「午前0時の小説ラジオ」・「入試カンニング問題と大学」

「午前0時の小説ラジオ」・「入試カンニング問題と大学」
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高橋源一郎 @takagengen

「大学」22・…たとえば、印刷後、事実が判明し本をすべて回収するような事態でも、あるいは、あまりに巧妙で、警察の手を借りなければ事実がわからないといった事態でも、被害届けを出したりはしなかっただろう。それは、どのようなことをしたとししても、彼は若く、文学に関わりたかっただろうから

2011-03-07 01:47:06
高橋源一郎 @takagengen

「大学」23・だから、ぼくたち、事件に直面したものの気持ちを、言い表すなら、こうなるかもしれない。「彼は、ほんとうに小説家になりたかったのだ。間違ったやり方ではあったけれど」。

2011-03-07 01:48:30
高橋源一郎 @takagengen

「大学」24・ぼくが、決して同じ論理で扱えない文学の話をここでするのは、この一言がいいたかったからだ。「文学」は深く「教育」にも似ている。おそらく、そのせいもあって、ぼくは小説を書きながら、大学でも教えている。19歳の青年が逮捕されたというニュースを見ながら、ぼくは、こう思った。

2011-03-07 01:53:05
高橋源一郎 @takagengen

「大学」25・「彼は、ほんとうに大学に入りたかったのだ、間違ったやり方ではあったけれど」。この社会が「寛容」を失おうとしているのなら、「大学」は「寛容」を失ってはならない。それは、「大学」が存在している重要な理由の一つではなかったろうか。

2011-03-07 01:55:55
高橋源一郎 @takagengen

「大学」26・もし同じ事件が、ぼくの大学であったら、「たったひとりのの混乱した受験生の起こした事件である可能性がある以上、歯を食いしばっても、警察に被害届けを出してはならない」とぼくはいうだろう。それが受け入れられないなら、ぽくは大学を去らねばならない。

2011-03-07 01:59:27
高橋源一郎 @takagengen

「大学」27・ぼくは、ぼくの教え子たちに嘘をつきたくはないからだ。「寛容」を、それから、あらゆる可能性を考えること。それが「大学」だ。19歳の彼に、彼が入ろうとした大学はどんな風に見えただろうか。ぼくの考えたことは頓珍漢なのかもしれない。だが、ぼくは、こう思った。それだけだ。

2011-03-07 02:02:33
高橋源一郎 @takagengen

「大学」28・今晩は、ここまでです。ずっと、聞いてくれて、ありがとう。

2011-03-07 02:03:21