【憑依:クリーチャー】[艦これ二次創作]『深海disこれくしょん』-3廻。
- yorishirosama
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"彼"は思案していた。 その禍々しくもやわらかな躯で、降り注ぐ朝の日差しを浴びながら。 「つまり、乗り換えたと言うことか」 「浸水し沈みゆくイ級という駆逐艦内から、接近していたネ級という重巡洋艦へと移乗した、と……」 「であるならば、今の俺は艦娘の『装備』の様なものか――」
2017-03-19 01:20:29艦娘の装備は、武装や偵察機、レーダーに増設装甲など多岐に渡るもので、それらの動作させるには所謂「妖精さん」の力が欠かせない。 殆どの装置は機密保持のためブラックボックス化しているが、分かりやすく姿を表してくれるものもいる。 [熟練艦載機整備員]、艦娘の艤装の中で作業を行う妖精だ。
2017-03-19 01:30:58艦娘の装備は、武装や偵察機、レーダーに増設装甲など多岐に渡るもので、それらの動作させるには所謂「妖精さん」の力が欠かせない。 殆どの装置は機密保持のためブラックボックス化しているが、分かりやすく姿を表してくれるものもいる。 [熟練艦載機整備員]、艦娘の艤装の中で作業を行う妖精だ。
2017-03-19 01:30:58彼女らは艦娘の艤装の中で、艦載機となりうる矢尻を強化修復したり、砲撃における照準合わせの手伝いなどを行っている。 艤装とは、艦娘の一部であり、更に言葉を連ねるならば、 彼女らは「艦娘の中で働いている」ということはつまり、彼女らが「艦に乗る乗員」である、という事となるのだ。
2017-03-19 01:37:03彼女らは艦娘の艤装の中で、艦載機となりうる矢尻を強化修復したり、砲撃における照準合わせの手伝いなどを行っている。 艤装とは、艦娘の一部であり、更に言葉を連ねるならば、 彼女らは「艦娘の中で働いている」ということはつまり、彼女らが「艦に乗る乗員」である、という事となるのだ。
2017-03-19 01:37:03それを踏まえて、現在の状況を表すならば。 深海棲艦とその装備となる艤装は、直接繋がっているもので、武装と艦の境界が曖昧であるということと。 艤装に怨霊となった"彼"が入り込んできたことにより、その機能が制圧されたということ。
2017-03-19 01:43:55それを踏まえて、現在の状況を表すならば。 深海棲艦とその装備となる艤装は、直接繋がっているもので、武装と艦の境界が曖昧であるということと。 艤装に怨霊となった"彼"が入り込んできたことにより、その機能が制圧されたということ。
2017-03-19 01:43:55そして、艤装と繋がっている本体の艦部分までもが、"彼"の意識に従い全身の動作を乗っ取る事が可能となった、という状態の様だ。 平たく言えば、"彼"は乗り込んだ深海棲艦の躯を、好き勝手に操る事が出来るし。 装備を譲渡するように、"彼"の霊体を他の艦に渡し、奪取する事も可能なのだ。
2017-03-19 01:49:46「――[怨霊艦艇司令部員]そんな所か。」 彼はそうして、一つ自分の名前を増やした。 最早何者でもなくなってしまった彼には、仮初めでも自らを示す名前が必要だった。 重巡 ネ級 装備 ┣ 8inch三連装砲 ┣ 8inch三連装砲 ┣ 深海棲艦偵察機 ┗ [怨霊艦艇司令部員]
2017-03-19 02:00:40「先へ進まなければ――」 「……この、妙な通信も気にかかる」 艤装部分に備え付けられている通信機らしきものからは、少し前からずっと奇妙な音が流れてきている。 "彼"はその内容を理解できている。 ネ級宛ての通信を、ネ級の躯で聞いているのだから。 躯は、既に、掌握されているのだ。
2017-03-19 02:09:58通信の内容はおおむねこうだ。 「艦隊集合」「敵艦隊は我が軍の中枢へ向かっている」「迎え撃て」 深海棲艦の中枢へと向かう。至れり尽くせりだ。 あのレ級を見つけられるかもしれない。 更に言えば。 彼には一つ、試したいことがあったのだ。
