【シナリオ ～彼のバースディ編～】

りえこ @eighter_rieko83

【シナリオ ～彼のバースディ編～】 1 彼と付き合うことになって、もうすぐ１年。 たまにはケンカもするけど、うまくいってると思う。 別に内緒にしてるわけではないけど、会社では素っ気ない彼。 それに不満があるわけじゃないけど……。

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2 「でね？絶対おいしくないのに、おいし～って、残さず食べてくれたんだよ！」 同僚で親友のりえこは、すばるくんと同じ部署の安田くんと付き合ってて、まぁ、この２人がすばるくんとの間に入ってくれたわけだけど……。 とにかく付き合って３年にもなるのに、仲良しすぎるってゆーか……。

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3 「お嬢さん、隣いいですか？」 目の前のりえこの隣に人影。 「あっ！しょーちゃん♪」 「えっへっへ～♪隣で食べていー？」 わたしにも同意を求める目線。 もちろんどうぞと笑顔を。 「あ、Ａ定食にしたん？俺もどっちにしよか、迷って～ん！」

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4 「Ｂにしたんだ？あたしもそれと迷ったんだ～！あ、食べる？」 「食べるー！あ～ん♡」 「はい、あ～ん♡」 「はぁっ！おいし～♪」 社食でこれだけオープンにイチャイチャできる２人が、羨ましい……ってわけではないけど……まぁ……すごいなって(笑)

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5 ただわたしも、もう少し彼女アピールできたらなって……だって……すばるくんはモテる……。 「あっ、しぶやんやぁ…。」 安田くんの目線を追うと、すばるくんが女子２人に捕まってる。 あの２人、すばるくん狙ってるって有名だ。 すばるくんは迷惑そうにしてるけど…気にしてないし。

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6 「相変わらずモテるなぁ…えーのー？ほっといてぇ。」 安田くんが心配そうな顔。 「大丈夫。信じてるし。」 なんて、ちょっと強がり。 信じてはいるけど…いい気分でないし。 「あたしなら無理だなー…“ちょっと章ちゃん何してんの！！”って割り込むけどなぁ……。」

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7 「えっ！！女子側やなくて、俺が怒られんのっ？！」 「だって、隙があるってことでしょー！」 隙……がある……？ 「彼女がいてもあたしならイケる！って思わせてる隙！！まぁ、そもそも、あーたとすばるくん、付き合ってるって知らない人が多いと思うけど？それもどーなのよ？」

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8 どおって言われても……。 「別に隠してるつもりはないんだけど……。」 「まぁ、すばるくん、言いふらすってゆーか？そんなタイプじゃないもんね。」 「俺言いふらしとる？」 「えっ？そーなの？」 言いふらしてるってゆーか……自覚がないんだよね、この２人……。

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9 「あっ、それよりさ！あの話、したん？！」 何かを思い出した安田くん。 「あ！まだ！」 ２人してニヤニヤしてる……なんか……イヤな予感……。 「もーすぐさぁ……しぶやんのお誕生日やんかぁ♡」 あっ……知ってるんだ……。 そりゃそぉか……安田くんと誕生日近いもんね…。

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10 「えと……そぉだね……。」 「どーするつもりなん？」 「どうするって……？」 まぁ、普通にお祝いするつもりだけど……。 「〇〇ちゃんの誕生日ん時の、サプライズパーティーも盛り上がったしさ……しぶやんのもサプライズ！せーへーん？？」 えっ……！

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11 すばるくん……そんなの好きなのかなぁ……？ わたしの誕生日の時……「俺はこんなん苦手やなー」って確か言ってたけど……。 「人んちに呼んでとかやったら、絶対警戒するから！〇〇んちでやろ！」 「えっ！わたしの……？」 「えぇやぁ～ん♡なっ？！」

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12 「何がええの？」 聞き慣れた声が安田くんとりえこの後ろで。 ３人でその声の主を確認。 「しっ、しぶやん！！」 びっくりしてる３人の顔を見渡す。 ここでバレたら、サプライズでもなんでもなくなる……。 「シブヤン、ナンデモナイヨー。」 安田くんヘタクソすぎる！

