【慈愛の騎士】

愛は時に剣よりも強力な武器となる
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雪花艦隊英雄伝 @DD_LUNAKICHI

「では早速試験を受けさせてやろう。ドイツにいられる期間も短いだろうしな。一時間後に宿舎の訓練場に来ること」そう言って、クラウスは聖堂の中に消えていった。 「よーし、やってやるんだから!」騎士団の試験。それは艦娘としての経験と瑠奈花の教えを試す絶好のチャンスでもあった。

2016-11-03 23:25:23
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指定の時間にプリンツが訓練場を訪れると、クラウス含め何人かの騎士が既にスタンバイしていた。 「プリンツ。君にはこれから我ら騎士団と手合わせをしてもらう」クラウスが告げた。「手合わせ?戦うってこと?」「そうだ。君がオイゲン騎士団の名を背負うに相応しいか、それは君の剣に聞く」

2016-11-03 23:27:45
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プリンツの前には騎士が1人出てきた。その後ろには更に何人か待機している。1人ずつ相手にしろということか。 「剣は本人の性質をよく反映するものだ。それを以て、君の資格を見定めよう」相手の騎士が剣を抜いた。「なるほど、わかりやすくていいわネ!」

2016-11-03 23:29:18
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プリンツも背中に掛けた剣を左手に、盾を右手に構える。 「私は艦娘、プリンツ・オイゲン!いざ尋常に、勝負!」剣を正面に掲げ、瑠奈花から教わった敬礼を済ませるとプリンツは勇敢に騎士に向かっていく!

2016-11-03 23:30:26
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「うおお!」プリンツを迎え撃つように騎士が縦斬りを繰り出す。(単調な手…)プリンツは剣を盾で受ける。そしてそのまま盾を振り払い、騎士を転倒させた。 「イテ!」短い悲鳴をあげる騎士を尻目に、プリンツは剣を掲げて叫んだ。「さあ、次の相手はどなた!?」

2016-11-03 23:31:10
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「娘さん、腕は悪くないですね」騎士達を次々と相手にするプリンツを見ていた試験官の騎士が呟いた。「まあ、私の娘だからな」クラウスは得意げに返しつつ、鋭くプリンツを観察していた。「だが、強いだけではいけない。プリンツ、お前ならわかるな…?」

2016-11-03 23:32:11
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「でやあぁ!!」円を描くように剣を薙いだ軌跡が、最後の騎士を倒した。「そこまで!」試験官は合図と同時に拍手でプリンツを讃えた。 「素晴らしい腕だ。君なら…ん?」「……。」プリンツは試験官の言葉を無視して、先程打ち倒した騎士達の元へ駆け寄った。

2016-11-03 23:33:12
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「何を…」「いいから」疑問に思う試験官をクラウスは制した。プリンツは騎士の腕を取り、簡単な回復魔法を行使した。 「試験とはいえ、痛くしてごめんなさい。簡単な魔法しか使えないけど、我慢してね?」「あ、はい…」みるみるうちに、腕にできた痣が消えていった。

2016-11-03 23:34:01
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「これで大丈夫。ね?」回復した腕を見てプリンツはにこやかに笑った。「て、天使がいた…」プリンツは相手にした騎士全員の傷を癒して回った。 「なるほど、わかりましたよ団長」試験官は納得したようにその様子を見ていた。

2016-11-03 23:35:35
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「ただ強いだけではない。溢れる慈しみの心、それがあの子のいいところだ。そしてそれは、我ら騎士団の理想とも合致する」「少なくとも、私に異存はありません」 試験官そっちのけで騎士1人1人に笑顔を振りまくプリンツ。その様子を、クラウスは満足げに見つめた。

2016-11-03 23:37:12
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「もう帰るのか?」 クラウスは大聖堂前のバス停までプリンツを送った。プリンツはオイゲン騎士団の正式制服を着こなしてご機嫌だった。 「うん。うちに帰ってゆーちゃんと合流したらね。久しぶりに家族でポトフを食べたかったなあ」

2016-11-03 23:38:32
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「生憎忙しいからな。まあ、今夜はうちに帰るとしよう。シンディにも伝えておいてくれ」「わかったわ」2人は互いの頬に別れのキスをした。 「よく似合っているぞ、プリンツ」「そう?」 プリンツが着る騎士団の制服。それは堂々、オイゲン騎士団の名を背負うに相応しいと認められた証である。

2016-11-03 23:40:09
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「ああ、お似合いだ。艦娘として、騎士として。オイゲンの名に恥じない戦いをして来い。瑠奈花殿の道を、お前が支えてやるのだよ」「わかったわ、パパ」プリンツの待つバスがやってきた。「じゃあまたね!また帰ってくるから!」クラウスはバスが見えなくなるまでプリンツを見送っていた。

2016-11-03 23:41:42
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プリンツはその後、同じく装いを新たにしたU-511と共に、雪花艦隊への帰路につく。U-511もまた、泊地での自分の活躍について嬉嬉としてプリンツに語るが、それはまた別の話である。

2016-11-03 23:42:12
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【武勇と慈愛を併せ持つ女騎士】プリンツ・オイゲン ドイツ出身の騎士にして艦娘。ある世界の「ハンター」クラウス・オイゲンの一人娘。父親譲りの片手剣と盾を使った武術を得意とする他、分け隔てなく振り撒く慈しみの心を持つ。ある作戦での共闘をきっかけに、英雄・瑠奈花に忠を尽くす。 pic.twitter.com/zilTwOeVIO

2016-11-03 23:46:16
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