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高橋源一郎氏@takagengen の連続ツイート「大学」まとめ1-28

高橋源一郎氏の深夜ラヂヲ(連続ツイート)、今夜は「大学」について。先日のインターネットカンニング事件から考える「大学とは何か、どうあるべきか」。
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高橋源一郎 @takagengen
「午前0時の小説ラジオ」・「入試カンニング問題と大学」1・いわゆる「京大入試問題漏洩」事件が起きた時、最初にぼくが感じたのは、大学当局やマスコミに対する憤りに似たものだった。けれど、日がたつごとに、ぼくの思いは変わっていった。いったい、彼らを責める資格がぼくにはあるのだろうかと。
高橋源一郎 @takagengen
「大学」2・この問題ばかりではなく「正解」を出せない、出しにくい問題はたくさんある。だから、ぼくにできるののは、どんなように考えることもできるか、と試みることだけだ。誰もが、自分の「正解」を押しつけようとしているように見えることが、ぼくには少し恐ろしい。
高橋源一郎 @takagengen
「大学」3・「カンニング」問題を考えるために、ぼくは、まず「大学」とは何か、というところから考える他にはないだろうと感じる。そして、それこそが、この件に関して、「正解」のない最初の問題なのだ。「大学」とは何か、という時、大きくわけて、ふたつの考え方が存在している。
高橋源一郎 @takagengen
「大学」4・一つは、明治5年の「学制」発布に、「大学」の由来を置くものだ。この時、誕生したばかりの近代国家は、(帝国)大学を、というか東京大学を頂点とする教育制度の概観を提示した。大学は、国家有為の人材を輩出するための機関だった。その上部(大学)は官僚や学者を、下部は「製品」を。
高橋源一郎 @takagengen
「大学」5・いまもそれは変わっていない。今日のように大学が大衆化してしまえば、上位の大学が「人材」を、下位の大学は、とりかえの効く(工場製品)のような、規格品としての人間を生産することが目的だ。ここで、なにより重要なのは、ここでの「大学」は、完全に社会の一部であることだ。
高橋源一郎 @takagengen
「大学」6・「完全に全に社会の一部」であるということは、社会と同じ価値観を持ち、社会で流通している法を、そのまま受け入れる、ということだ。と書くと、当たり前のように思える。だが、当たり前ではないのだ。なぜなら、「大学」というものを、もっと別の存在であるとする考えがあるからだ。
高橋源一郎 @takagengen
「大学」7・もう一つの、「大学」に関する考え(「理念」と呼んでもいいだろう)、それは、中世ヨーロッパに発する考えだ。12世紀のボローニャ大学やパリ大学(さらに遡れば、おそらくはプラトンのアカデミア、さらにもっと)は、「学問」の自由を求めて、ついには独自の裁判権を有するに至った。
高橋源一郎 @takagengen
「大学」8・ここは大学の歴史を詳しく述べる場所ではないので、詳述しない。けれど、近代国家が自分のために作り出した「大学」と、国家や宗教権力と対抗して、それとは別の独立した存在であろうとした「大学」、この二つの、異なった「理念」が共に存在したまま今日に至ったことは理解してほしい。
高橋源一郎 @takagengen
「大学」9・たとえば、中世ヨーロッパの「大学」の「理念」を受け継ぐとは、本質的に「知」は社会常識と反することだと知ることだ。どの学問においても、先行する多数派的意見を否定することから、その学問の「革新」は行われた。「知」とは、だから、その社会の原理である多数決の否定なのだ。
高橋源一郎 @takagengen
「大学」10・一つ例をあげよう。今回、問題を漏洩させた若者は、「偽計業務妨害罪」で逮捕された。そのことをある法学者は「法律的にはなんの問題もない」と書いた。ぼくは、呆れるのを通り越して、悲しかった。「法律的にはなんの問題もない」は、この社会(国家)の論理をそっくり是認することだ。
高橋源一郎 @takagengen
「大学」11・彼がやったことは100%、「罪」なのだろう。だが、同じように、100%「罪」であるのに、大学においてはほとんば罰されなかった「罪」がある。「偽計業務妨害罪」によく似た、その罪は「威力業務妨害罪」だ。戦後日本の、というか、歴史上のすべての学生運動にそれは登場している。
高橋源一郎 @takagengen
「大学」12・長い、大学における、学生たちの政治活動において、もっとも頻繁に行われたのがストライキであり、無数の講義が「妨害」された。もちろん、あっさりと「威力業務妨害罪」だと被害届を出して、学生を逮捕させた教官もいる。しかし明白に罪であるのに、被害届を出さぬ教官も多かった。
高橋源一郎 @takagengen
