キャラクターは自律するのではなく自律するからキャラクターである論

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uroak_miku @Uroak_Miku

1)キャラクターの自律化について。この話題だと誰もが必ず枕詞として「伊藤剛のいう」から切り出してくる。それはいいとして私なりに論じなおしてみます。

2016-09-24 16:02:40
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2)『スーパーマン 真実と正義と星条旗とともに生きた75年』という本を私の訳で出したことがあります。アメリカではベストセラー。アメリカ現代史としても読める優れものです。で訳していてとても学ぶところの多い仕事になりました。キャラクターの考え方の違いが日米でものすごく大きいのです。

2016-09-24 16:04:29
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3)スーパーマンの連載開始にあたって、出版社側は「作品の著作権にくわえ登場人物たちもうちに帰属する」と書かれた契約書を提示し、作者コンビにサインさせた。スーパーマンという作品だけでなくスーパーマンという架空人物そのものが商品とみなされたのです連載前から。

2016-09-24 16:06:23
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4)これが前例になって、アメコミでは登場キャラクターは初登場の時点でもう商品なのです。人気が出てきたら商品化するのではなく、商品化を見越してキャラクターを造形する。

2016-09-24 16:07:45
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5)キャラクターは自律化するのではなく、自律化するように作られるのがキャラクターなのです。

2016-09-24 16:09:49
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6)商品化を見越してのことです。

2016-09-24 16:10:18
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7)スーパーマンより10年前にデビューしたミッキーマウスは、商品化を想定して創造されたわけではありません。デビューしたら大人気になったので試しに商品化したらばかすか売れまくったのでウォルトの頭のスイッチが入ったのです。 pic.twitter.com/13BQN5pYue

2016-09-24 16:15:21
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8)スーパーマンが大ブレイクするとは当時の作者コンビも出版社も思わなかったそうですが、それでもスーパーマンそのものを人気俳優とみなしてその所属を出版社側だと連載前に取り決めたわけです。つまり商品化可能な知財としてキャラクターを自律化させる考え方はもうあったのです。

2016-09-24 16:19:35
uroak_miku @Uroak_Miku

9)同じころに日本でも真似がでたのですが、彼はミッキーマウス商品に取り囲まれるウォルトの写真をたぶん目にしたことがあって(講談社は当時すでにディズニー社と取引があった)それを形だけまねたにすぎない。 pic.twitter.com/D1YLmnt53j

2016-09-24 16:22:05
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10)自律化するよう作られるのがキャラクターだとアメリカでは考え方が進化していたのに、この田河水泡先生はキャラクターが自律化したので商品化してみたというレベルで思考は止まっていたといえそうです。

2016-09-24 16:24:42
uroak_miku @Uroak_Miku

11)キャラクターの自律化については伊藤や小田切が論じてきましたが、ふたりとも結局は文芸理論の枠内でしか論じていない。私のキャラクター論は違う。資本主義という巨大メカニズムのなかで character licensing の概念が生まれてきた20世紀史の文脈で考えている。

2016-09-24 16:27:37
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12)キャラクターがコマからはみ出すのは日本のまんがの十八番。ほかの国のまんがではどうなんだろう。 pic.twitter.com/zW5glVFdLw

2016-09-24 19:15:11
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13)この場合は視線誘導の都合で女の子の頭蓋骨がコマからはみ出しているわけですが。 pic.twitter.com/iWMg9ooAoS

2016-09-24 19:16:20
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14)視線誘導のテクニックとして昇華されるよりずっと前に手塚治虫が始めた技と思われます。 pic.twitter.com/nYikItbDGE

2016-09-24 19:30:04
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15)キャラクターが自律している。

2016-09-24 19:30:44
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16)敗戦後にGIが大量放出したアメコミを手塚はいっぱい研究していました。キャラクターの感性もそうやって目で盗んだと思われます。枠からはみ出す技は、その延長で思いついたのでしょう。

2016-09-24 19:32:14
uroak_miku @Uroak_Miku

17)アメコミにそういう枠はみ出し技が使われていたのではなく、そういう技は手塚が自力で編み出したとして、物語からキャラクターが自律する現象を彼はアメコミで感じ取った。

2016-09-24 19:33:25
uroak_miku @Uroak_Miku

18)ただ彼は気が付かなかった。キャラクターが自律するのではなく、自律するように作られるのがキャラクターであることを。

2016-09-24 19:34:08
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19)先に論じたとおりです。

2016-09-24 19:34:33
uroak_miku @Uroak_Miku

20)『鉄腕アトム』を自らテレビアニメ化し、赤字を少しでも穴埋めしたいといういじましい理由からアトムの商品化(当時「商品化」ということばはまだなかったのですが)におそるおそる手を出したらとんでもない印税が入ってきて手塚はびっくり。

2016-09-24 19:36:37
uroak_miku @Uroak_Miku

21)商品化を前提としてキャラクターは造形されるというアメリカの考え方を彼は理解しなかった。アトム商品の大ブレイクによって目がくらんだ。

2016-09-24 19:37:58
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22)キャラクターの理解がアメリカと日本で正反対に進化してしまった、その分岐点だとみます。

2016-09-24 19:38:41
uroak_miku @Uroak_Miku

23)キャラクターがコマからはみ出るという斬新な技は、手塚なりのキャラクター理解でしたが、それを法理論や資本主義の文脈で理解するには至らなかった。

2016-09-24 19:40:16
uroak_miku @Uroak_Miku

24)2016年になってようやく私がそこに気が付いたのです。

2016-09-24 19:41:22