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アイドルアニメが流行するのは、視聴者が筋書きによらないゲーム性由来の不確定要素を求めるようになったため

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生命情報保存研究所 @rodan670

アニメ史における00年代が、「涼宮ハルヒの憂鬱」に代表されるような、深夜型アニメの多様化、拡散期と定義づけられているのに対し、10年代は同様の潮流を保ちつつも、その中で特に「アイドル系」あるいは「日常系」の作品が人気の上で抜け出してきた時期であると考えられる。

2017-02-19 09:57:46
生命情報保存研究所 @rodan670

反面、練りこまれた設定や、重厚なストーリーをベースとしたSF型の作品、特にその代表格にあるようなロボットアニメの類は縮小傾向にある。これはかつて放映されたこの手のアニメに関する記憶が視聴者の心の中で層を成し、一種の満腹感を生じさせているためだと考えられる。

2017-02-19 10:14:50
生命情報保存研究所 @rodan670

SF型アニメは日常と乖離したイレギュラー、特に危機的状況を楽しむための装置であるので、あまりこれに触れすぎるとむしろイレギュラーが日常と化し、食虫を誘発することとなる。

2017-02-19 10:16:48
生命情報保存研究所 @rodan670

特に、00年代以降は1クールで終了するアニメが一般的となってきたため、このように「濃い」作品と延々と向き合い、かつ三ヶ月ごとに心中の世界観の切り替えを迫られ続けていたのでは、視る側の脳内スペースがもたない。必然的に視聴者の嗜好は「濃い」作品から「薄い」作品へとシフトしていく。

2017-02-19 10:41:30
生命情報保存研究所 @rodan670

求められるのは、前提知識も予習も理解のための努力も必要とせず、また3ヶ月が経過した後に何のしこりもなくその世界観から脱却して、別な作品、あるいは自分自身の現実に向かっていくことのできる「日常系」の作品ということになる。

2017-02-20 16:19:55
生命情報保存研究所 @rodan670

とはいえあまりにも「薄い」内容ばかりであると飽きがくる。人が新しい作品にのめりこむためには何らかのイレギュラー的要素はやはり必要である。だがそれをストーリーや設定に求めた場合、過去数年、数十年間に堆積した作品群とその記憶が立ちはだかる。

2017-02-20 16:28:15
生命情報保存研究所 @rodan670

こうなると、視聴者はもう設定やストーリーによらないイレギュラーを作品に求めていくしかなくなる。ここでクローズアップされるのは、スポーツに代表されるような、ゲーム性による不確定要素である。野球にせよサッカーにせよ、そのルールにより試合中何を行うかは最初から確定している。

2017-02-25 17:12:31
生命情報保存研究所 @rodan670

また対戦する二つのチームの実力差によっては、見るまでもなくどちらが勝つか大体の予想を立てることもできる。しかし実際のところどちらが勝つか、またどのような展開により、誰の活躍と誰のミスとで勝敗が決するのかは、その一部始終を追わなくては決して分からない。

2017-02-25 17:15:21
生命情報保存研究所 @rodan670

ゆえに、チームのファンたちは、設定(競技ルール)やストーリー(比較的強いものは高い順位に、弱いものは低い順位に収束)を奇抜なものにいじくられることがなかろうと、その中で無数に生じるゲーム性由来のイレギュラーに熱狂することができ、毎試合欠かさず観戦しようとし続ける。

2017-02-25 17:29:26
生命情報保存研究所 @rodan670

このゲーム性をアニメの土壌に持ち込んだのが近年流行しているアイドルアニメである。ゲームとは異なる二つ以上の意思があるルールにのっとって競い合うことで生じる現象であるが、アニメのキャラクター自身は意思を持っていないため、例えば彼らに野球やサッカーをさせてもそれはゲームにはなりえない

2017-02-25 17:58:47
生命情報保存研究所 @rodan670

よってアニメにおけるゲーム性は、視聴者自身を一種のプレイヤーとして巻き込むことで成立する。アイドルアニメの場合、まず作り手側は複数人登場するキャラクターのうち誰のファンになるのかということを強要してくる。

2017-02-25 18:21:21
生命情報保存研究所 @rodan670

視聴者側がこれに応じる義務はない。ただアイドルアニメの場合は内輪での人気投票などを頻繁に行い、どうしても贔屓のキャラクターを有することと、そのキャラクターのために代理で戦う(投票する)ほうが楽しめ、あるいはそのような行動に喜びを感じやすい層が集まるような構造を用意している。

2017-02-25 18:29:58
生命情報保存研究所 @rodan670

その人気投票の結果たる順位こそが、ゲーム性の生んだイレギュラーである。ただそこに勝ち負けは存在しない。自分が贔屓するキャラが高順位に食い込んだファンは、自分の眼、嗜好は正しいのだと満足するだろうし、逆に低順位で終わったファンはファンでマイノリティたる自身に酔うことができる。

2017-02-25 18:44:38
生命情報保存研究所 @rodan670

そうしているうちに、どのキャラクターを贔屓しているかということが、視聴者にとっては一種のファッションと化してくる。あるキャラクターのファンを名乗ることが自己表現のツールと化し、同じ作品にのめりこんでいる赤の他人と簡単にコミュニケーションをはかり、連帯感を得ることができるようになる

2017-02-25 19:13:23
生命情報保存研究所 @rodan670

キャラクターの人気投票などは、映像としてのアニメを離れた場所で行われるイベントであるが、この手のイベントや、それに付随するコミュニケーションに長期間晒され、特定のキャラクターのファンである、あるいはあらねばならないという自己認識が強まってくると、

2017-02-25 19:23:26
生命情報保存研究所 @rodan670

今度は映像としてのアニメにおけるあらゆる展開がイレギュラーと化してくる。特定のキャラクターに深く傾倒し、あるいは自己表現の手段としている視聴者にとっては、もはやそのキャラは自身の一部となっているので、

2017-02-25 19:33:58
生命情報保存研究所 @rodan670

それが画面に登場し、どの程度の尺を与えられるか、何をしゃべるか、その一挙一動すべてが不確定な喜びであり、その作品を鑑賞する上での最大のモチベーションとなる。込み入った設定もストーリーもそこには必要がない。

2017-02-25 20:25:05
生命情報保存研究所 @rodan670

近年アイドルアニメが流行しているのは、過去の名作の設定やストーリーに満ち足りてしまった、眼の肥えた視聴者たちが、それでなお好奇心をそそられる未確定要素を、筋書きによらない、ゲーム性の中で生じるイレギュラーに求めていった結果であると考えられる。

2017-02-26 09:06:32