アセイルド・ドージョー #7

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
0
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フジキド」ユカノはメンポ・オブ・ドミネイションを受け取り、下ろした。弱々しく微笑んだ。「わたしの不甲斐なさゆえに、世話をかけましたね」「どうという事はない」フジキドは頷いた。「ゴウランガ……」タイセンは涙を拭った。黒雲が去り、美しい水色の空が広がった。 21

2016-12-17 23:30:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼女は石にされながらなお、ロウ・ワンの呪いの力に抗い続けていた。己の内なるチャドーによって。「神器を手にするまでにいかなる冒険を?」冗談めかしてユカノが言った。精一杯の陽気である。「次はヌンチャクだ」フジキドが答えた。「レッドドラゴンとやらから取り返す。ワラキアだったな」 22

2016-12-17 23:37:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フジキド。そこまでの骨折りは……そなたは今やドラゴン・ドージョーの内弟子ではなく、わたしが問題を解決するべきで……」「このドージョーを育てねばなるまい。ドラゴン=センセイ」フジキドが言った。ユカノは食い下がった。「レッドドラゴンは即ちブラド・ニンジャ。大変に手ごわい者です」23

2016-12-17 23:44:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「方法がある筈だ」フジキドは穏やかに、だが決断的に言った。ユカノは肩を落とした。「わかりました。命を捨てる真似は、なりませんよ」「心得ている」「フジキド=サン……俺が、もっともっと強ければ」タイセンが歯噛みした。「オヌシは強い。精進せよ」フジキドは言った。 24

2016-12-17 23:49:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「心苦しいですが、頼みます。フジキド」ユカノが言った。「神器は万が一の時に、カツ・ワンソーへの数少ない対抗手段となる筈のもの。平時にあって、極力、散逸を避けるべきものなのです」「任せておけ」とフジキド。そして……そのとき彼がふと思いを馳せたのは、ワラキアの地ではなかった。25

2016-12-17 23:55:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヨグヤカルタの地で出遭った赤黒のニンジャ。ニンジャスレイヤー。あれが間違いなくニンジャスレイヤーそのものであると、当然、彼にはひと目でわかった。そして彼のニューロンにフラッシュバックするのは、ずっと昔の記憶だ。ドラゴン・ゲンドーソーの存在無くば、フジキドは悪鬼となり果て……。26

2016-12-18 00:00:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フジキドはセンセイではない。だが彼はニンジャスレイヤーがもたらすものを誰よりも知る存在だ。やがて迫られるのは、いかなる選択か。「ユカノ。通信手段を借りられるか」彼は建物の側のワータヌキ像を指さした。ワータヌキの頭にIRC通信機が設置されている。「構いませんが……どうしました」27

2016-12-18 00:06:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャスレイヤーをこの目で見た。ヨグヤカルタの地で」「なんと!?」ユカノが目を見開いた。フジキドは続けた。「ただの一目だ。その為にヌンチャクの件を先延べする事はできぬ。しかし看過は到底できぬ。さいわい、信頼に足る相手はいる」彼はワータヌキ像のもとへ歩いた。 28

2016-12-18 00:09:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

岡山県の山頂ゆえか、通信の確立には時間を要した。だが無事に繋がった。「モシモシ」女の声が応えた。「アー……モシモシ?」「モシモシ。聞こえるか。フジキドです」「声が遠い……フジキド=サン……え!?フジキド=サン?そこ、どこッスか?ドーモ、シキベです。そこ、どこです?」 29

2016-12-18 00:15:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヨグヤカルタの最高級料亭「ペラサーン・スカ・シータ」は、先日、政府高官とコウ・タイ・シュメイ社エージェントの暗殺事件の舞台となったばかり。それから諸々の後始末をつけ、営業再開にこぎつけた矢先の出来事であった。客。従業員。警備員。一人を除き全ての者が命を奪われ、横たわる。 31

2016-12-18 00:25:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ンッ……ンンーッ……さて始めるか」リラックスした様子で庭に進み出、伸びをしたニンジャの両手は真っ赤だった。彼がすべての者を殺めたのだ。調べものをするのに邪魔だからだ。彼は首をボキボキと鳴らし、おもむろにその場にしゃがみ込んだ。地面に手を触れ、ニューロンを輝かせた。 32

2016-12-18 00:29:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ジツが開始された。完成には多少の時間を要する。高級料亭の庭でこんなことをやっていれば見咎められ、カロウシタイを呼ばれるなり、面倒に巻き込まれてしまう。その点、全員死体になっていれば人目を気にする必要もない。この開放感はジツのコンセントレーションにもってこいだ。 33

2016-12-18 00:31:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ンンー……来たか」やがて彼は立ち上がった。庭には奇妙なビジョンが焼きついている。人型の輪郭をもった複数の砂嵐ノイズだ。それら一つ一つがストップモーションめいている。カラテのストップモーションだ。「おお、ロングゲイト=サン。ここか」バンブー林付近の姿に眉をひそめる。「サラバ」34

2016-12-18 00:34:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼は庭を歩き回った。ロングゲイトと戦闘する者の存在痕跡を、彼は吟味した。「アラバマオトシ……フーン……破られて……残念な事だ」彼は一際強く精神集中した。じわりじわりと輪郭が定まり、その者の名が浮かび上がった。「ニンジャスレイヤー……というのか」彼は呟いた。「成る程な」 35

2016-12-18 00:38:53