【早稲田文化芸術週間】狂言とシェイクスピアの出会い 講師:野村萬斎
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23.萬:抑揚も上がったり下がったり”To be,or not to be:that is the question.”と抑揚が決まっていて、狂言も”この辺りの者でござる”と上がり下がりがあるんです。
2016-10-19 23:45:4724.萬:イギリス人はアメリカ人のシェイクスピアを馬鹿にしますからね、日本人ならどうなるのか、脅威を感じましたね。 児:そもそもシェイクスピアとの出会いは? 萬:母親が本好きで、本読め読めとよく言われて…中学くらいで「ハムレット」読めと言われて読んだかなあ…。
2016-10-19 23:46:1525.萬:「ロミオとジュリエット」の映画も見ましたね。母親に見ろ見ろと言われて。あと何だっけ。「ウエストサイドストーリー」、あれもロミジュリをベースにしてますよね。その頃は戯曲の読み方に慣れてなくて、中身を云々するより読むのが大変でしたね。
2016-10-19 23:46:3826.児:劇場に見に行くようになったのはいつ頃ですか。 萬:父親はシェイクスピアに興味ないので、最初は京劇に連れていかれました。ポーランドのカントールの舞台を見に行ったときは、高1でしたけど、変な世界に紛れ込んだなあという印象でしたね。
2016-10-19 23:47:0527.萬:王道のシェイクスピアを見たのは大学に入ってからだったと思います。 児:では演じるようになったのとあまり時期は変わらないんですね。 萬:渡邊先生とは「ハムレット」の前に「能ジャンクション」で「葵上」や「當麻」をやりました。演技方法としては様式美になるんでしょうか。
2016-10-19 23:47:3728.萬:現代劇の俳優さん、後藤加代さんとやらせていただきました。 児:狂言以外の演劇の人と一緒にやった印象はいかがでしたか。 萬:意味を立てるためにどう音を配列するかということと、感情の流れで入るか、という違いがありましたね。
2016-10-19 23:48:0429.萬:「ハムレット」では「とてもよく台詞はわかるけど、中身を感じない」と言ってくれた人がいました。中身に入ってくと楽しくて、また「ハムレット」やりたいと思いました。
2016-10-19 23:48:3630.萬:うちの父はシェイクスピアに興味なさそうなのに、「ハムレット」の話をいただいたときに「やっていいですか」と聞いたら、良いとか悪いとかじゃなくて「俺もそう言われたことがある」って(笑) 児:武智鉄二さんですね。 萬:伝統芸能の対抗意識があるのか、わかりませんけど。
2016-10-19 23:49:0531.萬:「ハムレット」「子午線の祀り」「オイディプス王」とやって、また芝居のオファーが来たと父に言ったら「まだやるのか!」と。ハムレットやって知盛やってオイディプス王もやって、これ以上の役はないだろう」と言われましたけど、シェイクスピアはハムレットだけじゃないですからね。
2016-10-19 23:50:0632.児:武智鉄二さんは、観世三兄弟と野村兄弟を前衛の演劇に引きずり込んだ人ですね。武智鉄二さんが万作先生をハムレットに、という気持ちも、お父さんがそれを言いたくなる気持ちもわかります。 萬:親父は青白~いロマン派のハムレット(を求められた?)だったみたいですね。
2016-10-19 23:50:3133.児:違いのわかるハムレットですね(笑)法螺侍についてお伺いします。ロンドンでやったときは、みなさんよくわかってましたか。 萬:そうですね、字幕もついてましたし。
2016-10-19 23:51:1534.萬:高橋康也先生の訳も、懸想してる相手の名前が「お松」というんですけど、「お松を松の下で待つ」「松が松の下で待つ」…わかります?そういう言葉遊びみたいなところを(英語にうまく訳した。曖昧)戦略的にイギリスで狂言の技術でやるために書かれたものなんです。
2016-10-19 23:51:3635.児:萬斎さんは「乱」にも出られましたが、あれは「リア王」の翻案ですね。 萬:私たちもアイデアをだしましたけど、うちにいる石田幸雄は高校演劇に系統してたような人間で、父は狂言。僕が突拍子もないアイデアを言うとみんなポカンとするんです。
2016-10-19 23:51:5936.萬:「おまえは1,2,3を飛ばして4から言う」とよく言われるんですが、例えばラブレターを2人で読むシーンでタカラヅカ的にやりましょうと言ったんですけど、そういうことは2人には思いつかないわけです。
2016-10-19 23:52:2237.萬:洗濯籠を置いて追いかけるというシーン(?)で、籠を出すか出さないかとなって、結局出さないことにしましたけど、音楽をかけて狂言のオーソドックスな部分も入れて料理しないとシェイクスピアはできないなと思いました。(たぶんいっぱい飛んでる)
2016-10-19 23:52:5238.児:94年のロンドン留学ですが、演劇で手を挙げたのは萬斎さんが初めて? 萬:はい。普通は自分の分野の本場に行くのに、なんで狂言のやつがロンドンに行くんだって感じですけど、広くパフォーミングアーツを学ぶためですね。向こうで狂言をやることで、逆にシェイクスピアを教わりました。
2016-10-19 23:53:1139.萬:シェイクスピアをやれば世界のピッチ…わかりますか?サッカーのピットと同じです。土俵ですね。彼らと同じ土俵に立てるんですね。狂言という古典だけやってると「伝統かよ」と○○(読めない)するところがありますけど、シェイクスピアをやると言うと興味は持ってもらえます。
2016-10-19 23:53:5340.萬:シェイクスピアは伝統だと言っても劇場と台本しか残ってないんです。でも狂言の型を使えば何もない舞台に身体性のある舞台を組み立てられる、ということは法螺侍のときから感じてました。もっと勉強したい、戯曲を解釈して世界観を持つとはどういうことか、知りたかったんです。
2016-10-19 23:54:1841.萬:日本人に能狂言とか歌舞伎見る?って聞いてもねえ。「今日、歌舞伎行く?」ともあんまり言わないでしょうし。萬斎ファンだと言うと変な人のように言われるとか。
2016-10-19 23:56:2042.萬:ロンドンで支払に小切手切らなきゃいけなかったりして、銀行に口座を開きに行ったときに「何しに(ロンドンに)来たの」と聞かれて「シェイクスピアを学びに来た」と言うと「Boring」と言われましたね。こっちでの能狂言の反応と同じだなあと。
2016-10-19 23:56:5643.萬:向こうの演劇の好き嫌いもあるでしょうけどね。僕が行ってるときはちょうどフィジカル系が流行ってました。僕が芸術監督をやってる世田谷パブリックシアターにも、サイモン・マクバーニーのコンプリシテを呼んだりしています。
2016-10-19 23:57:3044.萬:ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーが朗々としている一方で、フィジカルシアターでも見られるという、両方楽しめましたね。 児:身体表現と言葉、両方を意識されますか。 萬:向こうは言葉で解決しようとしますね。
2016-10-19 23:57:5545.萬:能狂言の世界はなるべく、敢えて物を出さないんです。さっきの洗濯籠も、籠を持つ棒だけ出すんです。(実演。駕籠に棒を通して吊り下げる、駕籠のような状態)そうすると中の人も一緒に移動するわけですけど、籠の中で転がってる様子を見せられる。演劇的約束が使えるんですね。
2016-10-19 23:58:1946.萬:イギリスではグローブ座でやらない限り、セットを組んでやる前提になってます。グローブ座の芸術監督だったマーク・ライランスと友人になったので、2001年に「まちがいの狂言」をやる道筋ができてくるんですけどね。
2016-10-19 23:58:40