メディアが報道しない本当のシリア・中東シリア・化学兵器の真相⑸〜回避された破局・米国とアラブ諸国との関係変化

東グータのサリン事件後にわき起こった怒涛のような打倒アサドの声を受けて、武力制裁実行が数日後にまで迫っていた。シリアが第二のイラクになることが火を見るより明らかであるように思えた時、不可能の壁に風穴を開け、絶対不可避の戦争を回避した男がいた。彼の名はセルゲイ・ヴィクトロヴィチ・ラヴロフ。一発の弾丸も発射することなく、ただ言葉だけで不可能を解決した1人のロシア人外交官に光を当てつつ、シリア化学兵器問題の顛末を辿ります。
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The Sun Snorer Press @taiyonoibiki

@taiyonoibiki ㉓2013年9月9日、事態は大きな転機を迎えた。ケリー米国務長官が発した軽い一言にラヴロフ・ロシア外相が食らいついて、不可能と見えた重い扉をこじ開けたのであった。

2017-01-14 00:41:27
The Sun Snorer Press @taiyonoibiki

@taiyonoibiki ㉔その日の朝、米国のケリー長官が記者会見で一種の即興として「シリアのアサド大統領が化学兵器を全量、しかも直ちに廃棄することに同意するならば、軍事攻撃を避けられる可能性はある。

2017-01-14 00:41:57
The Sun Snorer Press @taiyonoibiki

@taiyonoibiki ㉕しかし、彼がそれをするとは思えない」と語ると、この発言について報告を受けたラヴロフ外相は即座に反応した。

2017-01-14 00:42:32
The Sun Snorer Press @taiyonoibiki

@taiyonoibiki ㉖「彼の発言には妥協を可能にさせる芽がある。シリア政府が同意するかどうかはわからないが、シリア政府指導部に化学兵器保管場所を国連管理下に置くだけでなく、廃棄までも国際管理の対象にすることについて呼びかけてみよう。

2017-01-14 00:43:06
The Sun Snorer Press @taiyonoibiki

@taiyonoibiki ㉗ムアレム外相が今モスクワにいるので、たった今この旨を伝えたところだ。早朝に返事があるのを期待している。」

2017-01-14 00:43:35
The Sun Snorer Press @taiyonoibiki

@taiyonoibiki ㉘ラヴロフは、アメリカの政治家が国民に向けて時折見せるいくぶん偽善的平和主義的ポーズがケリーによって満を待して演じられるその一瞬を決して見逃さなかったのだ。シリア政府は翌日には公式にロシア提案受け入れを表明した。電光石火の対応だった。

2017-01-14 00:44:52
The Sun Snorer Press @taiyonoibiki

@taiyonoibiki ㉙米国は予想さえしなかった事態の急展開に驚いて、国務省報道官は、ケリー長官の発言はアサド大統領の頑迷な姿勢に対して反語的に述べただけのことに過ぎないと火消しに努めたが、すでに遅かった。すでに歯車は回転し始めていた。

2017-01-14 00:45:28
The Sun Snorer Press @taiyonoibiki

@taiyonoibiki ㉚ 2013年9月9日、フランスとドイツの両政府はロシア提案を歓迎した。米国のオバマ大統領も慎重ながら歓迎の姿勢を明らかにする以外になかった。

2017-01-14 00:46:09
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@taiyonoibiki ㉛一方、一貫して反政府武装組織を支援し続けてきたサウジアラビア、カタールなどの湾岸諸国、トルコ政府は事態の急展開に驚きを隠せなかった。

2017-01-14 00:46:46
The Sun Snorer Press @taiyonoibiki

@taiyonoibiki ㉜同様に、シリア国民連合もロシア外相の動きは政治的策略だとして避難し、自由シリア軍のサリム・イドリス軍事評議会議長はシリア・ロシア両政府を嘘つきだと叫んだ。現場の武装グループ司令官らは米国に裏切られたと反応する。