2017-03-19 02:13:57ネ級・廻は海面に対しやや前傾の姿勢を取ると、艤装の主機に火を入れ蒸かし始める。航行の準備だ。 「座標は……ああ、知っている地点、だ」 集合地点は旧鎮守府周辺海域、地点N。 かつて、ほんの暫く前までは、"彼"の鎮守府だった場所だ。 ――その全ては。この、朱い緋い紅い海の中に。
2017-03-20 00:30:44ネ級・廻は集合地点へと向かう。 その最中、数隻の軽空母ヌ級を率いる、空母ヲ級と遭遇した。 ヲ級は何やら楽しそうに、"彼"の回りをくるくると回っている。 そしてネ級へと視点を向けると、なにやら首をかしげるような仕草をする。 「この躯と、面識がある個体なのか……? 不味いな」
2017-03-20 00:46:39"彼"は思考をする――否、これは"彼"の思考ではない。 "彼"はいま、自身が乗り込んでいるネ級の思考機能を働かせているのだ。 入り込んだ深海棲艦の躯を操るという事は、その人格機能や思考能力までもを手中に納めている事を意味する。 つまり"彼"は、元のネ級の様に振る舞えるのだ。
2017-03-20 00:54:04回るのをやめたヲ級は、ネ級の顔面部をじっと見てキィキイ言っている。 すると、ネ級は脚部の装甲部分を大きく振り上げ、ヲ級の脚部を蹴り払う。 そしてキィキィ声の応酬が暫く続くと、ヲ級は微笑みのようなものを浮かべ、前を向いて上機嫌で艦載機を発艦させた。
2017-03-20 01:12:23今の応酬をを意訳するならば、こんなところだろうか。 『いったーい!』 『ふざけている場合か』 『だって、久しぶりじゃない?』 『くどい、作業にもどれ』 『ちぇー、つれないなー』 『……お前の偵察は頼りになる』 『嬉しいなぁ、ようし! 偵察機、発艦!』
2017-03-20 01:12:59「しかし、空母の索敵能力は魅力的だな」 「一度、試してみるか? いや……」 「最初に、この躯に移った時はどうだった?」 「ダメだ。リスクが大きい」 "彼"は、思案する。 ――暫くして、ヲ級が慌てた様子でキィキィ声を上げる。 その声は『敵艦隊の所在を確認』したことを示していた。
2017-03-20 01:25:01ヲ級が航空戦用の艦載機を上げる。 随伴するヌ級たちも同じ様に、ありったけの艦載機を射出した。 ヲ級が見つけた敵艦は六隻。 戦艦級が四隻に重巡級が二隻。 艦娘たちによる火力編成だ。 「……アイツのお気に入りだな。合同演習で、何度か見かけた」 「――全く、間の悪い奴だ。アイツめ」
2017-03-20 01:33:26航空隊同士が激しくぶつかり合う。 つまり、向こうに航空機を扱える艦娘がいるのだ。 「――扶桑に山城、長門に陸奥か」 "彼"は記憶を辿る。 「確か残りは、古鷹と――"青葉"」 青葉には、前に一度、イ級としての姿を見られている。 「何か、感づかれていなければいいんだが……」
2017-03-20 01:43:09ヲ級達の艦載機が帰還する。 戦艦娘の操る水上戦闘機に阻まれ、与えた傷は極僅かだ。 ヲ級は第二陣を繰り出す為に、頭部艤装をフル稼働させる。 そこへ―― 戦艦級の砲撃が直撃した。 一発、二発。 続け様に、もう二発。 一撃で水底に沈んだヲ級を追う様に、ヌ級達も次々と沈んでゆく。
2017-03-20 02:07:43日が落ちる。 ――闇が、夜が訪れる。 「こうして見ると、不気味なものだな……」 間もなく頂点に至ろうとしていた太陽が、何かに歪められたかのように海へと落ちる。 砲火から逃れようと、海域から離脱を試みるも、障壁のようなものに阻まれ、進めない。 「夜戦、か」
2017-03-20 02:17:14夜戦とは、鎮守府において必ずしも「夜間の戦闘」を意味しない。 それよりも、"ある現象"を示す通称としての用途が一般的である。 敵艦と交戦において、雷撃可能距離を過ぎ、戦闘より離脱する段階。 その時点で、最高司令官たる提督のみが発動可能なプロトコル。 それが、「夜戦突入」である。
2017-03-20 02:25:27