人気アニメ「けものフレンズ」が、最終話を直前に控えた11話にて、予想外にシリアスな展開を見せたことで波紋が生じている。もともとこのアニメは、様々な野生動物をモチーフとしたかわいらしいキャラクター達が、
2017-03-25 15:31:32「すごーい」「たのしー」等、理解に複雑な思考を要しない、易しい台詞を次々と繰り出す、さながら児童アニメ的な雰囲気を有していたことで、大人であっても童心に返って楽しむことができるという理由から話題となっていった作品であった。
2017-03-25 15:35:18しかし回を重ねるごとに、このアニメは「児童アニメ的」という言葉では決して片付け切れない別な要素(作品世界中では人類がすでに滅亡しているのではということを強く臭わせる演出や、主人公及びセルリアンと呼称される「敵」の正体、出自についての推理等)をめぐり、
2017-03-25 15:46:56SF、ミステリー、はてはホラー的な側面を隠すことなく全面的に押し出してくるようになった。そして最新の11話においては、「敵」であるセルリアンとの闘いの過程で、二人いる主人公格の一人「サーバルちゃん」は重大なダメージを受け、
2017-03-25 15:50:30主人公格のもう一人である「かばんちゃん」は生死不明の状況に追い込まれる。こうなってしまうとこれはもはや「児童アニメ的」作品ではない。アニメ放映開始当初、一見平和な作品世界のところどころに散見された不穏な要素(老朽化し、打ち捨てられた人工構造物、EDの閉鎖された遊園地等)を敏感に
2017-03-25 15:57:28察知し、この作品の裏の顔について推理を始めた「けものフレンズ考察班」なる人々は異端と見られたが、現状このアニメが考察抜きに視聴できない作品であるということは明らかである。ならば「けものフレンズ」は考察型のアニメであったと受け入れるべきであるが、
2017-03-25 16:05:13「けものフレンズ」=童心に返って楽しめる児童アニメ的作品と理解し、期待し、視聴を続けてきた多くのファンの立場からすると、これほどのちゃぶ台返しもない。その意味では、製作者側の意図と、視聴者側の要望の間に、少なからぬギャップがあったのかもしれない、と思われたが
2017-03-25 16:14:59「けものフレンズ」製作陣の中枢にいる、ヤオヨロズ株式会社取締役プロデューサー・福原慶匡へ対して行われたインタビューでは、同氏自身が、「けものフレンズ」は大人であるにも関わらず「アイカツ」等児童アニメにはまってしまう、
2017-03-25 16:28:03俗に言う「アイカツおじさん」のような人々の存在を念頭において作ったという、非常に興味深い言葉を残している。即ち、製作側にも「児童アニメ風考察型ミステリー作品」ではなく「児童アニメ的作品」を作り上げる意図はあった。
2017-03-25 16:31:54にもかかわらずなぜ「けものフレンズ」は、最終的に「アイカツおじさん」的ファンが拒絶反応を示すレベルにまで、考察、シリアス面でのカラーを濃くしていってしまったのか?なぜ夕方放映されるような純然たる児童アニメ的作品にとどまり切らなかったのか?
2017-03-25 16:42:47一つ目は、「けものフレンズ」のキャラクター達が、擬人化を通り越し、「美少女化」された元動物達であるということ。なぜ「美少女」でなければならないのか?種々な動物が直立二足歩行し、言葉を使い、表情もあるものとする「ソフトな擬人化」ではなく、
2017-03-25 16:47:57完全な人型、人間そのもの、その割には男性の形態や中年、老人の形態は存在せず、なぜだかそろいもそろって「美少女」の形態に限定されていることがあげられる。しかし、この現象に対して「なぜ」と疑義を呈することはきわめて無意味である。
2017-03-25 16:52:30様々な存在(対象が生物であれ無機物であれ)を美少女の姿に変換し、彼女たちが見せるモチーフ由来の個性を楽しむという試みは、深夜アニメ界では半ば当然のように行われ続けてきた定石であり、もはや一種のジャンルである。このタイプの作品において、事物の美少女化は前提であるのだから
2017-03-25 16:58:10視聴者が「なぜ美少女なのか?」と問うことは野暮であり、また実際に問おうとする視聴者も数少ない。問題は、製作者側が、「これはいわゆる事物の美少女化アニメなのだから、キャラクター達が美少女化している事には何の理由も背景も説明の義務もなく、それでもファンは付いて来るはず」と割り切らず
2017-03-25 17:06:27あえて美少女化のからくりを解説しようとした瞬間に生じてくる。「けものフレンズ」の場合、地球上に存在する様々な哺乳類、鳥類、爬虫類等が、なぜだかそろって人型の、そして美少女に変化しているわけだから、製作者側がこの前提をあえて掘り下げようとすると作品は自動的にSFになってしまう。
2017-03-25 17:09:41これに対し、夕方放映されるような、純然たる児童アニメの場合はどうなるか?「いろいろな動物さんたちが種の垣根なく、またその動物としての個性を発揮しつつかかわりを持っていく」アニメを作ろうとした場合、それが真に児童アニメ(幼児~小学生高学年あたりまでを対象)ならば、
2017-03-25 17:18:09恐らくは美少女化は必要ない。それどころか「人間型」にする必要すらないだろう。むしろ「動物」そのものに好奇心を有しているであろう児童のためには、動物たちが直立二足歩行をし、言葉をしゃべり、表情を有する程度の「ソフトな擬人化」がベターであると思われる。
2017-03-25 17:21:03このタイプの作品の具体例としては「しましまとらのしまじろう」や「ほのぼの」などがあげられる。では逆に、大人になったものの児童アニメで童心に返りたいと望むファン達は、深夜帯に「しましまとらのしまじろう」そのものが放映されていた場合「けものフレンズ」と同じレベルでのめりこんだだろうか
2017-03-25 17:28:48大人になったものの児童アニメで童心に返りたいと望むファン達が、「しましまとらのとらじろう」的作品を好み、朝方ないし夕方視聴する可能性はなんら否定できる物ではない。しかしそのような視聴者であっても「しましまとらのとらじろう」的作品を深夜アニメとして受け入れるかというと話は別である。
2017-03-25 17:36:47ある作品が深夜アニメのフィールドで受け入れられるためには当然深夜アニメならではの様式、ギミックを身に着けている必要がある。ここで「動物を擬人化させたアニメを作ろう」と思い立った場合、
2017-03-25 17:42:29「しましまとらのとらじろう」においては「なぜとらじろう達は動物であるにもかかわらず、直立二足歩行をして、人間の言葉を話しているの?」と問いかけることは、今度こそ野暮を通り越して意地悪かジョークかのどちらかでしかなく、
2017-03-25 17:51:37これに対して製作者が「昔実験施設で遺伝子操作された動物が云々」等と世界観を崩壊させるSF的回答を用意してくることも考えられない。「これは児童アニメであり、彼らはもともとそういう存在」ということで双方が完全に納得している。
2017-03-25 17:57:54しかし「しましまとらのとらじろう」のようにソフトな擬人化で済ませる児童アニメと異なり、動物を「シャープな擬人化」で美少女に変えてしまう深夜アニメであれば、その不自然さも相まって特に製作者側には、この現象を掘り下げる余地が出てくる。
2017-03-25 18:04:29