アセイルド・ドージョー #3

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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リンク note(ノート) 第5話【アセイルド・ドージョー】 | ダイハードテイルズ | note 「ボロブドゥール」「企業のポータルを使う」「あれは……何者だ……!」「駄目だ、ナラク!」「王様です」「ヨグヤカルタに来ている。ちょっとしたビジネス」「決済できました」「血を抜くにはやはりボトルネックカットチョップが最も新鮮です」「Wasshoi!」「あれはサツバツナイト。太古の暗殺術、チャドーの使い手よ」「スゥーッ……フゥーッ」「二度触れた者……!」(怒りが、おれとナラク・ニンジャを繋いでいる)「こんな事をしたところで、きりがないんだぞ」「義を見てせざるは勇無きなりです」「奴がかつてのニンジャスレイヤーだ
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「おっさん」エンドロが顔をのぞかせた。「おっさん?生きてる?フジキド=サン?」「……」「ウィッチドクター、連れて来たぞ」「……」「生きてるか?ちょっと」「……うむ」闇の中に赤い光が灯った。フジキドが片目を開けたのだ。そしてエンドロを押しのけるように皺くちゃの老婆が入って来た。 1

2016-12-05 22:23:00
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「生きていた、これはびっくりだ!逃げ帰ったかえ?ホホーッ!」ウィッチドクターは合掌し、フジキドを拝んだ。「よせ」フジキドは手で制した。そして枕の横の頭陀袋に手を挿し入れ、黒く萎びた物体を取り出した。舌のミイラだった。「引き抜いて暫くすると、こうなった」「ホホーッなんと!」 2

2016-12-05 22:25:23
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手をのばした老婆から反射的に手を引き、フジキドはじっと見た。「"なんと"とは?オヌシが解呪の手段を知っているという話だった……」「そりゃあ驚きますとも!伝承を知っておるんじゃ。だが、確かな伝承じゃぞ。何を今さら疑うかねこのガキは!」ウィッチドクターはやや怒った。「診ないぞ!」 3

2016-12-05 22:29:24
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「そう言うな婆さん」エンドロが老婆に耳打ちした。「こういう奴なんだ。でも必死なんだよ」「フン……まあよいわ」老婆は咳払いして、乾いた舌の表面の印に顔を近づけた。「左様、邪悪なムカデの王はな、ずうっと昔にこの地を荒らしに荒したのじゃ。大いなる戦いが幾度も繰り広げられ」「治療!」4

2016-12-05 22:32:15
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エンドロにたしなめられ、老婆は懐から見慣れぬ文字で飾られた布の切れ端を取り出し、床に置いた。「しかし、シャン・ロ…」言いかけて声を潜め、「…その子分が実際この印を身体に持っておったという事は、いよいよボロブドゥールのアレは本物じゃわいの」布の上に乾いた舌を置く。 5

2016-12-05 22:37:56
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「子供!香炉に火!」「アイ、アイ」エンドロは老婆の指示に従い、部屋の隅に置かれた香炉を準備する。フジキドは老婆と布を挟んで床にアグラをかいた。眉をしかめ、いまだ強烈な呪いの力に抗い続けている。老婆は不意に突っ伏し、頭の上で黒檀の鎖を擦った。「セノケバタ……ヨグノマ……カ!」6

2016-12-05 22:41:26
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エンドロは胡散臭げに老婆の祈祷を見ていた。だが、やがて明らかな変化が生じた。香炉から立ち昇る白い煙が蛇めいてうねり、布の上の舌のミイラを囲むように漂うと、フジキドの口の中に吸い込まれていった。メキメキと嫌な音が聞こえた。フジキドが苦悶を押し殺し、呻いた。「……できた!」と老婆。7

2016-12-05 22:43:48
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「できたのか?」エンドロが老婆を見た。老婆はニイーッと歯を見せて笑い、フジキドを見た。「深く吸え!そして吐いてみよ」「スウーッ……ハアーッ……」「どうだ!平気か!気持ちよくなったか?」「……」フジキドはムカデの痣をさすった。「……そうだな……うむ」「なんと!成功だわ!」8

2016-12-05 22:47:09
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フジキドはその場で立ち上がり、軽く跳ねた。「……確かに。感謝する」「感謝せえよ!ま、邪険にはできんしの」「そうだよ」エンドロが睨んだ。「前金もらってるんだ」「いいか、フジキド=サン。そなたの中のムカデは沈めた。だが、くだしてはおらんぞ。一時しのぎじゃ」老婆が目を細めた。 9

