そこは塔であった。 自分はその最上階からぼんやりと外を眺めている。 空は晴天で、雲一つない青空が広がっていた。 塔の高さは6~8階ぐらいだろうか。低くはなく、眺めが非常に良い。 眺めが非常に良いと、書いたが、そこから見えるのものは余り多くはなかった。 #夢の話
2017-04-10 18:35:21広がる森、それを割るようにして一直線に延びている林道。遙か向こうに山々、そして空。 他に見えるものがあるとすれば、せいぜい林道を歩く人々の姿ぐらいであった。 #夢の話
2017-04-10 18:36:09林道は曲がったり枝分かれせず、塔からまっすぐに延びている。延びている先は見えないが、競技場があるはずだ。 人々は皆一様に塔から競技場へと向かっているのだ。 自分も行きたい。が、行くことができない理由があった。 #夢の話
2017-04-10 18:37:28部屋にはもちろん出入り口となる扉があるのだが、その前に一人の女性が立ちふさがっているのだ。 そこを通してくれないか、と頼んでも、駄目です、の一言で切って捨てられる。 ようするに、自分はこの塔の最上階の部屋に閉じこめられているのだ。何やったんだお前。 #夢の話
2017-04-10 18:38:09女性に出入り口を塞がれている自分であったが、諦めてはいなかった。 やるか。と、呟きながら自分はおもむろに窓のさんに足と手をかける。そして、クルリと体を反転させてと窓の縁にぶら下がった。 後ろで女性の声があがったような気がしたが、もちろん無視する。 #夢の話
2017-04-10 18:40:25自分の貧弱な腕力では、ぶら下がれる時間などたかがしれている。ここから落ちたらまず、確実に助からない。仕方があるまいと、悪態をつきながら懸垂の要領で元の窓辺へと体を持ち上げた。 肘を窓のさんにかけると、目の前に当然のようにいる女性が大きなため息をついた。 #夢の話
2017-04-10 18:42:00…まさか、対策した?自分は女性にそう問いかけながら彼女に片手を伸ばすと、 一度やられた手をそのままにしておく理由はないでしょう。と、女性は言いながら自分を引き上げてくれる。偉い。 #夢の話
2017-04-10 18:50:59実はすでに何度か、自分はここから脱出したことがあった。その際は下の階の窓枠が足をおける位置にあったため、それを足がかりにして逃げ出していたのだ。 だが、どうやら自分がここにいない間に建物の構造が微妙に改造されていたらしい。もう同じ手は使えないだろう。 #夢の話
2017-04-10 18:52:27林道の先にある競技場で行われるのは、武道大会であった。始まりはとある兄弟が片割れを誤って殺してしまったことによるもので、その鎮魂と戒めとして定期的に開催されているものである。 #夢の話
2017-04-10 18:56:42この林道を歩いているのは皆、大会参加者であった。大会行事の一つとして、参加者はこの塔から林道を通って競技場へと向かうのだ。 この大会を開催する要因となった兄弟が、やはりこの林道を歩いたことが理由のひとつだろう。 #夢の話
2017-04-10 18:57:31