「増田貴久が見つかった。」「増田貴久はSFだ。」 「増田貴久はヒトではない。」#NEWS担文芸部
増田貴久が見つかった。赤い髪を靡かせてあの日の場所に佇んでいた。 あの日の彼の面影を残しながらも僕らの空白の時間で彼が手に入れた不思議な魅力は彼の背中が物語っているようだ。ニヒルな笑みを浮かべながら彼は僕に向かってこう言った。「俺があの日の俺のままだと思った?」#NEWS担文芸部
2016-11-18 08:58:24ひとひらの椿がぱたりと土に落ちた。ただただぼーっとその姿を目で追っていると、同じように椿に見とれた男が目に入る。 「はじめまして。失礼ですがどこかでお会いしましたか?」 何度生まれ変わっても僕は何度だって君を見つける。 「増田貴久が見つかった。」#NEWS担文芸部
2016-11-18 09:50:04増田貴久が見つかった。黒い傘をすっと上げると彼だった。海辺の古い酒場の前で、街灯に照らされた雨粒が彼の足元で煌めいた。身分を捨て何故隠れるように生きているのか、私たちには知る由もない。ただ今晩もこの国は平和な雨に沈んでいる。 #NEWS担文芸部
2016-11-18 13:06:07増田貴久が見つかった。どうやら今度はお月様。「おいでよ」 おかしいだろ?普通そっちが帰って来るんじゃないのか。「怖いんでしょ」 にたり。ムカつくその顔に1発お見舞いしてやろうかと思ったけど、そうだ彼は月にいる。足元に落ちていた金色の三角を拾い、俺は重い腰を上げた。
2016-11-18 15:15:40増田貴久が見つかった。彼はいつも笑顔で優しくて、どこか蜃気楼みたいな人だった。何をするでもなく、並んでテレビを眺めるいつもの時間。「別れよっか。」と、口をついて出てしまった。そっと彼の顔を盗み見る。見たことのない表情をしていた。初めて彼に触れたような気がした。#NEWS担文芸部
2016-11-18 20:56:15やっと見つけてもらえた、と無邪気にはしゃいでいる様に見える目の前の彼が本物の増田貴久でないことなんて、もう分かりきっている。でも一応、「増田貴久が見つかった」と何度目かの報告をしてみれば案の定、その男は片側の口角を上げ鼻で笑う。「そんな訳無いだろ」 #NEWS担文芸部
2016-11-18 21:39:04