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13 りえこが思わず安田くんの頭をはたく。 「すばるくん、お昼これから？そこ、座って食べたら？」 りえこがわたしの隣の席を指差した。 「おぉ……。」 言われた通りにする彼。 社食で隣で食べるなんて、初めてだ……。 「で？なんの話やったん？」 あ、忘れてない…。

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14 「すばるくんはー、相変わらずモテるからー、もちょっと彼女アピールしなよー！って話！」 りえこ……話は逸らしたけど、その話題は……。 一瞬動きを止めて、チラッとわたしを見るすばるくん。 でもまたすぐお箸を動かして、何でもない感じ。 「別に…モテへんし。」

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15 その場はなんとなく切り抜けたけど、サプライズの話も、彼女アピールの件も…曖昧なまま。 サプライズの話は後でりえこに詳しく説明されて、あまりの熱に押されて、結局断れなかった。 次の日、すばるくんにも当日はウチでお祝いしようって誘った……。

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16 ──────── 「えぇよ、プレゼントなんか。」 「わたしがしたいの！」 嫌がるすばるくんを連れて、家に帰る前の時間稼ぎ。 ３件目の雑貨屋で、すばるくんは面倒くさそうに指差した。 「ほんなら、ほれ、それでえーやんけ！なんや……そのぉ……マグカップ？」

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17 えっ……？ 指差してるの……お揃いの……いわゆるペアのマグカップですけど……。 「おまえんち、俺のん、まだなかったやろ……それでや！なんや！文句あるんか！」 顔真っ赤で、かわいいんですけど…(笑) 「…ホントにこれでいいの……？」 お値段もかなりお手頃だよ？

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18 「なんでもえぇって！それより、腹減ってんねんて！早よせぇよ！」 手で顔を隠して、照れまくってる彼。 …じゃ、いっか、これにしよ♪ 時間大丈夫かなぁ…と思いつつ、２人並んで家へ向かった。 電車を降りて徒歩５分くらい。 手ぐらい繋ぎたいなぁ…と思って、手元の状況を確認…。

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19 「……なんやねん……。」 えっ？ あっ、チラ見したの、バレた！ 「別に……。」 顔を背けた……ら、右手が彼と繋がった……。 「めんどくさいわ…ほんま。」 短い距離だけど……これだけで幸せ……。 そう思えるわたしって、めでたいな(笑)

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20 「あれっ？あれって、おまえんちやない？」 「へっ？」 自分の部屋のあるところへ目線を上げる。 で……電気がついてる……。 「あっ、あれっ？！電気…消し忘れたかな……？」 「なにしてんねん……。」 すばるくんの呆れた声。

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21 やっば……駅出る時合図のワン切りしたのに…まだ準備終わってないのかな……？！ でも今さら連絡できないし……どうしよ……。 でもあっという間に玄関の前。 「早よ開けて。」 聞き耳をたてる……うん……音は聞こえない……。 緊張しつつ鍵を開け……あれっ？！

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22 開いてる……(泣) 「おまえ…なにしてんねん…。」 再び響くすばるくんの呆れ声。 「……どうぞ……。」 ドアを開けて、すばるくんを先に。 「あれ？電気消えてるやん。なんで？」 消したんだ……(泣) 「「すばるくん、おめでとー！！」」 鳴り響くクラッカー。

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23 歓声とか拍手とか、わーっとなって……空気が止まる……。 すばるくんは呆れたような顔して……びっくり……はしてない……。 「こんなこったろー思てん……。」 えっ！ 「し、しぶやん……気付いてたん……？」 安田くんは役目を終えたクラッカーを何個も持ったまま言った。

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24 聞けば、あの社食での安田くんのカタコトから変な雰囲気は察してたらしい。 さっきの電気とか、ドアの鍵とか……。 「爪甘いねん、おまえら、ほんま。」 みんなため息ついて、項垂れる。 「俺、腹減ってんけど。」 「「えっ！！」」 おもしろい程一斉に上がる顔。

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25 「たっ、食べよ！！なっ！すばるくん、食べたいて！」 錦戸くんがすばるくんを座って欲しい場所に案内する。 見れば短時間で出来たとは思えない程の料理や飾り付け。 「ほら、あんたも座って！」 りえこにすばるくんの隣に座らされる。