【マーク・ウィズ・ア・テンセイ】エピローグ

◇ニンジャスレイヤー(@NJSLYR)の二時創作作品群『すみゆ忍』を用いたテキストになります。 ◇ニンジャ”アジャイトー”が、「自分に名付けを行った神父と教会」を目指すお話の第二弾。とあるバイオニンジャの逃走劇に巻き込まれます。 #1(http://togetter.com/li/1004009) #2(http://togetter.com/li/1008585) #3(http://togetter.com/li/1014817
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アジャイトー @agito710515

(先週中に終わらせると言いつつ投稿しなかった担当者はケジメのち西へ向かった。新たに優秀な担当者がやってきたのでごあんしん)

2016-09-12 14:32:00
アジャイトー @agito710515

【マーク・ウィズ・ア・テンセイ】エピローグ #agatxt

2016-09-12 14:32:26
アジャイトー @agito710515

アジャイトーは教会の扉を開け、少し、中の様子を伺った。教会内部は外から見るよりも綺麗であり、よく手入れがされていることが分かる。天井から吊られたシャンデリアの明かりが教会内を暖かに照らしていた。そして人の気配。 1 #agatxt

2016-09-12 14:33:30
アジャイトー @agito710515

奥の廊下から歩いてきたのは、メイド服を着た少女(少なくともアジャイトーには少女に見えた)。教会にメイド?そう疑問に思いつつも、アジャイトーはゆっくりと教会内へ足を踏み入れた。後ろ手で扉を閉める。メイドもアジャイトーに気付き、アイサツした。 2 #agatxt

2016-09-12 14:35:32
アジャイトー @agito710515

「あら、ドーモ。エーデルヴァイスです」滑らかな、そして油断なきオジギ。このメイド、エーデルヴァイスもニンジャだろうか。「ドーモ、エーデルヴァイス=サン。アジャイトーです」ともあれ、敵意は感じなかった。アジャイトーもアイサツを返す。 3 #agatxt

2016-09-12 14:37:33
アジャイトー @agito710515

「神父様にご用ですか?それとも別の?」エーデルヴァイスは慣れた様子でにこやかに問いかけた。「神父、そう、その神父様に、用が」アジャイトーはややぎこちなく答えた。”神父”という言葉に少なからず動揺してしまった。緊張している。 4 #agatxt

2016-09-12 14:39:34
アジャイトー @agito710515

「そうですか。生憎、神父様は用事で出ておりまして…。もうすぐ帰ると思いますけど」エーデルヴァイスは申し訳なさげにそう言った。「あ、そう…。エト、待たせて頂いても?」緊張で言葉遣いがおかしい。アジャイトーは少し息を吸い、心を落ち着かせる。 5 #agatxt

2016-09-12 14:41:41
アジャイトー @agito710515

「ええ。では、こちらへどうぞ」そう言い、エーデルヴァイスはアジャイトーを応接室へ案内した。室内には長机と、それを挟むように置かれた二つのソファ。机の上には丸い木製の容器に入った棒状の菓子の包み。 6 #agatxt

2016-09-12 14:43:43
アジャイトー @agito710515

エーデルヴァイスに促されるまま、アジャイトーはソファに腰掛ける。「コーヒーお持ちしますね。ミルクと砂糖はいりますか?」「あっ…ハイ。少しだけ。お願いします」「かしこまりました」そうして、エーデルヴァイスは笑顔のまま退室した。 7 #agatxt

2016-09-12 14:45:46
アジャイトー @agito710515

応接室に残されたアジャイトーは、窓から外の景色をぼんやりと眺めた。教会の庭だ。こちらもよく手入れされている。優秀な庭師でもいるのだろうか。庭から子供がはしゃぐような声が、続いてそれを嗜める男の声が聞こえた。記憶よりも、この教会は随分賑やかなようだ。 8 #agatxt

2016-09-12 14:47:54
アジャイトー @agito710515

コンコン。ノックする音。エーデルヴァイスだろうか。「ハイ」アジャイトーはノックに応え、戸を開ける。「ああ!ドーモ」「!!!」アジャイトーは反射的に少し飛び退き、驚いた。そこにいたのはどう見ても神父だったからだ。 9 #agatxt

2016-09-12 14:49:55
アジャイトー @agito710515

「ゴッドファーザーです」神父…ゴッドファーザーはアイサツした。「ア…」アジャイトーはまだ驚きから復帰できず固まっていた。ずっと会いたかった人物が目の前にいる。それも、あまりにも突然に。いや落ち着け。突然やってきたのはこちらだ。 10 #agatxt

