遠い飢餓

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トト@TYA中邪 @glnewto

【パ/内政/調査点2】トト@中立にパンドラの情報を提供しようとした貴族が、接触する前日に突然の怪死を遂げた。これが奴らのやり口なのだ……! HP+5。 #GC茶 appli-maker.jp/analytic_apps/…

2017-03-04 00:31:35
トト@TYA中邪 @glnewto

(3/4診断分) 『餐』 身支度を整え、一杯のお茶を淹れた。 薄く雲が渡り、まだ少し冷たい朝。 漠然と嫌な予感がした。 暗い色を避けようと、白と淡いセピア色を基調に服を選んだ。 それでも妙に落ち着かないのは、そもそもの誘い口からか。 とある貴族の使いが持ってきた手紙には、

2017-03-04 02:02:55
トト@TYA中邪 @glnewto

あまり気乗りしない内容が綴られていた。 領主の動向に思うところがある。直接接触した事のある者から話を聞きたい。 概ねそんなところだった。 同じように、領主と話した事のある何人かから既に話を聞いているらしい。 ……長生きしないなと、他人事ながら思う。

2017-03-04 02:03:54
トト@TYA中邪 @glnewto

承知の上か、恐怖心からくる闇雲なのかはわからないが。 彼が手に入れている話に関心はある。 承諾した後とはいえ、この選択が正しかったのか、自信は持てずにいた。 訪ねた屋敷は俄かに雑然としていた。 使用人達が忙しなく働いている様に奇妙さを覚え、通されたのが食堂である事に顔を顰める。

2017-03-04 02:05:07
トト@TYA中邪 @glnewto

「……会食は、お断りした筈ですが」 執事に伝えると、彼も困惑した様子で「こちらへ通すようにと」と言う。 溜息交じりに承諾し、起こり得る最悪のケースを考えてみる。 (依頼主の首が皿に乗って出てくるとか?) 蛇でも鬼でも、有事あれば騒いで出て行こう。 そんな思いで席に着き ーー 。

2017-03-04 02:06:46
トト@TYA中邪 @glnewto

「すまない、お待たせしたね」 家主の席に座る領主殿に目を見開いた。 冷や汗が額を伝い、言葉を失う。 「支度を整えるのに思いの外、時間が掛かってしまった……改めて、さて、何から話そうか?」 「……本来のご主人は」 冗談が冗談でなくなるのだけは心から遠慮したい。 領主殿は苦笑した。

2017-03-04 02:07:41
トト@TYA中邪 @glnewto

「安心したまえ、妙な物を客人に出すつもりはないよ」 見透かされた台詞に胸中が冷える。 「丁重に弔わせて頂いた」 ……真偽を尋ねても意味がない。 続ける言葉を見失って沈黙する。 「……折角の時間だ。会話が途切れてしまうのは惜しい。何もないのなら、私から一つ尋ねるとしようかな」

2017-03-04 02:08:58
トト@TYA中邪 @glnewto

彼が指を鳴らす。 テーブルに運ばれたのは、綺麗に調理された肉料理 ーー に、見えるのだろう。人々には。 脈動が速まる。 「相変わらず、食事はできないようだね」 哀れむような声音で彼が言う。 フォークで肉を抑え、ナイフを入れる。 ぎっ、と組織を引き断つ音。

2017-03-04 02:09:38
トト@TYA中邪 @glnewto

小さな小さな音が耳にこびりつく。 たった十数秒だろうか。 自分の心臓にナイフが入っているような錯覚を覚え始める。 「これ以上踏み込むな、だとか、野暮を言うつもりはない。約束を違えるつもりはないからね。だが……一つだけ言わせてくれ」 肉の切れ端をフォークに刺して、ナイフを置いた。

2017-03-04 02:10:14
トト@TYA中邪 @glnewto

「自分の本質から、目を背け続けるものじゃない」 冷えて澄んだ怒りが、瞳の奥に伺えた。 切り離した肉片を口に含み、彼はそれを咀嚼し始めた。 その音は、もはや、耐えきれなかった。 音を立てて席を立つ。 支えに突いた掌で、テーブルクロスを握りしめ、三つ、深呼吸して、手を離す。

2017-03-04 02:10:55
トト@TYA中邪 @glnewto

テーブルから目を逸らし、何も言わず、何も構わず、食堂を、屋敷を出て行った。 空っぽの臓腑が、何かを逆流させる。 気持ち悪い。目眩さえする。 足早に家へ帰ろうと、人目も気にせず早足に街路を行く。 ぶつかる人へ謝りもせず。 その時 ーー 足元で、猫が鳴いた。 .

2017-03-04 02:11:50
トト@TYA中邪 @glnewto

捉えてしまった獣の形に、姿に、眼に、視界が明滅する。 頭に火花が散るような。 駆け出す。 口元を手で多い、真昼に。 家へ駆け込んで、シンクに、酸と鉄の味を吐き出した。 肩で息をする。 呆然と、半ば自動的に体を動かして、口を漱ぐ。

2017-03-04 02:12:47
トト@TYA中邪 @glnewto

ようやく洗われた口の中。 息を喉へ、腹へ通しながら、ずるりと体の力が抜けるまま、床へ倒れこんだ。 間を置いて、仰向けになる。 斜め上に窓の端。硝子の向こうで。 鮮やかに青く、空は澄んでいた。 .

2017-03-04 02:14:00