2016-12-05 22:52:03
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「わかっている」「ロウ・ワンの呪いを解ききるには、引き続き、子の印を集めよ。いたずらに時を経れば元の木阿弥じゃぞ。ゆえにな……」フジキドは布の上の舌を拾い、懐にしまった。「あ!」老婆が惜しそうにする。「わかった。すぐに呪物を揃える。それまで私が預かっておく」「ああ、そうかい」10

2016-12-05 22:56:18
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「それから、エンドロ=サン」フジキドが少年を見た。「頼んでおいた品は調達できたか」「ああ……うん」エンドロは表からポリタンクと粉末瓶を運び込んだ。「カネは足りたか」「足りた。でも、これ……」「充分だ。感謝する」フジキドは品物をあらため、棚の横のドラム缶を振り返った。 11

2016-12-05 23:00:59
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老婆がそそくさと退出すると、エンドロは商売人めいた目になり、フジキドに笑いかけた。「他に何か入り用かい?カネ、まだあるなら何でも調達するからさ……あとカラテを……」「帰れ」「でもさ」「すぐにだ」フジキドが有無を言わさぬ口調で命じた。エンドロは不服げに振り返りながら出ていった。12

2016-12-05 23:07:44
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……「畜生、あのオッサン」エンドロは銃声轟く夜の町はずれを歩きながら、クチャクチャとガムを噛んだ。「もっと稼げるかと思ったのによ」水溜まり付近の電線がバチバチと火花を散らしており、危険だった。野生化した軍用ハウンドの遠吠えも聞こえてくる。「クワバラ」彼は呟き、メモを取り出す。13

2016-12-05 23:11:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そこには直通のIRC情報が記されている。エンドロは周囲の様子をキョロキョロと窺い、そののち、薄明りに照らされたIRC専用デッキ・ボックスに滑り込んだ。トークンをスロットに投入し、金属のボタンをガシガシと押すと、狭い液晶画面にアドレスが入力されてゆく……。 14

2016-12-05 23:13:51
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タタタタン……タタタタン。30分が経過しても銃声は止まなかった。今宵は反抗勢力が一際調子づいている。どのみち、最終的にはカロウシタイの無慈悲な武力が勝つであろう。彼らはシャン・ロア王の恩寵により、眠らぬ兵士として生まれ変わった者たちなのだ。セストーダルは足早に街はずれを進む。16

2016-12-05 23:20:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

グレイウィルムを殺して逃走したサツバツナイトの居場所が特定できた。高額の報奨金を提示し、密告ネットワークに情報を収集させたのだ。先程、通報者からのタレコミの裏付けが取れた。当初はサツバツナイトにカネで雇われ、仮宿を提供したものの、財布の紐が思いのほか固く、失望したのだという。17

2016-12-05 23:25:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(これがヨグヤカルタのルールだ、サツバツナイト=サン)歩きながらセストーダルはほくそ笑んだ。(貴様は何度でも裏切られ、何度でも罠にかかる。のこのここの国へやって来てロウ・ワンの呪いを受けたあの日が、貴様の災難の終わりではないぞ) 18

2016-12-05 23:29:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

随行のカロウシタイは用意していない。残念ながらこの地域にはいまだシャン・ロアの支配を良しとしない勢力が無視できぬ規模で潜伏している。無謀なゲリラ市民を呼び寄せ、くだらぬ小競り合いが起これば、肝心のサツバツナイトを取り逃がす事にもなる。相手は手負いのニンジャ一匹、支障無し。19

2016-12-05 23:34:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

セストーダルは民家の屋根へひらりと跳びあがって身を沈め、プロゴ川を背にしたボロ家から漏れる弱々しい明かりを見た。あの建物に相違無し。「SHHHH……」細めた目が妖しく光り、平たい舌がヴェールの中でのたうつ。彼は耳を澄ませ、ニンジャ聴力を最大に発揮した。……息遣いが確かにある。20

2016-12-05 23:39:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

セストーダルはもはや躊躇しなかった。身を沈めたまま、彼は奇怪な条虫めいた動きで匍匐前進し、稲妻めいた速度であばら家に至った。「SHHHH!」彼は室内へ染み入るように入り込んだ!「トッタリ!」盛り上がったフートンを引き剥がすと、ピン、ピンピン……。何らかのワイヤーが撥ねた。 21

2016-12-05 23:43:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

セストーダルのニューロンにニンジャアドレナリンが注ぎ込まれ、主観時間が泥めいて鈍化した。ワイヤーがゆっくりと剥がれてゆくと、部屋の中に置かれた不穏なドラム缶の付近で火花が生じた。火花はドラム缶の中から引き出された濡れた紐に引火し……視界が白く染まる。KRA-TOOOOOM! 22

2016-12-05 23:46:18