フューリー・ロード　＃４

劉度 @arther456

呆然と見上げる春雨に見送られながら、烈風は来た方角へと帰っていった。わけがわからなかった。助けてもらったようだが、助けられる心当たりがない。「何あれ……？」春雨の問いかけに答える者はいない。あるのは、燃え上がるヘリコプターの残骸と、ボロボロのハイエースだけだ。22

劉度 @arther456

「……由美江！」春雨は我に返った。車の中で倒れる由美江に駆け寄る。抱き起こした時に、ぬめった血が手にまとわり付く感触に、春雨は身を強張らせた。腕の中の姉には、死の重みが覆い被さっていた。「死なないで、由美江……由美江！」必死に呼びかける。彼女には、それしかできない。23

劉度 @arther456

そこに駆け込んでくる車があった。「マーボー！」五十鈴の営業バンだった。「い、五十鈴さん！？あの……」「話は後！全員乗せなさい！」後部座席のドアが開き、不知火が飛び出してきた。由美江を問答無用で抱き上げる。「マーボー、そちらを持ってください」24

劉度 @arther456

「は、はいっ！？」「早く！」不知火の気迫には、有無を言わせぬ力があった。「はいっ！」思わず返事をし、由美江を営業バンまで運ぶ手伝いをしてしまう。「次！」「はいぃっ！」言われるがままに、バオ、そしてチェンも運び込む。最後に春雨を押し込むと、バンはその場から走り去った。25

劉度 @arther456

……その一部始終を観ていた者がいた。「ええ、申し訳ありません。作戦は失敗しました」瓦礫の陰に潜んでいたのは、白雪だった。「春日香苗は奪還され、春日由美江、傭兵2名も生存。こちらの損害はヘリ1機と搭乗員3名です」淡々と、無線機を通して誰かに報告する。26

劉度 @arther456

「はい。……失敗要因は、春日香苗です。彼女は深海棲艦でした。……ええ、この目で確かめました。魔力反応も深海棲艦のものでした。間違いありません。私も、信じられませんが。直接的な殺害は困難だと思われます」そう言ってから、しばらく白雪は無線機に耳を傾けていた。27

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やがて、彼女に命令が下ったようだ。「了解しました。では、白雪、これより佐世保へと帰還します」サブマシンガンを手に白雪は立ち上がる。東京は魑魅魍魎の巣窟、暴力の荒野の真っ只中である。しかし彼女は、命令通りこの廃都を脱出し、佐世保へと帰るだろう。28

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【フューリー・ロード】＃４おわり＃５へ続く