魔導聖騎士 スイート☆パラディン Happy Ending!【プロローグ[side:H]】

テキストカラテ・ドージョー @mpb_karate

光の中を舞うふたりはくるくると回転しつつ、聖騎士の衣装を纏い始める！輝く手甲が右腕に、左腕に！続いて鉄靴が右脚に、左脚に！肩当てが右肩に、左肩に！煌めく宝石付きの大きなリボンが胸に！髪型がぞわぞわと変わり、ナナの髪の毛は炎のように逆立ち、いづみの髪はふわりと伸び広がる！ 24

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そこでふたりは赤子のように身を縮め…勢い良く大きく開く！体を覆っていた光が弾け飛び、そこに現れるはフリルの付いたエプロンドレス！短めのスカートの下はスパッツ！ナナはピンクで臍出し、いづみは水色で露出の少ない形！そのまま地面へ向けて落下したふたりは、ズンと音を立てて着地した！ 25

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「とろける甘さはみなぎる元気！スイートチョコレート！」先程までナナだった聖騎士は可愛らしく決めポーズ！「広がる甘さは清まる心！スイートキャンディ！」同じく先程までいづみだった聖騎士は美しき決めポーズ！そしてふたりは声を揃え、合体決めポーズと共に高らかに己が何者か宣言する！ 26

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「「メイク・ユア・ハッピー！スイートパラディン！」」弾ける光と共に、女王ムーンライトが聖騎士、スイートパラディンが！今再びその姿を現したのである！ 27

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「貴様らァ、先程そうして敗れたばかりなのを忘れたかァッ！」だが、そう、ふたりは先程までも同じように変身形態を取っていた。ところがジョロキアの猛攻の前に、ふたりは成す術も無く倒された。地面に打ち付けられたスイートパラディン達は、そのまま力尽きて変身を解除してしまったのである。 28

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「同じ過ちを何度でも繰り返す！まさに――」「そう！何度でもやってみせるッ！」ジョロキアの言葉を打ち消し、チョコレートが叫んだ！「アナタを倒すまで！消えたりなんかしない！」キャンディが力強く続ける！ジョロキアはギリと奥歯を噛みしめた！彼の全身に再びほとばしる、邪悪なる魔導力！ 29

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「ほざけーエェ！」彼の腕から放たれたのは、ヨーヨーめいて腕に紐づけられた円盤形のエネルギー体！高速で往復しながら襲ってくるこの武器は、先程ふたりを倒したものと同じである！だが、スイートパラディン達はたった一度視線を合わせ頷くと、それぞれ別の方向に跳び、回避した！「なっ！？」 30

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ジョロキアは再びヨーヨー弾を手元に戻し発射！手元に戻し発射！手元に戻し発射！一往復に〇コンマ三秒もかからない！この連続攻撃に巻き込まれたスイートパラディンは、力無く地に伏したはずなのに！ふたりは風のように走りながら、この恐るべきスピードの攻撃を避けている！「不合理ッ！」 31

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ふたりは既に知っているのだ！魔王の攻撃を攻略するヒントを！（カイエン！）チョコレートの記憶に浮かび上がったのは、ジョロキアのしもべ、スコヴィランの戦士たる男。双剣の刃を回転丸鋸に置き換えたような奇妙な武器『スコヴィルピザカッター』の使い手、カイエン・バーズアイ。 32

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電気ではなく魔導力で回転するそれを、彼はアクロバティックに使いこなし、幾度となくふたりを危機に陥らせてきた。一撃喰らうだけで致命傷となりかねないこの武器を攻略した時のことを思い出しながら…チョコレートとキャンディは！お互いがお互いに向け全力で駆け寄ったのだ！「ぬぅッ！」 33

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ここでジョロキアも、敵の狙いに気付いた。的同士がここまで近いと、一度にふたつのヨーヨー弾を使うのはまずい。エネルギー弾同士がうっかりぶつかってしまう可能性がある。互いの回転に巻き込み合って爆発など起こせば、そこに決定的な隙が生まれるだろう。「だが、無駄な足掻きである！」 34

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ジョロキアはヨーヨーを引っ込めると、今度はその魔導力を…無数の黒いナイフに変え、一斉に放った！確かにヨーヨーに比べ一発一発の威力は弱いが、これだけの数を同時に受ければ、そのダメージは計り知れぬ！上！右！左！後ろ！全ての方向に刃が降り注ぐ！逃げ場が存在しない！ 35

