円周率

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1 「あ、観覧車」 『好き？』 「好き」 『私も』 「行こか」 終業ギリギリのゴンドラに滑り込んだ。 「傾く気せえへん？」 笑いながら並んで座る。 少しずつ地上が離れる。 煌めく窓の外。 少し体がすくんで、すばるの手を握り締めた。

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2 「怖いん？」 『ちょっと』 「好き言うたのに」 呆れたように笑う。 だって久しぶりなんだもん。 子供のころは全然怖くなかったのに。 そういうことあるでしょ？ 口を尖らせると、知らんって、また笑った。 頬に手が触れて伏せた目を上げる。 すばるの顔。 唇が重なった。

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3 優しく頭を抱いて舌が入ってくる。 うっとりと目を閉じて、すばるに身を任せる。 深く浅く角度を変えて絡み合う。 何度も何度も吸われて頭が溶ける。 『っ、んぁ…んっ、ねっ、ぇ…』 外見えないよ？ 苦しいよ。

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4 チラリと隣のゴンドラが見える。 あっちもカップル。 あ、キスしてる…。 ねえ見えちゃうよ？ 「誰も見てへん」 あっちもこっちも自分の世界に夢中。 ガタンってゴンドラが揺れた。 てっぺん。 外なんか見せてくれない。

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5 飲みきれない涎が顎を伝う。 力が抜けてすばるの胸に縋りつく。 服を握り締めて舌に応えるのが精一杯。 手が優しく髪の毛を梳く。 腰を強く引き寄せられる。 15分くらい？ ずっとキスだけ。 地上に着く少し前、ちゅっと音を立てて離れて行った。

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6 濡れた唇と滲む涙をそっと拭ってくれる。 ぐったり、されるがままの私。 「…エロい顔」 ぼんやりとすばるの顔を見上げた。 扉が開く。 手を引かれて地面に降りる。 ふらっと足がもつれてよろめいた。 「おっと」 グッと腰を抱かれて、そのまま歩き出す。

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7 足元がふわふわする。 しばらく地面から離れていたせい？それとも？ 「楽しかったな」 『…夜景見てない』 ふっと周囲が暗くなった。 今日はもう終わり。 街は眠りにつく。 「また来たらいいやん」 クックッ笑った。

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8 ずっとずっと前の話。 観覧車を見るたびに思い出す。 まだリベンジは出来てない。 『ねえすばる？』 「ん？」 久しぶりにあそこ行ってみない？