リプ貰った要素で百合話を即興で作る

即興創作が得意なのでツイッターでちょっと遊びました。みんなもやってみよう! 楽しいで!
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洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

「仕方ない、ですよね」 殺風景な病室は牢獄のよう。それに、綺音と会う者は圧倒的な現実を突きつけられるのだ。 「こんな姿ですもの」 管、白、無菌。 綺音は清められていた。徹底的に、執念を感じるほどに潔癖。少しの病原菌でも、綺音には命取りとなる。 「仕方ない……しかた、な……」

2017-05-08 02:32:01
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

透明の雫が落ちる。病室と同じ、誰も綺音を救ってはくれない色。 「三月さん……」 思い出すのは少女の姿。風のように駆ける自由な少女は、綺音の希望で、最後まで会いに来てくれた人だった。 「もう、そんな時期ですのね」 三月からの手紙によれば、陸上の大会の時期らしい。

2017-05-08 02:34:40
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

窓もない部屋では季節を感じることもできないが、綺音は確かに緑に色付く木の葉を夢想した。 「この春に……」 この春に。 綺音は消える。 誰かの枷になりたくないから。 美しい花に生まれたいから。 何より彼女を枯らしたくはないから。 「どうして」 答える風は、吹くことはない。

2017-05-08 02:37:24
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

「龍田ぁ!」 「うふっ、天龍ちゃんったら♪」 二人のやり取りを見て鹿島はため息をついた。またこの人たちはいちゃついている。 「やっぱ龍田の日焼け止めは最高だぜ!」 「天龍ちゃんの肌は私が守るわぁ~」 「龍田も塗っておけよ?」 #リプ貰った要素で百合話を即興で作る

2017-05-08 02:42:07
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

「えっ……やぁ、てっ、天龍ちゃぁ~ん」 「龍田の肌って相変わらず綺麗だなぁ~」 「もぅ~♥」 あぁ。 もう、ほんと、やめて欲しい。 鹿島は駆逐艦娘たちに目をやる。天龍と龍田の肌を介したコミュニケーションに8人の駆逐艦娘全員が赤面していた。 「せめてっ! 部屋でやって下さいっ!」

2017-05-08 02:44:43
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

教育に悪すぎる! 鹿島は怒り、嫉妬する。 ――私だって、いつか。 その相手は、鎮守府にいるのだ。

2017-05-08 02:45:55
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

どれほど経ったのだろう。 懐かしい匂い、懐かしい音、懐かしい……あの時、分断されたのは国土だけではなかった。あらゆる共同体が引き裂かれたのだ。 ガルエン王国の壁は今日、崩れた。 すべての分断は解消されたのだ。 #リプ貰った要素で百合話を即興で作る

2017-05-08 02:48:01
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

アーシャルは崩れ落ちた壁の向こう、褐色の肌を持つ美少女を見つける。 マルタもまた、壁に空いた穴の向こうに輝く白き肌の美少女を見つけた。 家柄、身分、国籍、種族、慣習……あらゆる差異を乗り越え、性別に至っては逆に同じであるという弊害さえ踏み倒し、二人は壁に走った。

2017-05-08 02:50:25
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

言葉を紡ぐのは難しかった。 だけど、肌を重ねて抱き合えばすべて以上にすべてが分かった。 苦労をしたのだろう。重い荷物を運んできたのだろう。長い道を歩いてきたのだろう。 二人の命はこの時のためにあった。 分かたれた国の統合。それは、多くの魂の再会の時であったのだ……。

2017-05-08 02:52:26
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

燃えているのは私自身。 あの夕暮の河原で、セリカは咥えた煙草を投げ捨てた。 寄り添えると思っていた。力になれると思っていた。その孤独を、私だったら埋められると、根拠もなく信じていた。 「マユミには無理だよ」 セリカ、どうして。 #リプ貰った要素で百合話を即興で作る

2017-05-08 02:57:43
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

「マユミは弱いもの。私の苦しみは分からないよ」 どうして、そんな悲しそうな顔をするの? 「だから、もう会わない」 セリカはくるりと背を向けて、夕陽の沈む方へと去っていく。その輪郭が灼熱に融けて、黒い影となって小さく―― 「……バカ」 「えっ?」 「セリカの、バカッ、バカッ!!」

2017-05-08 03:00:09
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

私は叫んでいた。夕陽に向かって叫ぶなんて、まるで青春ではないか。 「セリカのバカァ! 私を勝手に決めつけて! 自分だって弱いくせに! バカッ、バカバカバカッ!!!」 「お、お前っ」 「私はピアスじゃなかったの!? そう言ったじゃん、セリカを埋めるピアスだって……」

2017-05-08 03:02:23
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

穴が開いている。 私たちの心はスポンジみたいに柔らかで、レンコンみたいに穴だらけ。 だけどね、ピアスの穴はそれとは違う。 開けようという意志で開けられて、塞ぐ何かが閉じるのを防ぐ。誰かに開けられて、時間が塞いだ穴なんて、そんなの、ただの忘れられない傷痕じゃないか。

2017-05-08 03:04:10
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

「私はセリカが好き! セリカの穴を塞ぐって言った!」 「だけど、それは!」 所詮私はピアスでしかない。セリカの穴を満たすだけ、無くすことなんてできやしない。 それでも。 「着けてることを忘れるくらい、いつも一緒にいたでしょう?」 穴を開けた奴よりも。 穴を満たす私の方が。

2017-05-08 03:07:43
洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

その苦しみを知っている。 「また、私は……」 セリカは私がいる限り、その穴を忘れることはできない。それは時間が与える赦しの否定。罪を無限に背負うということ。 「……お前を、そばに」 「うん……ずっといるよ」 消えない罪の証として。私はセリカの穴に挿す。愛されない、愛となって、私は

2017-05-08 03:12:09