本丸サテライトスタジオ#4
見通せるようになった廊下の彼方で微笑んでいるのは僕の二つ目と三つ目の月だ。太陽光を遮断するものは時々欲しくなるけど、あの月光を遮断したいとは思わないな。 ……お疲れ様、僕の大倶利伽羅。 このスミゾメキヌハダウミウシさんたちは僕の宝箱にしまっておこう。いつか海に帰してあげるからね。
2016-12-15 20:52:48少し赤くなった顎を撫でて光忠が笑っている。貞が「鼻だったらトナカイだったのに」と言いながら夜戦に出かけていった。
2016-12-15 21:47:43氷が溶けると春が来る
平野くんがとびきりのお茶を淹れて走って行ったよ。茶柱、倒れてないと良いな。僕もとっときのお茶菓子を持って行こう。薄氷って言うんだ。氷が溶けると春が来る。まだまだここは寒いけど、鶯の鳴く春が来る。
2016-12-19 19:27:38俺達が貞を待っていたように、鶯丸にも待つ友がいた。……さて、気合を入れなければな。今年の冬も忙しくなりそうだ。受けた恩義は返すのが、俺達の流儀だ。
2016-12-19 19:35:35@o_o_ku_ri_ka_ra うん、格好良く決めたいよね! ……ところで伽羅ちゃん、このお菓子を器に盛ってもらえないかな? 僕がやると粉々になっちゃうんだよ。
2016-12-19 19:39:12@bbtm3g52n 貸してみろ……そら、盛れたぞ。鶯丸の部屋に行くまでの間に転んで壊すなよ。
2016-12-19 19:43:21@bbtm3g52n 今から逸ってどうする、光忠。急いては事を仕損じるし、途中で息切れしてしまう。暴れるのは戦場だけでいい。
2016-12-19 19:51:17@o_o_ku_ri_ka_ra 今度はどこだろうね、僕も大暴れできる場だといいな。……おっと、また力が入ってしまった。深呼吸、深呼吸……。欠片になってしまったけれど君もどうぞ。
2016-12-19 20:03:18僕の周りは春が多くてね、いつだって、今だって、芯があたたかい。氷が張る暇もないんだよ。……だからこのお菓子が僕にうまく掴めないのは仕方のないことだと思うな。
2016-12-19 20:15:02@o_o_ku_ri_ka_ra そうか、前に買いに出た時、君は臥せっていたんだったね。……もう梅が綻ぶ頃だったけど、冬がまた戻ってきたようで怖かったな。 これは取り寄せたものなんだけど、万屋にも並んでいるはずだよ。今度は二人で買いに行こうか。
2016-12-19 20:33:09@bbtm3g52n ああ、そんなこともあったな。あの時は、俺の光忠、お前が俺を見つけてくれた。……今度、一緒に買いに行こう。連れて行ってくれ。
2016-12-19 21:02:42それだけが今僕を僕たらしめている
ひとつ踏み込むごとに脳神経がⅻから切れていくような心地がする。出ずっぱりだと十の隊と戦うことになるので、最終、視神経と嗅神経だけが残る。僕は刃の煌めきと異形の臭気だけを頼りに刀を突き入れる。僕は何なのだろう、と、疲労だけを残して癒えた肉体を見るたびに思う。
2016-12-29 19:30:13痛みや感傷こそが検非違使と僕らを分かつものなのだ、と、呼びかけられながら諭されながら、求められているのは刀としての働きだ。僕にはよくわからない。もう、わからなくなってきている。僕たちは一体、何と敵対しているのか。だって今こうして戦場に赴くのは、歴史を守るためではないんだ。
2016-12-29 19:39:42彼が待っている、それだけが今僕を僕たらしめている。夜が苦手な僕を労い、時に共に進み、時に次を託す隊に所属している彼だけが。いつか訪れた存在しないはずの駅にまで迎えにきてくれた僕の猫バスが、迷う僕を導いてくれている。呼び声を聞かなければ。言葉を返さなければ。笑みを浮かべなければ。
2016-12-29 20:04:41応答せよ。舌下神経、内耳神経、顔面神経。応答せよ。応答せよ。 僕は彼の前では、彼の前でだけは、まともでいなくちゃいけない。少なくとも芯だけは、まともであらねばならない。大丈夫、大丈夫だからね。すこし、疲れた、だけだよ。僕は正常だ。僕は正常です。はやく、大包平さんに、会いたいね。
2016-12-29 20:08:25正月の準備
大晦日だろうと出陣は続く。だが、その傍らで料理上手な連中は正月の準備に追われている。……光忠は今、どこにいるんだったか。あいつの握ってくれたおにぎりはすこしかたいが、腹一杯になる。
2016-12-31 13:11:32正月の準備と今日の後片付けを終えて、やっと光忠が戻ってきた。最近出陣ばかりだったから、厨という名の戦場は楽しかったようだ。……疲れていたらしい、布団に入ったらすぐ寝てしまった。俺も寝るとするか。明日は流石に出陣もない。
2017-01-01 01:03:16