先日行われた時期アメリカ合衆国大統領選挙で、多くのメディアの予想を覆し、ドナルド・トランプ氏が当選を果たした。この結果はつい半年前行われたイギリスのEU離脱投票と強い類似性を有するものである。
2016-11-14 20:48:20一つ目の共通点は、勝者側が自国の利益のためならば他国との協調や融和など放棄するという孤立主義的な思惑に下押しされている部分であり 二つ目の共通点は、勝者側が投票を煽る過程で、ある特定の人口集団(イスラム移民、メキシコ人等)にあられもない憎悪表現をぶつけた所にある
2016-11-14 21:01:55すなわちより利己的であり、より差別的であれと叫ぶ存在が、結果的に多くの支持を集めたわけであり、これは教科書にかかれるような人類普遍の道徳とは逆行する。 だがそれは同時に隠しようもない人間の本性、本音の体現でもある。
2016-11-14 21:04:25時を同じくしてフィリピンでは麻薬犯罪者の大量虐殺を叫ぶ大統領が支持され、また日本でも戦後長らく抑制されていた中国人、韓国人へのヘイトスピーチが市民権を得て既に久しい。 世界的に心の奥底の欲望をむき出しにすることがムーブメントとなりつつある。 なぜこのような現象が生じたか。
2016-11-14 21:10:10戦後数十年間の世界は、アメリカ資本ハリウッド映画という、世界最大の宗教が地上を覆っていた。そこで提示されるのは まずアメリカが正義であり 次にアメリカが同じく正義たる民主主義陣営のリーダーであり この巨大正義が悪(ソ連、テロ支援国家)と世界の平和のため戦うという世界観であり
2016-11-14 21:14:37それが結局、アメリカ対ソ連、あるいはアメリカ対テロ支援国家という二カ国間のいさかいであった所で、映画というフィルターを通された結果他国の視聴者もまた当事者のような面持ちでアメリカに肩入れする心理となり その中で漠然とした指針(とりあえずアメリカを御輿に担いだ世界融和)
2016-11-14 21:19:13へと浸ることができた。 ランボー・トゥルーライズ・エアーフォースワンなどがこの手の経典映画にあたる。 しかし21世紀以降、この宗教は急激に弱体化し始める。 これはソ連の崩壊によるものでも、アメリカの相対的地位低下によるものでもなく デジタル技術およびネットの発達によるものである。
2016-11-14 21:24:09まずインターネットが登場する以前の世界においては映像メディアの力は今日より強く、特に全世界を飽和させることのできるハリウッド映画の影響力は絶大なものであったが、個々の市民がおのおので意思疎通できるようになった今となってはその威光は昔程の物でなくなり、人々は宗教から覚めやすくなった
2016-11-14 21:27:57反面、映像という名の宗教は、別な角度で盛り返しつつもある。デジタル技術の発達もあいまって、我々はケーブルテレビやyoutube、オンデマンドサイトなどを通じ、ここ数十年間の名作とされる映像コンテンツをいつでも繰り返し視聴するようになった。
2016-11-14 21:33:15この結果異なる時代の世界観に一日に繰り返し染められ、染められ直すことが恒常化し、結果今という時代が何者なのかよく分からなくなりつつある。これは今日における創作が過去数十年分の名作に押さつつある結果によるものである。 この中で我々が唯一今という時代を認知できるのは
2016-11-14 21:40:15今この瞬間の出来事を映し出す生配信、liveを見ているときに限られる。 今日が過去の創作、過去が描いた理念と対比しいかにみすぼらしく見えようが、「今」という時間の切っ先に存在している時点でこの瞬間は他の時代から区別しうる特異点なのであり、我々は自らの足場を見出すことができる。
2016-11-14 21:43:29その手助けになるのは、皮肉なことにやはりyoutubeや動画配信サイトである。 そこには一般市民一人一人の視点による、剥き出しの今が常時アップロードされ続けている。これらの視聴が日常化した世界においては、剥き出しのリアルこそがハリウッド的世界観に変わる心の支えとしての指針となる
2016-11-14 21:51:27結果これまでの歴史が目指してきた理念といくら乖離し反逆することとなっても、人々の視線はひたすらリアルたることへ向けられ、これを追求し、本能の赴くままより利己的で差別的な方向へ走っていく。
2016-11-14 21:53:58次なる融和への希求は、このリアルの追及が限界を迎え、歴史の流れの中に指針となるべき一定のストーリー性を(ハリウッド的世界観にみられるような)再度取得する余裕を人々が手にし得たとき訪れる
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