ヨグヤカルタ・ナイトレイド #2
しかし実際それでロングゲイトの力は極めて強力なものとなった。もともとカラテに長けていた彼にとって、そのジツはまるでパズルのピースを埋める福音だった。短期間で一気にのし上がった彼は、今やコウ・タイ・シュメイのCEOから全幅の信頼を得ている。望むものは何でも手に入る。 23
2016-11-08 23:45:03彼はこめかみを強く掻いた。そうだ。何でも手に入る。満ち足りぬものなど無い……!それからクリスタル・グラスを空にし、フォーラムに近況メッセージを打ち込む。「ヨグヤカルタに来ている。ちょっとしたビジネス。見ての通り、宿は素晴らしい」当然、ビズの内容は明かすわけがない。守秘である。24
2016-11-08 23:47:25「フー……」ロングゲイトは柔らかいソファに深く沈み込み、息を吐いた。今回の彼のビジネス、それは、ボロブドゥール王シャン・ロアの支配する海域におけるコウ・タイ・シュメイ社の輸送船の安全保障を取り付ける事だ。旅客船、輸送船が、彼の支配する海域の付近で消息を断つ。異常な頻度だ。25
2016-11-08 23:55:05交渉の権限はロングゲイトに一任されている。シャン・ロア側は相当ふっかけてくるだろうが、許容範囲は多めにとってある。問題無い。撥ねつけられたとしても、次に繋ぐことができればよい。相手は一筋縄でいく相手ではない。シャン・ロアはニンジャである。証拠は無いが間違いない。 26
2016-11-08 23:57:51ニンジャ……それも相当に強力な……でなくば、ヨグヤカルタの住人の中でも特に神がかった連中が、王の用いる<ロウ・ワンの秘儀>とやらについてあれほど一貫性を持って語る事も無いし、警察機構の者達があんなガラスのように生気のない目と乾いた肌をして口も利かない事の説明にはならない。 27
2016-11-09 00:02:00シャン・ロアの抱える「大臣」とやらが、明日の夜、ロングゲイトと面会する予定だ。その段取りまでは取り付けた。あとはロングゲイトの覚悟と精神力次第だ。「なに……殺し合いをするわけでもなし」低くつぶやく彼の目が静かに光った。その手の周囲の空気が陽炎めいて揺らいだ。「殺し合いか……」28
2016-11-09 00:05:31