皇子松→吸血鬼松妄想

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さうす @sa__za_n_

吸血鬼になるには一度死なねばならず先に死んだオソマトゥたちと死に切れずに崖に落ちて記憶を失ってしまったカラマトゥとそうなった以上人として生きれる限り生きてて欲しかったけどそうも行かなかったバンパイア六つ子の話

2016-10-21 16:21:11

少しヴァンパイア関係なしバージョンの小話

さうす @sa__za_n_

「ここは……」 足を踏み入れた埃の積もる大広間。広間に鋭くフィンガースナップの音がする。埃が舞い上がり、視界が烟る。しばらく噎せた後目の前に広がった光景に息を呑んだ。艶やかな大理石の床。美しいシャンデリアはまばゆく輝き、シルクのカーテンが風に舞う。

2016-10-19 12:58:43
さうす @sa__za_n_

「カーシャ、踊ろう」 後ろから聞こえる聞き覚えのない声の、余りの懐かしさに、カラの胸が軋んだ。いつしかオーケストラのマズルカが広間に響き渡り、いるのかいないのかも定かではない朧で美しい人々が華やいだドレスや燕尾服に身を包んでくるくると舞い踊っていた。

2016-10-19 13:29:01
さうす @sa__za_n_

カラが振り返れば、鮮やかに赤いマントとシャツに白いバラのスカーフを締めた青年が革の手袋に包まれた指先を差し出していた。 考えるまでもなく、カラはその手を取って広間に躍り出た。赤いマントが翻ってはこまどりの羽のように広がるのが面白く美しかった。 「カーシャ、いつでもおいで」

2016-10-19 13:32:49
さうす @sa__za_n_

優雅に胸に手を当てた青年は最後にカラの肩を叩くと煙のように姿を消した。微笑みばかりが目に焼きつき、カラは引き裂かれるような喪失感に苛まれた。 「今度は俺と踊ろう、カーシャ」 二人目は緑のロングスカーフを首に巻いた青年だった。スカーフを留めるバラのブローチは先の青年と揃いに見える。

2016-10-19 13:37:08
さうす @sa__za_n_

みたいなさ、カラ神父(→カラマトゥ皇子)が革命で家族みんな殺された中一人生き残って亡国の離宮の舞踏室で亡霊となった兄弟たちと踊りながら記憶を取り戻していって、最後にイチマトゥが「さよなら、兄さん。幸せに」って天に召されて、気づけば廃屋の離宮の中で一人になってたカラマトゥが見たい。

2016-10-19 13:40:45
さうす @sa__za_n_

埃が降り積もって蔦がはびこり、灰色に燻んだ、かつて栄華を誇ったマツノフ王朝の離宮だった廃屋で、二度と戻らない過去を偲んで瞼を熱く焦がすほどの涙を流しながら獣よように咽び泣く話がいい。

2016-10-19 13:44:29