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「こんな時は、行くよキャンディ！」「分かってるッ！」そう、スイートパラディンはこの状況をも学んでいる！やはりスコヴィランの戦士達との戦闘で！脳裏に浮かぶ彼は、身の丈三メートル、「ウガァ」「壊す」「分からん」が口癖の筋肉ダルマ、ネロ・レッドサビナ！ 36

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彼が背中に背負っていた巨大な『スコヴィルフードプロセッサー』には、中に物を入れて砕く以外の変わった使い方があった。近くの岩などを放り込み、ふたをせず砕く。これにより、中で砕かれた無数の石達が、弾丸のような勢いで周囲に飛び散るのだ。もし射程圏内にいれば即座に蜂の巣である。 37

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その状況をいかに攻略したか！「「サモン・クックウェポン！」」ふたりが手を二度叩き呼び出したるは、聖騎士の武器！「カモン！スイートパレットナイフ！」チョコレートの右手に現れたのは、ケーキにクリームを塗る時使うパレットナイフ！無論ただのそれではない！全長が背丈の半分ほどもある！ 38

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「カモン！スイートホイッパー！」同時にスイートキャンディの左手に出現したのは泡立て器！当然その大きさはパレットナイフとほぼ同じ！これらの武器で残らずナイフを撃ち落とす作戦か！？しかし向こうは永遠にナイフを投げ続けることすら可能、このままでは…いや、そうではない！ 39

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ふたりはお互い向かい合って体をピッタリとくっつけると、頭を守る形で武器をしっかりと構えた！もう片方の腕で互いの腰を抱いたふたりは、全く同じタイミングで地を蹴り…あろうことか、そのままドリルめいて回転しながら、空中にいるジョロキアに向けて突っ込んだのである！「何ィ！？」 40

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そう、答えは『直進』であった！この姿勢を取ることにより、前方から飛んでくるナイフを受ける面積は最小となる！あとは武器とガントレット、そして回転の力でナイフを弾き飛ばしながら、敵との距離を一気に詰めてゆき、接近戦に持ち込むのだ！「小癪、小癪、小癪であるゥッ！」 41

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ジョロキアはナイフ攻撃をやめ、大きく息を吸い込むと、その口から大量の赤い霧めいた気体を吐き出した！「あッ！」「だめッ！」回転でナイフは弾けたふたりだが、相手が気体では弾き飛ばすことはできない！ふたりはその勢いのまま、赤い霧の中に飛び込んでしまった！その向こうには…！ 42

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…宵闇に、雪に包まれた町に、大きなクリスマスツリー？「あれっ？」「ああ、ナナちゃん！」爽やかな若い男の声が、ナナの耳に届く。声の主は、ライトアップされたツリーの下に立っているよく知った顔。「…淳児君？」 43

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栗色のスリムなコートを着、白黒のマフラーを巻いた彼は、間違いない。東堂中学校サッカー部のエース、ナナ憧れの男子、淳児。彼が、大きく手を振りながら、こちらにやってくる。「元気だね、雪に飛び込むなんて」「あ、え」そう、黒いPコートを着たナナは、道の真ん中で雪の上を転がっていた。 44

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ここはどこだ、知っている、東堂駅前の広場？ああ、そうか。今日はクリスマスイブであった。イブの夜、憧れの淳児に、ふたりっきりで食事に誘われるという、想像もしていなかった展開。遅れないよう準備して、目いっぱいお洒落をして出てきたというのに。こんな大切なことを忘れてしまうなんて。 45

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「ご、ごめん、なんでアタシこんな」「大丈夫だよ」微笑みと共にナナへと歩み寄った淳児は、紳士的にその右手を差し出した。「遅れちゃうよ。いいお店を予約したんだ。ほら、僕の手を取って」「じゅ、淳児君」 46

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イケメンで女子にもモテモテの淳児君。サッカー部としてはやや髪の眺めな淳児君。いつも自分に優しく微笑みかけてくれる淳児君。彼の温かい右手が、ナナの目の前に。こんなにも近くに。雪の上に倒れたままのナナは、その右手をそっと差し出し――！ 47

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「って、ちがぁーうッ！」張り上げた大声と共に、ナナは驚くべきスピードで飛び起きた！手を差し伸べた姿勢のまま唖然とする淳児！「ナナちゃん？」「違う違う違う！忘れるトコだった！あーもう、淳児君ごめん、アタシ今やることがあるの！」淳児の隣をすり抜け、ナナは走り出す！ 48