レトリーちゃんのお話「カメラについて」

飛騨牛エグチ(Hidagyu Eguchi) @bluetomcat14

これからのツイートはフィクションです。長いので注意。

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レトリー「あれ、ボクのスマホがないな……あっ！」 シアン「これ……私の下着姿……写真……いつの間に……ナンデ……」 レトリー「アイエエエ！　返して！　返して！」 シアン「レトリーを殺すしかない」 モア「ま、待つぴゅる！」

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チュチュ「で、でも、この写真上手いと思いますわ！　シアンの魅力がいっぱい詰まったいい写真ですもの！　写真集が出せるレベルですわ！」 モア「それ、フォローになってない気が……」 シアン「……そう言われてみれば、悪くないかにゃあ？」 モア「えっ、そんなちょろいの」

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チュチュ「レトリーは写真のセンスは悪く無いと思いますわ」 シアン「もっと良いカメラ持てば、もっと良い写真撮れそうな気がするにゃ」 レトリー「ああ、そういうの、いいんだ」 モア「どうしてぴゅる？」 レトリー「聞きたい？　ならば話そうか……ちょっと、昔話。お菓子用意するね」

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実はね、ボク、昔はデジタル一眼を持ってたんだよ。バイトして、お金貯めてさ。20万サウンドルくらいの、良いの買ってさ。その頃は、携帯なんてガラケーで、綺麗な写真って言っても程度があってね。初めて一眼を持った時の衝撃は言い表せないよ。初めてシアンと会った時には負けるけどね。

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毎日色々と写真を撮ったなあ。どんどんパソコンに貯めていってさ。いつも持ち歩くポーチにプラスして、カメラバッグとか持ってさ。でも、問題があったんだ。 チュチュ「問題？」 うん。ほら、ボクってあんまり体力ないじゃん。一眼レフカメラって重いから、持ち歩くと疲れるんだよ。

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後、最初についてる標準レンズって、割と中途半端なんだ。花や虫を撮れるほどの性能はないし、50mも離れた人を撮ろうにもズームが足りない。ボクが買ったのはズームレンズキットだったから、普通のとズームレンズがあったんだけど、両方持ち歩いてたら邪魔だし重くてね。

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そこで目をつけたのがミラーレスカメラさ。 モア「鏡がないぴゅる？」 詳しいことははしょるけど、一眼より小さくて、コンデジより拡張性と性能が良いカメラかな。5万サウンドルくらいの買ったんだけど、これが便利だし軽いんだ。撮れる写真も、ボクの目には一眼に遜色なく見えた。

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そのうち、フルの一眼は持ち歩かなくなった。持ち歩くセットにもよるんだけど、ペットボトル1本くらいの重さの違いがある。構えるときも、重いカメラは疲れるし、構え続けるのは難しい。意外と綺麗だし、ミラーレスだけでいいかな、って。そんな時に、オフ会に行ったんだよ。 シアン「オフ会にゃ？」

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うん。なんでも、カメラを使ってる人の集まりで、3人位来たのかな。どんな写真撮ったとか、いくらのカメラ使ってるとか。そのとき、ミラーレスが便利で一眼は使わなくなっちゃった、って話をしたら、1人が言うんだよね。 「えっ、もったいない。それって無駄じゃないの？」って。

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「使わないのはいいけど、ミラーレスも一眼も、見た目で写真の違いがわからないんでしょ？　だったらミラーレスで良くない？　カメラを持ちっぱなしにするより、欲しい人に譲りなよ」って。そのときは腹がたったけど、一週間くらいして、なんとなく思ったんだよ。ボクには必要ないのかもな、って。

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だから、バイト終わってからリサイクルショップにカメラ売りに行ったんだ。 チュチュ「もったいないですわ……いくらかには、なりましたの？」 2万サウンドルって言われたよ。 シアン「えっ、定価は10倍にゃん！？」 なんでもね、ボクが使ってたのは人気のないアイテムだったらしい。

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「だいぶ使用感が見られますし、レンズに傷も入ってます。それに、この価格帯の一眼はあんまり人気ないんですよ。カメラをしっかりやる人はもっと高い機種を買いますし、初心者はもう少し安いところを狙います。セカンドポジションが良いところですが、これだけくたびれてると……」ってね。

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モア「売ったぴゅる？」 そこではやめた。それで、カメラ屋に持っていったんだ。でも、大して値段は変わらなかった。渋るボクに、店主が言うんだよ。「お客さん、何が撮りたくてカメラを買いました？」って。「それを考えれば、そのカメラのこと、わかるんじゃないですか？」ってね。

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考えて見れば、ボクには目的がなかった。なんか、カメラを持ってれば良い写真が撮れるかも、って思ってただけだった。オフ会に来た人は、レイヤー写真とか、バンド写真とか、山の写真とかすごかった。ボクにはそういうのがなかったんだ。カメラを持ってる自分、っていうそれにだけ酔ってた。

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途端に、今まで輝いて見えていたそれが、ボクの手から離れたがってるように見えたんだ。泣きたくなるのを我慢して、ボクは一眼も、ミラーレスも、その店主に渡した。 チュチュ「ミラーレスも売ったんですの？」 そうさ。だって、ボクには目的がなかったからね。カメラを持つ目的が。

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部屋に帰ってきて、後から後から涙が溢れてきて。フォルダに入ってるのは、なんとなくで撮った写真ばっかり。ちょうちょ、ニューヤードのオーロラビジョン、ベース、そんなの。テーマもなければ面白みもない、どこにでもあるような写真ばかりさ。とりあえずカメラがあるし撮っとくか、ってレベルの。

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それから、ボクは写真を撮ることを手段とした。目的のない写真は撮らないことにした。カメラは持たないことにした。だって、スマホがあればボクは十分だって気づいたからね。解像度？　jpeg劣化？　ボクにはよくわからない。結局、一眼はボクには重すぎたんだよ。

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シアン「もったいないにゃあ。とりあえず持っておけば、また始めたいと思った時、始められたのに」 チュチュ「今、レトリーが撮るシアンの写真は、イキイキしてますわ」 レトリー「お世辞でも嬉しいよ」 モア「うーん……レトリーはそれで幸せぴゅる？」 レトリー「ん？」

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モア「モアには、諦めたように聞こえたぴゅる。気分を悪くしないでほしいけれど、もっと別の方向で、カメラに接することはできたんじゃないかなって……」 レトリー「そう、かもね。でもねえ。なんか、やる気がなくなっちゃったんだ。オタクって、みんなそうなんだよ。情熱が失せたら、何も出来ない」

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レトリー「まあ、いいんだよ。今のボクはベーシストのレトリーさ。音楽のスキルレベルを上げるのに忙しんだ。ボクはみんなと一緒に、音楽をやって、このMIDIシティに風を吹かせたいんだ。プラズマジカという風を」 チュチュ「レトリー……」 シアン「嬉しい事言うにゃあ……」

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チュチュ「でも、昔のレトリーが撮った写真、ちょっと見たかったですわ」 レトリー「あはは、もうどこ行ったかわからないんだ。今撮った写真でいいなら、ちょ、ちょっとなら見てもいいよ？」 モア「シアンの写真がいっぱいぴゅる！」 シアン「写真集でも出せる勢いにゃあ」

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モア「ん？　ところで、これもシアンの写真ぴゅる？　顔が写ってない体だけ」 チュチュ「あ！　おっぱいですわ！　後、ここ……青い毛ということは……」 レトリー「あ、それは」 シアン「よし、殺すにゃ」 レトリー「あ、アイエエエ！　とほほ、写真なんか見せなきゃよかったよー！！」 おしまい