「大学」13・その理由もまた単純ではない。ただ、彼らは、彼らの「教育」という「業務」が、工場で自動車を作る「業務」と同じだとは考えていなかった。「妨害」もまた、そこで目指されているものが、現状にはなにかだとするなら、「教育」の一部であったかもしれないからだ。それが「大学」なのだ。
高橋源一郎 @takagengen
「大学」14・確かに、教官と学生の関係、そこでの「講義」への「妨害」が、社会的に「罪」であったとしても、今回のようにまだ大学へも入っていない学生が「入試」で犯した過ちは、「罪」ではないのか。これが、社会的には「罪」であることは、もう述べた。だが、ぼくには、彼を責める気になれない。
高橋源一郎 @takagengen
「大学」15・それは、現行の「大学入試制度」が、あまりにもお粗末だからだ。「社会」そのものである「大学」、そして、ある種の理想である、「知」を追求する場所としての「大学」、その両方をジキルとハイドのように持つ現実の「大学」が行う入試は、「知」とはなんの関係もない。
高橋源一郎 @takagengen
「大学」16・機械のようになんでも覚え、この受験というゲームのルールを知っている者が勝つシステムであり、「人材」と「製品」を必要としている社会の役には立つかもしれないが、根本からものを考えるという、もう一つの「大学」の理念とはなんの関係もないシステムなのだ。
高橋源一郎 @takagengen
「大学」17・ぼくは、大学で、入試に深く関わっていて、それ故、内心忸怩たるものがある。カンニングをなくし、知的好奇心にあふれた学生を受け止める試験方法はある。解答するのに3時間はかかる論文を二つ書かせ、その上で、半日ぐらい面接をすればいい。だが、そんなことはできないし、やらない。
高橋源一郎 @takagengen
「大学」18・いまも「できるだけ勉強せず、とにかく要領よくやって、高い点だけとればいい」という入試を、ぼくたちは行いつづけている。「カンニングをするな」といいながら、実質的には「カンニングを誘発する」入試が続けられている。関係者として、ぼくも同罪だ。彼を追い込んだのはぼくたちだ。
高橋源一郎 @takagengen
「大学」19・去年、「文藝賞」という、小説の新人賞で、いったん、「受賞作」と決まった作品が、その後、根本的なアイデアをインターネットから無断でもってきたことが判明して、受賞を取り消される、ということがあった。その賞をバックアップしている出版社にとっては、大きな痛手だった。
高橋源一郎 @takagengen
「大学」20・その賞の作品は、その出版社にとってもっとも売れるコンテンツだったからだ。その作品がなければ、他の作品が受賞していただろう。だが、(多くの場合)、文学の賞で「繰り上が」」当選はない。出版社は(正確に計算することなど不可能だが)、もしかしたら億単位の損失を出した。
高橋源一郎 @takagengen
「大学」21・この賞をとることに、全知全能を賭けていた他の候補者も深く傷ついた。だが、最初にも言ったように、出版社も、ぼくたち選考委員も、なにより、その(「盗作」した)作者の情報が漏れ、彼がバッシングにあわぬことを第一に考えた。それは、状況がどのようなものであっても……
高橋源一郎 @takagengen
「大学」22・…たとえば、印刷後、事実が判明し本をすべて回収するような事態でも、あるいは、あまりに巧妙で、警察の手を借りなければ事実がわからないといった事態でも、被害届けを出したりはしなかっただろう。それは、どのようなことをしたとししても、彼は若く、文学に関わりたかっただろうから
高橋源一郎 @takagengen
「大学」23・だから、ぼくたち、事件に直面したものの気持ちを、言い表すなら、こうなるかもしれない。「彼は、ほんとうに小説家になりたかったのだ。間違ったやり方ではあったけれど」。
高橋源一郎 @takagengen
「大学」24・ぼくが、決して同じ論理で扱えない文学の話をここでするのは、この一言がいいたかったからだ。「文学」は深く「教育」にも似ている。おそらく、そのせいもあって、ぼくは小説を書きながら、大学でも教えている。19歳の青年が逮捕されたというニュースを見ながら、ぼくは、こう思った。
高橋源一郎 @takagengen
「大学」25・「彼は、ほんとうに大学に入りたかったのだ、間違ったやり方ではあったけれど」。この社会が「寛容」を失おうとしているのなら、「大学」は「寛容」を失ってはならない。それは、「大学」が存在している重要な理由の一つではなかったろうか。
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コメント

Noriko Osumi @sendaitribune 2011年3月7日
昨晩の高橋源一郎氏@takagengen の連続ツイートまとめ、抜けていた19と20以降を加えました。
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