- tokunagayuya
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「魔王の手先を倒し、街を救ったのに、どうして浮かない顔をしているのです」 「なんか。やだった」 「なにが?」 「あの、たてがみは、おねえさんのかみみたいだった、あの、めは、おねえさんの、めみたいだった」 「ふふん。私はもっとやせてます」 「うん」 「…悪いやつだったんですよ」
2017-01-30 22:34:47「今度の敵は蜘蛛のできそこないのような姿。なんと醜い!」 「うーん」 「また、うーん、ですか」 「なんか。おねえさんの、指みたいで、きれいだ思う」 「私の指はあんなに出来悪くありません!ほら、ほら!」 「うん。おねえさんの指のほうがきれい」 「でしょ?あ、そうじゃなくて」
2017-01-30 22:39:17溜息をつく乙女。うっとうしそうな騎士。 「なんだ」 「あなたの教育方針に苦言を呈しに来ました」 「あいつはよくできたやつだ。まだ小さすぎるが」 「時間がないんです。もうすぐ茨の城は次の花粉をはなつんですよ。それよりもです」 「なんだ」 「あの子が敵を倒すたびに悲しそうなんです」
2017-01-30 22:41:12「…倒せてるなら問題ないだろう。大人だってそうできるもんじゃない」 「問題ありますよ。今はいいですが、いつかつらくて手が止まってしまうかもしれないでしょう。ちゃんと茨の化物の邪悪さを言い聞かせたんでしょうね」 「まあさわりはな」 「よもや甘っちょろい平和の教えなぞ…」 「あのな」
2017-01-30 22:43:48「あいつが敵を倒すたびに落ちこむ理由ははっきりしてるだろうが」 「ですからあなたの教育方針が」 「お前だ。お前だよ化物。あいつは、お前とほかの化物どものあいだにつながりがあるのを、どこか似てるのを、察してるんだよ。だからつらいんだろ」
2017-01-30 22:45:46「なんのことだ?余は…私はぜーんぜん」 「ばればれなんだよ。人間はな、特にあいつみたいな子は、自分が好きな相手のことはなんでも気になるし、ほんのささいな心の動きさえ見逃さないもんなんだよ」 「好きとか、何言ってるのか、私は別にただその運命の」 「運命なんぞあいつにはどうでもいい」
2017-01-30 22:48:02「あいつが戦ってる理由も、皆のためとか、俺が教えたからじゃない」 「へえ」 「お前のためだ。お前がそうしてほしいと願ってるからだ」 「ふーん」 「…情知らずの化物めが」 「ふふーん」 「帰れ」 「言われなくても」
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