魔導聖騎士 スイート☆パラディン Happy Ending!【プロローグ[side:H]】
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聞くだけで押しつぶされそうな低く重苦しい声。ふたりの少女は、力無く地に伏したままそれを聞いた。「女王ムーンライトの無知で無力な奴隷達よ」 2
2016-12-06 20:08:28ひび割れた荒野。肺の灼けるような空気。荒々しくそびえ立つ幾つもの岩の柱。轟く雷鳴。それらを包み込む闇。闇。闇。中学校の制服姿で倒れる娘達を、その全てが嘲笑うように見下ろし、または見上げていた。「この呪わしき我が支配領域、ヤクサイシンこそが。貴様らのつまらぬ人生の終着点である」 3
2016-12-06 20:11:15「ナナ!ダメだッチ、起きるッチ!」男の裏声めいた甲高い声と共に、ネズミかクマを想起させる青いモコモコのぬいぐるみが少女を揺さぶる。「ここで倒れたら、ショトー・トードは…そしてキミ達の世界は、ファクトリーはどうなるッチ!」ナナと呼ばれた短髪の娘は、うつ伏せのまま微動だにせぬ。 4
2016-12-06 20:14:41「お願いだリー、目を覚ましてリー…」ピンク色をしたもう一体のぬいぐるみは、その隣で倒れている長髪の少女に力無く声をかける。やはり返事が無い。「駄目、いづみ、負けちゃ駄目だリー…」 5
2016-12-06 20:17:28無理からぬことである。ナナもいづみも、この連戦で体力を、そして内なる魔導力をあまりにも消費し過ぎたのだ。町に二体も同時に現れたプリッキーを人間に戻し、そのまま幹部たるスコヴィランの戦士達を四人も倒し、その足でヤクサイシンへのゲートへ飛び込んだ。 6
2016-12-06 20:20:34そこで待ち構えていたのが、彼…燃える緋色の眼と六枚の翼、何より圧倒的な闇の魔導力を持つ魔王、ジョロキアである。「愚かなるショトー・トードの妖精達よ。恨むなら貴様らが妄信する女王ムーンライトを恨むのである」 7
2016-12-06 20:22:52ナナといづみの打撃を受け止め、武器をいなしたジョロキアは、ふたりが力を合わせて放った必殺技、スイート・ムーンライトパフェ・デラックスすらも跳ね返した。そして今、超然たる様で宙を舞いながら、目覚めぬふたりを、そして矮小なる二体の妖精を見下している。 8
2016-12-06 20:24:56「貴様らが独占してきた奇跡の泉、スイートファウンテンは二度と還らぬ。ファクトリーの幸福から生まれた甘いお菓子を出す日も二度と訪れぬ。奇跡の泉はここヤクサイシンで、不幸から生まれた辛いお菓子を出し続けるのである。永遠に」魔王の高笑いが、アァーハァーハァーハァーと大気を震わせた。 9
2016-12-06 20:27:51「もう、駄目だリー」ピンクの妖精の口から、その言葉がぽろりと漏れた。「ま、マリー!何を言うんだッチ!?チョイス達が諦めたら、ショトー・トードのみんなはお菓子が食べられずに飢え死にしてしまうッチよ!?」「チョイスだって分かるはずだリー…あんなの、勝てるはずがないリー」 10
2016-12-06 20:31:00マリーの言葉に、青い妖精…チョイスは思わず言葉を詰まらせた。俯くマリーの目に、うるうると涙が浮かんでいく。いつもの気を引くための嘘泣きではない、真なる絶望の混じった涙が。「左様。理解し、嘆き、悲しみ、泣き叫べ。それこそ我らが糧となるのである」 11
2016-12-06 20:32:50赤と黒の鎧で包まれた魔王の肉体に、闇の魔導力がほとばしる。全て消し飛ばすつもりだ。マリーの前では格好つけたがるチョイスすら、今や泣きだしそうであった。「さらばだ。弱く愚鈍なる兄弟達よ」歯を食いしばり下を向くチョイスの、そしてマリーの涙は、目からこぼれ、ふたりの体に落ち――! 12
2016-12-06 20:37:05その時、不意に声が聞こえた。チョイスとマリーもよく知る、小さく、しかし力強い声が。ジョロキアは眉をひそめ、声の主を…ぴくりとその左手を動かした、今やズタボロに等しいナナをじろりと見た。「アタシ達は、約束…したんだから」「…そうよ」同時に右手で地面を引っ掻いたのは、いづみ。 14
2016-12-06 20:40:35「東堂町を。世界を…ショトー・トードを、守るって」「スイートファウンテンを…取り戻すって」既に動かぬはずの体を必死に動かし、体を支え。そして、震える両脚で立ち上がったふたりは。ナナといづみは。世界の敵を、ジョロキアを、真っ直ぐに睨みつけ…同時に叫んだ!「「約束、したの!」」 15
2016-12-06 20:42:58「愚かである!」その声をかき消すように、ジョロキアが吼えた。「苦しむ時間が長引くだけだというのに、まだ立ち上がるとは!」「アンタを倒すまで、倒れてなんかいられないでしょ!」しかし凛としたナナの声は、闇そのものにも近しく思えるジョロキアの声を突き破り、荒野を揺らした。 16
2016-12-06 20:45:54それに呼応するように、隣のいづみが続ける。「自分がお菓子を食べる為なら、妖精達が飢えてもいいなんて!」「人間達がどれだけ不幸になっても構わないなんて!」「そんなの絶対!」どちらが合わせるでもなく、全く同時に。ふたりは言い放った。「「許さないッ!」」 17
2016-12-06 20:48:44「無知!無明!不識!愚昧!愚盲であるうゥゥウゥッ!」大気をびりびりと震わせ、顔にビキビキと血管を浮かび上がらせながら、ジョロキアが叫ぶ!「何も分かっておらぬ!目障りな小娘共に邪魔臭い人形共!我が魔導の前に塵と化せェエィ!」 18
2016-12-06 20:51:52ジョロキアの両腕が、ボンと膨れ上がる!そして直後!その両掌から、雪崩のような量の闇の魔導エネルギーが放たれた!死という概念そのものが迫ってくるようなその衝撃に、思わず抱き合う妖精達!それでもナナは、いづみは!迫りくるそれと真っ直ぐに対峙した!「行くよッ!」「うんッ!」 19
2016-12-06 20:53:27右側に立ったナナは左手を、左側に立ったいづみは右手を、お互いに向けて差し出す!決して離れぬようがしりと指を絡ませ、想いの強さだけ全力で握る!そしてもう片方の手に取り出したる奇妙な機械!あれこそ女王が授けし奇跡の魔導アイテム!ムーンライト・ブリックスメーター! 20
2016-12-06 20:56:29「消え去れェイ!」そして、ジョロキアが吐いた呪いの声より高らかに轟かせるのは、ふたりを結ぶマジックワード!「「メイクアップ! スイートパラディン!」」 21
2016-12-06 20:58:23ムーンライト・ブリックスメーターを掲げたふたりの全身から、ドーム状に光が溢れ出す!それはふたりの制服を弾き飛ばし、チョイスとマリーすらも包み、そして襲い来る魔導エネルギー波を受け止め、逸らしてゆく!「ぬうぅんんンッ!」 22
2016-12-06 21:00:23そう、ふたりの変身時に一瞬だけ放たれる高密度魔導エネルギーは、あらゆる攻撃を通さない!タイミングさえ合わせれば、たとえそれが魔王ジョロキアによる全力の一撃であったとしても!「姑息な真似をォッ!」 23
2016-12-06 21:02:49