2017-01-14 00:47:20
The Sun Snorer Press @taiyonoibiki

@taiyonoibiki ㉝14日には米露両国は早くも「シリアの化学兵器の廃棄問題に関する枠組み」について同意した。

2017-01-14 00:47:51
The Sun Snorer Press @taiyonoibiki

@taiyonoibiki ㉞ すべての化学兵器を2014年6月30日までに廃棄するというこの「枠組み」の内容は実はシリア政府にとって大変過酷な要求である。

2017-01-14 00:48:25
The Sun Snorer Press @taiyonoibiki

@taiyonoibiki ㉟米露両国は化学兵器禁止条約の作成に主体的に関与した元締約国でありながら、同条約が認める条約発効後最長15年という廃棄期限までに廃棄を終了させられず、特別に期限延長を認めてもらっているという経緯を持っている。

2017-01-14 00:48:51
The Sun Snorer Press @taiyonoibiki

@taiyonoibiki ㊱それほど化学兵器廃棄作業は難しいし、費用も人材も必要だと言われる。その困難な作業を戦争状態にあるシリアに対して9ヶ月で完了せよというのだ。

2017-01-14 00:49:27
The Sun Snorer Press @taiyonoibiki

@taiyonoibiki ㊲その時点でも西側諸国では、このような条件を受け入れるシリア政府はしょせん廃棄作業を引き延ばして時間稼ぎをする考えに違いないとまことしやかに議論する識者が多かった。

2017-01-14 00:49:59
The Sun Snorer Press @taiyonoibiki

@taiyonoibiki ㊳だが、このシリア・米露合意の結果、米国政府はシリアに対する限定懲罰軍事行動の断念を決定せざると得なくなった。

2017-01-14 00:50:49
The Sun Snorer Press @taiyonoibiki

@taiyonoibiki ㊴それまでアサド大統領はインタビューで、シリア政府は米国などからの軍事介入には備えができており恐れるには足りないと強がりを示していたが、本音ではやはり相当の犠牲を覚悟していたはずである。

2017-01-14 00:51:18
The Sun Snorer Press @taiyonoibiki

@taiyonoibiki ㊵それまで戦争を受け入れながらも政権の足元で比較的安定した生活をしてきたダマスカスの市民の間にも、米国の軍事介入が間近になったとニュースが伝えられ始めると、「シリアは第二のイラクになるのか」というそれまでにない動揺が走っていた。

2017-01-14 00:51:48
The Sun Snorer Press @taiyonoibiki

@taiyonoibiki ㊶レバノンなどの外国に逃れようと用意を始める動きさえ起きてはじめていたので、その軍事介入中止の断定決定はシリア政権と国民に大きな安堵をもたらしたわけである。

2017-01-14 00:52:15
The Sun Snorer Press @taiyonoibiki

@taiyonoibiki ㊷何よりも政治的バランスシートが一夜にして決定的に変わっていたのだった。

2017-01-14 00:52:44
The Sun Snorer Press @taiyonoibiki

@taiyonoibiki ㊸つまり、アサド政権が化学兵器禁止条約の積極的加入を求めたことにより、それまでアサド政権は公式な交渉の相手方ではもはやないと公言してきたオバマ政権は、シリア政府の正当性を承認する以外に方法はなかった。

2017-01-14 00:53:07
The Sun Snorer Press @taiyonoibiki

@taiyonoibiki ㊹シリア政府にとって、ラヴロフ外相が提案した国連管理下における毒ガス全量廃棄案はまさに渡りに船だった。

2017-01-14 00:53:49
The Sun Snorer Press @taiyonoibiki

@taiyonoibiki ㊺アサド政権がその存亡をかけて戦争をしているときに、化学兵器の保有は実はアサド政権の重荷になっていた。まかり間違っても化学兵器を反政府武装グループの手に渡してはならない。

2017-01-14 00:54:22
The Sun Snorer Press @taiyonoibiki

@taiyonoibiki ㊻そのためには、国内各所にある化学兵器とその関連施設の安全確保のために政府は相当規模の軍事力を割かなければならない。それはアサド政権にとって国内での戦争を遂行する上で相当大きな負担要因になっていた。

2017-01-14 00:54:48
The Sun Snorer Press @taiyonoibiki

@taiyonoibiki ㊼ところが、国際機関の積極的な介入で迅速に廃棄ができるとなれば、足かせがなくなる。それまで戦闘に投入できなかった軍事力を自由に使うことができ、政権にとっては大きな利益となる。

2017-01-14 00:55:13