サキさんのムラぬえ

サキさんのようなもの @sananue_married

「……ぬえ？」「なに？」「泳がないの？」「私はいい」最近、ぬえを誘って紅魔館近くの湖で泳いでる。が、何故か私だけが泳ぎ、ぬえはだるそうに見てるだけで全く泳ごうとしない。それどころか、「ねぇムラサ」「なに？帰っていい？」いつも帰りたがって。

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「だめ、それは」「なんでさ。勝手に連れてこられてずっと放置されるなら帰りたいんだけど。スッゴい暇」まぁ、確かに私が無理矢理連れてきてるんだけど。でも、そうでもしないとぬえはあの緑巫女の傍から離れないし。私だって妬いてるんだぞこんちくしょう。

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ていうかそんなに暇なのなら、「ぬえも泳げばいいじゃない」、と毎回思う。何度もそう言っても、「……私はいい」同じ答えが帰ってくる。ちくしょう、私はぬえの泳ぐ姿が見たいからいつも連れて来てるのに。これじゃあ意味がない。

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「……つまんないの」「え？」「なんでもない」ボソッと呟きながら、ぬえの隣に座る。ちょっと濡れるんだけど、なんて言葉が聞こえてきたけど無視。私が座りたいんだから。「ぬえはさ、なんで泳がないのさ？」「……別に意味なんてないわ」意味がないのなら、泳げばいいのに。

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私だけ泳いでもつまらない。放置されてるぬえはもっとつまらないだろうけど。……なんで泳がないのかな。絶対理由があるはずだ。ぬえが、泳がない理由。（……うーん）ふと、ぬえのさっきの言葉を思い出す。『ちょっと、濡れるんだけど』「それか！！」「うわ！？なによ突然！？」

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なるほど、そういうことか！ぬえは濡れたくないから泳がないんだ！それなら無理矢理濡らせばいいんだ！うん！というわけで、「ぬえ」「なに――」ドン。ザブーン。「ゴポッ！ムラ、なにすっ！」「ん？こうすればぬえも泳ぐんじゃないかって」ぬえを強制的に湖へ入れる。どうだ、これで……あれ？

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「ぬえ？」………静寂。気付けばぬえの姿が無くて、「ちょ、ぬえ！！？」私はぬえ救出へと飛び込んだ。　　　　　　　　　　「ったく……何すんのよ……！！」「えと、つい？」「ついで殺人未遂すんな！！！」うん、でも、ほんとうについ、なんだ。ぬえが泳ぐかと思って。

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……でもさ、これってもしかして。「ぬえってさ、カナヅチだったの？」「―――！？」ぬえの水を搾り出す動きがピタッて止まる。「あ、図星？」「う、うっさい！いいでしょ別に！」大体私は泳ぐ必要が無かったんだし第一さ人は水に浮かないし、なんて言い訳をしてるぬえ。あ、顔を朱くしててかわいい。

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……でも、この朱い顔、あの緑巫女はしょっちゅう見てるんだろうなぁ。ちょっと悔しい。　でも、ぬえがカナヅチ、なんていう秘密が知れたのは、よかったかな。多分、緑巫女は知らないだろう、ぬえの正体不明の一つ。ちょっと優越感。　「って聞いてるの？ムラサ」

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ちょっとニヤけてたら、気付いたらぬえに睨まれてた。でもやっぱり顔は朱くて。かわいい。「あぁ、ゴメンゴメン」「人の話ぐらい聞きなさいよ」「うん、ゴメンね。でもさ、」ぬえをぎゅって抱きしめる。離さないように、ぎゅって。

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「ちょ、ちょっと！？」「でも、そんなぬえもかわいいと思うよ？」「は、はぁ！？」今は私のぬえでいてほしい、って祈るように、私は言う。「苦手なところ、そんなの誰にだってあるんだしね」「そ、それはそうだけど……」

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「そして、ぬえはカナヅチだ、と。でも、そこもぬえの魅力的なところだし、かわいいよ、ぬえ」あぁ、このまま私のものになればいいのに。そんな願い、届くわけないけど。でも、つい願っちゃう。せめて、今だけは私の……「……ムラサ」「ぬえ」「……一辺くたばれ！！！」「グフゥ！？」

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気付けばぶっ飛ばされてた。ロマンチックなムードが台なしだ。私、なんか悪いこと言ったっけ……？「そんな人をカナヅチカナヅチ言うな！本人はそれほんとうに気にしてるってのよ！！」あ……ごめん。

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「……フン！！」そう言って私を置いて飛び去ってしまった。方向的には守矢神社。……私だけのぬえは、もうおしまいか。短かったけど、幸せだったかな。ぬえの抱きしめたとき、ほんとうに幸せだった。……最後に、これだけは言わせてね。ぬえ。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ほんとにごめん。