【憑依:クリーチャー】[艦これ二次創作]『深海disこれくしょん』-3廻。

初めての二次創作という名の盛大な破壊劇。その、三話という名の断章。 何もかもが破綻していくさまを楽しめる方向け。
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九重七志@憑依特化 @yorishirosama

夜戦突入下では、周囲一帯が夜間の暗さを持った帳のようなものに包まれ、そこから誰も出ることも入ることも出来なくなる。 この事から、基本的には残存兵力に対する追撃戦に用いられることが多い。 また、最接近戦であることから雷装と砲火力を併用した乱戦になることが必然となる。

2017-03-20 02:36:28
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

さながら、新月の晩の様だ。 空に光は星ばかり、タービンと飛沫の音が和音する。 「不味いな、これは」 艦娘の砲は清めの砲だ。 怨念たる深海棲艦を鎮める為に、霊的措置を含む様々な特殊技術を用いて産み出された専用の弾丸を使っているのだ。 撃たれれば即ち――死か。あるいは、消滅か。

2017-03-20 02:49:54
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

近づいてくる、一隻分のタービン音。 「突出している――好都合、か?」 少なくとも、全艦から集中砲火を浴びせられては、ひとたまりもないだろう。 タービン音が近づいてくる。 それと同時に、ジジジという燃焼音。 ――強烈な閃光。 探照灯が、照射された。

2017-03-20 03:00:37
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

『よ~く、見えますねぇ!』 探照灯を掲げる、重巡級の艦娘が此方を見遣る。 『敵はまだ、こちらに気づいてないよ!』 短く束ねた桜色の髪を揺らしながら、幼さの残る声を張る。 『砲撃も雷撃も、青葉にお任せっ!』 胸元の黄色いスカーフが風に揺れる。 「――重巡、青葉……!!」

2017-03-20 03:17:10
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

「よりにもよって、アイツの"お気に入り"か――」 "彼"は知っている。 この青葉は、彼のよく知る提督が手塩にかけて育てた『主力』だと。 下世話な事は分からないが、"そういう関係"だと推測できる程の"お気に入り"だ。 気が引ける、と言う訳ではない。 これには、"勝てない"と。

2017-03-20 03:28:08
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

『さぁ、青葉も追撃しちゃうぞ!』 肩に座った熟練見張員が、怪しく眼を光らせる。 背負った艤装から、計十本の魚雷が射出される。 軌道は見えず、スクリュー音だけが迫る。 「万事休すか――!? ……いや!!」 ネ級・廻は、臍から伸びる砲の先端を、 "己の頭部"に、向けた。

2017-03-20 03:40:39
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

『!?』 爆発。 爆発、爆発、爆発。 水しぶきが上がり、そして晴れる。 撃沈した深海棲艦の残骸が散らばっている。 『今のは……?』 青葉は、今一瞬だけ見えた物を信じられずにいる。 "自らの砲で、自らを撃つ、ネ級" 『"自害する深海棲艦"なんて、見た事も聞いた事も――!』

2017-03-20 03:48:32
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

『前の黒いイ級もそうでしたし、今回のネ級も……』 『この海域はおかしいです』 『やっぱり、"何か異常なこと"が起こってるに違いありません!』 『そうと分かればスクープです! 帰ったら、今回の事を記事にまとめて……』 ー……帰…ー…帰ー…………ーー帰ーー……{_?

2017-03-20 04:01:13
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

『――おや? いま何か、聞こえたような……?』 『気のせい、ですかね? だって、ここにはもう、何も――』 青葉は、周囲を見渡す。 敵の残骸は既に沈みきり、波間に浮かぶのは自らの影のみだ。 『そういえば、もう"夜戦"は終わったはずなのに、どうしてまだこんなに暗いのかなぁ?』

2017-03-20 04:08:24
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

影が、闇が、収縮する。 『あれ、そういえば、無電が繋がりませんね』 影が笑みを形作る。闇が全方位から忍び寄る。 『おっかしいなー、皆さん無電封鎖でもしてるんですかね?』 影が足を掴み、闇がその躯を抱き締める。 『……え?』

2017-03-20 04:18:53
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

空は青く、日差しが注ぐ。 風は、南西より穏やかに吹き付ける。 『――っ!!?』 既に、"夜戦"の夜はなく。 青葉の周りは、黒い黒い霧状の"なにか"に包まれていた。

2017-03-20 04:20:15
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

『んっ……んんっ!! やだぁっ!』 "なにか"は、青葉を包み込み、なおも収縮を続ける。 『なんだよぉ! 離れてっ! いやっ……!』 否、縮んででいるのではない。 入り込もうとしているのだ、青葉の"中"へ。 『ひっ! んああああっ!! やだよお! 青葉は……青葉は――!』

2017-03-20 04:31:31
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

口から、鼻から、耳から、尻から、臍から、膣から、艤装の接続弁から。 "なにか"は青葉の"中"に入り込んでいく。 『助けてよお……だれか……しれいかん……ふるたか……――!』 『――っっっ!!!』 意識が、途切れる。 その時刻より、重巡青葉の指揮権は、"彼"に移譲された。

2017-03-20 04:40:49
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

[通信] 『――お――あお――……あおば! あーおーばー! 青葉ったら!』 『また一人で突出してー! もう! 本当に心配したんだよ!』 『大丈夫? ケガしてない? そう、それならいいけど……』 『とにかく、いまそっちに行くから! じっとしててよね!』 ――……――――

2017-03-20 04:50:51
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

頂点よりやや傾いた太陽。波は低く穏やか。 通信を切った青葉は、ふぅーと大きく息を吐く。 吹き付ける風は生温く、強い日差しは肌を容赦なく照らしつける。 懐かしい感覚。違っている筈だが、今までよりもずっと近い感覚。 ぬめりのない肌をさすりながら、青葉は誰に言うでもなく呟いた。

2017-03-20 05:02:06
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

『青葉、ちょ~っと深入りしすぎちゃいました♪』

2017-03-20 05:02:16
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

『……ないな』 どこかいつもよりも冷たい表情を見せた青葉は、 もう一度、息を大きく吐いた。

2017-03-20 05:03:48
九重七志@憑依特化 @yorishirosama

幾度目の事か。沈み行く彼は再び、"新たなる身体"を得た。 だがその身体の持ち主は、"友"の愛する一人の女性。 あまりにも気が引ける、心と身体の略奪愛。 その可能性から逃れる為、彼は新たな肉体を求める。 次回『開発』 ――死が"飛び移り"の条件。だが本当に、それだけなのか?

2017-03-22 01:39:24