窟」の一角で古書店を営む女性で、ログホラTRPGのルールブックにも名前が出ている方です。そういえば彼女はささらいさん本に初めて寄稿をした話にも出したっけ。

2016-09-02 21:35:58
津軽あまに @kuroyagi6

ということで、彼女を主役に話を書くことは決定。ただ、ここで一つ問題が。「戦闘が、書けない」のです。比翼子さんは古書店の主人。断片的に各所から情報をかき集める限り、インドア派の本好き耽美好きなオタクさん。親近感はましましですが、盛り上がりに戦闘を置けない。

2016-09-02 21:36:26
津軽あまに @kuroyagi6

もちろん、津軽は戦闘シーンしか書けないわけではありません(得意かは別として書くのは大好きですが)。ただ、今回は「挿絵をつけていただく前提の作品」です。ビジュアルとして盛り上がりやすいシーンを入れないといけないのではないのかという謎の義務感がありました。

2016-09-02 21:36:50
津軽あまに @kuroyagi6

そんな悩みに頭をぷすぷすさせている中、母から一冊の本を勧められました。タイトルは「ルリユールおじさん」。いせひでこさんという方の絵本で、淡いタッチと、最低限の文章でつづられた、「ルリユール」という職業の老人と、植物図鑑を大事にする女の子の交流を描いたお話です。

2016-09-02 21:37:29
津軽あまに @kuroyagi6

「ルリユール」とは、製本を生業とする職人さんのこと。痛んだ本を修繕し、装丁を作り直して世界で一冊の存在に作り替える。これって、再誕の物語なんだ、と思ったとき、Route43で語られた「ログホラは再誕の物語だ」というままれ先生の言葉を思い出したのです。

2016-09-02 21:37:56
津軽あまに @kuroyagi6

元々比翼子さんには、〈筆写師〉のスキルで同人本を作る女性、という設定があるようでした。そこから「比翼子さん=ログホラ世界のルリユール」、というアイディアが浮かんだのです。ルリユールとして、クライマックスは、比翼子さんがある本、人の再誕に立ち会う物語にしよう、と。

2016-09-02 21:38:29
津軽あまに @kuroyagi6

正直、この時点で、「クライマックスがビジュアルとして盛り上がるシーンになるか」という点については、諦めました。ささかまさんには申し訳ないけれど、この「再誕」のクライマックスは絵に向かないと思ったのです。だから、別に絵にしやすい対決シーンを設けようと考えました。

2016-09-02 21:39:34
津軽あまに @kuroyagi6

さて。では、次に「誰の再誕」「どんな本の再誕」を描くか。これはすんなりと決まりました。ログホラの中で、本を綴り、製本を依頼しそうなキャラクターは、一人しか思い浮かばなかったのです。謎の年代記作家。「ヤマト風土記」の著者、ダリエラ……濡羽さん。

2016-09-02 21:40:54
津軽あまに @kuroyagi6

八巻の扉絵で、製本されて登場した「ヤマト風土記」。ならば、これを製本した人間がいるはず。そして、そこに、イラストに描かれている花の栞を添えた人がいるはずだ、その経緯を『転』にしようと。次に、主人公たる比翼子さんの活躍によって、「何かが変わった」ことを示す『結』にあたる章を書き、

2016-09-02 21:41:13
津軽あまに @kuroyagi6

最後に、比翼子さんの人となりやクライマックスに至るための本への思い入れや書き手への敬意、ちょっと残念なところや面倒見の良さを描くための、『起』『承』を、冊子のテーマである「女性ギルマス」に絡めた登場人物を使って組み立てて、できあがり。

2016-09-02 21:41:40
津軽あまに @kuroyagi6

『結』に、サリィさんことサラリア様を登場させたのは、「再誕」したことで、お飾りではなく、西の棟梁としての面を見せた濡羽様と渡り合う人が必要と考えたかから。やられ役に、書籍とアニメでマルヴェス卿に出番を奪われた貴族、ルンドスタード卿を配置したのも同じ理由。

2016-09-02 21:41:59
津軽あまに @kuroyagi6

「主役を決める」→「主役の特性を強調するクライマックスを考える」→「それによって変わった世界をエピローグとして考える」→「クライマックス、エビローグに至る助走、プロローグとミドルシーンを決める」。「古書店ひよこ堂、営業中!」は、こんな流れで作りました。

2016-09-02 21:42:43
津軽あまに @kuroyagi6

一番凝ったところは、風土記の原稿の内容を比翼子さんが読むところでしょうか。直後に「てんで、ばらばらに切り離されていたけれど。その始まりと終わりとに一貫するものに、私の中でようやくこの本の輪郭が定まった」と彼女が語るように、

2016-09-02 21:43:13
津軽あまに @kuroyagi6

風土記の原稿概要の六行、てん(句読点)で上下と切り離された文の始まりの文字、終わりの文字を横に貫くように読むと、書き手であるダリエラさんの気持ちが見えてくるようになっております。

2016-09-02 21:43:36
津軽あまに @kuroyagi6

イメージとしては、原稿全文を読んで比翼子が読み取ったものを、ダイジェストの中に暗号っぽく入れ込むことで、気づいた人にはダリエラさんの内面に気づく追体験をしてもらえたら面白いなあ、みたいなことを考えたわけです。

2016-09-02 21:43:57
津軽あまに @kuroyagi6

もちろん、最後まで話を読めば、このネタに気づかずとも次章の締めでダリエラさんの内面については想像できるようになっていますので、ご安心を。こういうお遊びに凝るのは楽しいけれど、「気づかないと楽しめない」ものにしちゃうと、書く方も読む方も寂しくなってしまいますからね。

2016-09-02 21:44:57
津軽あまに @kuroyagi6

このあたりのさじ加減が絶妙なのがサンホラさんの楽曲と歌詞で、僕がこのもう一つの地平線世界が大好きな理由だったりもするのですが、まあ、それはそれ、別のお話。

2016-09-02 21:45:13
津軽あまに @kuroyagi6

で、これをささらいさんに五体投地しながら投げたわけですよ。「ごめんなさい地味めな話ですみませんけど女性ギルマスいっぱいだしたんで可愛い絵みたいですっ」って。そしたら数日後、挿絵込みの構成原案が届いて、目を疑いましたともさ。

2016-09-02 21:45:39
津軽あまに @kuroyagi6

あの、地味過ぎて絵には向かないと思ったルリユールの……「本の再誕」のシーンが、しかも、見開きドーンで、僕が想像もしていなかったような形で、見事に「絵」として、顕現してたんですものさ。

2016-09-02 21:46:14
津軽あまに @kuroyagi6

これまでもささらいさんは僕の文に挿絵をつけてくださっていて、「どこを切り取って絵にするか」も含めて完全にささらいさんセンスにお任せして感動してきたのですけど(六割は曇りさんSSのウパシさんとか、デミさんとか、貴族の少女とか、偽三佐さんの微笑み合うシーンとか)。今回も、痺れました。

2016-09-02 21:46:45
津軽あまに @kuroyagi6

また、ラストを漫画で締めくくるというのも、ささかまさんの提案。あの一ページのおかげで、ぐっと本の中での統一感が増したような気がします。本当に、自分の文に、ささらいさんの絵が、構成が、ぐっと力を与えてくれたのだと思います。感謝っ。

2016-09-02 21:47:13