2016-09-12 14:52:05
アジャイトー @agito710515

「…大丈夫ですか?」ゴッドファーザーがキョトンとしながら尋ねる。「ア、ハイ。ハイ。ダイジョブ…」ハッとしながらアジャイトーは深呼吸し、そうカタコトに答えた。さらに数回深呼吸を行い、アイサツ。「…ドーモ、ゴッドファーザー=サン。アジャイトーです」 11 #agatxt

2016-09-12 14:54:06
アジャイトー @agito710515

「おお、アジャイトー=サン!これはこれは、久しぶりですね!」ゴッドファーザーはそう言い、親しげにアジャイトーの肩を叩いた。「…ハイ」アジャイトーは少し表情を緩めながら、それだけ答えた。「まぁ、お話はとりあえず座ってしましょう」 12 #agatxt

2016-09-12 14:56:11
アジャイトー @agito710515

ゴッドファーザーはそのまま入室し、窓側のソファに腰掛ける。アジャイトーも対面に座り、「…俺のこと、覚えていたんですね」ひとまずそう言った。「そりゃもちろん。名付けを行ったニンジャのことは皆覚えていますよ」ゴッドファーザーはそう答え、流れるように菓子を食べた。 13 #agatxt

2016-09-12 14:58:12
アジャイトー @agito710515

「しかし、立派なニンジャ装束だ。初めは気付きませんでしたよ」口をもごもごさせながら、ゴッドファーザーは言った。立派。「…ありがとうございます」アジャイトーは少し複雑な気分になったが、そう答えた。(そうだ…俺は、ニンジャだ。) 14 #agatxt

2016-09-12 15:00:13
アジャイトー @agito710515

アジャイトーが脳内で己自身を確認していると、「…それで、その後どうですか?」そうゴッドファーザーが聞いてきた。「あなたの名付けから、2年くらいは経ちましたっけ…。上手くやれていますか」2年。もう、それだけ時間が過ぎていた。 15 #agatxt

2016-09-12 15:02:16
アジャイトー @agito710515

アジャイトーは少し考えて、答えた。「…まぁまぁですかね」「まぁまぁですか」「上手いかどうかは分かりませんが…自分にできる限りで頑張っているつもりです」「それは良かった」ゴッドファーザーは楽しげに笑みを浮かべた。 16 #agatxt

2016-09-12 15:04:16
アジャイトー @agito710515

「まぁ、あなたが生きているということ自体が、その答えなんでしょうな」ゴッドファーザーはウンウンとうなづきながら言った。「…ハイ。それで、」アジャイトーがいよいよ切り出そうとした時。コンコン。ノックする音。 17 #agatxt

2016-09-12 15:06:18
アジャイトー @agito710515

「ドーゾー」ゴッドファーザーがまったりと答える。入室したのはエーデルヴァイス「すいません、コーヒーメーカーの調子が悪くて…あら、神父様お帰りになってたんですか?」「ついさっき。なんかお客さんがいる気配がしたので先回りしました」 18 #agatxt

2016-09-12 15:08:22
アジャイトー @agito710515

「もう、まぁいいですけど。ハイ、コーヒーです」エーデルヴァイスはゴッドファーザーに顔を膨らませながらも、アジャイトーには笑顔で対応した。器用だ。淹れたてのコーヒーの香りが応接室に漂う。「神父様コーヒーは?」「私はいいです」「そうですか。それでは」 19 #agatxt

2016-09-12 15:10:25
アジャイトー @agito710515

神父とメイドのやり取りが終わり、エーデルヴァイスは退室した。「アー、エト、今回の要件なんですけど」アジャイトーはなんとなく気まずくなりながらも言葉を紡ぐ。「はい」ゴッドファーザーはそれを穏やかな表情で待つ。 20 #agatxt

2016-09-12 15:12:34
アジャイトー @agito710515

小さく深呼吸。「…ゴッドファーザー=サンに、お礼が言いたくて」アジャイトーは少し伏し目がちに語り始める。「…あの日、ニンジャになった後、本当なら死んでたであろう俺を救ってくれて、ニンジャとしての名前を貰って」ここで再度呼吸。 21 #agatxt

2016-09-12 15:14:35
アジャイトー @agito710515

「…この名があったから、俺は今日まで生きてこれたんだと、そう思っています」言いながら、アジャイトーの胸に様々な想い、記憶が浮かび上がる。ここにたどり着くまでに、体感ではとても長かったようにアジャイトーは感じた。 22 #agatxt

2016-09-12 15:16:40
アジャイトー @agito710515

「……」息を吸い、吐く。「……」ゴッドファーザーはそれを待つ。この言葉を言うために、アジャイトーはここまでやってきたのだ。やっと、この時が来た。「……本当に、本当に、ありがとうございました」アジャイトーはそう言い、深く頭を下げた。 23 #agatxt

2016-09-12 15:18:41