国立大学教授による「スポーツ(プロ野球)は才能も努力もない人間が夢を見るための物」というツイートは正しいのかについて

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生命情報保存研究所 @rodan670

少し前、国立大学の教授が「才能もない、努力もしない人たちがテレビの前で夢を見る。それが、スポーツ。」とツイートしたことがネット上で波紋を呼んでいた。同教授は昨年快進撃を見せ、25年ぶりにセリーグ優勝を果たした広島東洋カープを具体例とし

2017-05-28 07:17:21
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「カープなんて誰も興味もなかったはずなのに、今日勇気と元気と感動をもらったにわかファンの人たちがドヤ顔で「広島東洋カープ」を語る。」と語っている。 では本当に、スポーツ(プロ野球)を観戦するファンたちは、才能もなければ努力もせず、ただただ他者に夢を託すだけの存在であるのか?

2017-05-28 07:23:57
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この発言の軸には、まず才能もあれば努力もする者(プロ野球選手)と、これを応援する名もなき一般市民、というイメージ上の対立構造があると考えられる。プロ野球選手は才能もあり、努力もするので、狭き門たるドラフトにかかり、ファームから一軍にあがる機会を与えられ、公式戦で結果を出し

2017-05-28 07:31:32
生命情報保存研究所 @rodan670

テレビや新聞で報じられる強力な情報と化す。個々の選手の成績が上向けばそれぞれにおいて最多勝や首位打者といったタイトルが見え、あるいはチーム自体が優勝を目指せる。それはファンにとっての夢となる。才能もなければ努力もしないファンたちはテレビの中で他者が作り上げるこの夢舞台を越える夢を

2017-05-28 07:34:49
生命情報保存研究所 @rodan670

自らの人生において見出すことができないためもはやこれにすがるしかない。おそらくはこのような意図がツイートの真意としてあったものではないかと考えられる。では、ファンがスポーツ(プロ野球)に見出すのは、本当に単なる意味での夢(サクセスストーリー)であるのか?

2017-05-28 07:42:17
生命情報保存研究所 @rodan670

もしそうだとすれば、例えば特にタイトルを狙えるようなスター選手は一人も在籍せず、ペナント中盤で優勝どころかクライマックスシリーズ出場の芽すら絶たれた何の夢もない球団の試合を観戦するファンは存在しないはずである。しかし実際のところこのような球団の試合を観戦、それもテレビの前ではなく

2017-05-28 07:47:26
生命情報保存研究所 @rodan670

現地で観るために数千円のチケットを購入して詰め掛けるファンは数万人単位で存在している。ある年優勝した球団が、翌年最下位に沈んでも、これを応援するファンが10分の1になるといったレベルで激減することはない。ならばファンたちはそこに「夢(サクセスストーリー)」以外の何かを見ている。

2017-05-28 07:50:52
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他者の成功に自らの夢を預けようとするもくろみと、実力の世界であるプロ野球のフィールドはむしろ相性が悪い。応援するチームが仮に優勝しても翌年にはすべてリセットされたうえで以降の順位はまったく保証されず、また輝かしい成績を打ち立てたスーパースターであってもある日を境にスランプに陥り

2017-05-28 09:04:54
生命情報保存研究所 @rodan670

以後は目も当てられぬ体たらくで引退ということは往々にしてありうる。プロ野球のファンが自らは才能もなく努力もせず他人の働きに夢を見出したいだけの集団であれば、これほどその期待を容易に裏切りストレスを与える現場はない。

2017-05-28 09:15:08
生命情報保存研究所 @rodan670

にもかかわらず、ある球団のファンというものは、仮に応援するチームが夢も希望もなく、サクセスストーリーなどまるで期待できない状況にはまり込もうと、少なからぬ割合で観戦を続ける。

2017-05-28 09:20:14
生命情報保存研究所 @rodan670

ここでファンたちがプロ野球に真に見出そうとしているのは「自らが生きる今日がどのような一日であったのかの標識を半永久的に保障する現象」である。

2017-05-28 09:20:42
生命情報保存研究所 @rodan670

プロ野球ファンがファンの道に入り込む経緯には・親の影響・地元あるいは引越し先の地域が全体となって応援している流れに飲まれて・スポーツニュースでしきりと取り上げられる当代の花形選手に惹かれて・・・など様々なケースが考えられる。

2017-05-28 14:13:23
生命情報保存研究所 @rodan670

一度ファンになったからには、当然応援チームの全選手に愛着を抱くが、スポーツ選手の寿命は長くなく、10年もたてば自分が初めて応援を始めたころのメンバーは丸ごと別な選手達と入れ替わってしまっているという事も珍しくはない。しかし10年を通して(さほど熱心でなくとも)

2017-05-28 14:16:17
生命情報保存研究所 @rodan670

問題のチームを追ってきたファンにとってそれはさほど問題ではない。全選手の入れ替わりはある時点をもって一気にではなく段階的に生じ、見知った一人の選手が引退する傍ら代わりに現れてきたルーキーに新たな愛着を抱く心理的切り替えを繰り返していけば、

2017-05-29 08:18:17
生命情報保存研究所 @rodan670

結果的に応援を始めて10年後の、完全に入れ替わったメンバーに対してもファンは変わらず愛着を抱けていることとなる。ホーム球場やユニフォーム、ひいては観戦するファンらの同一性自体もこの変わらぬ愛着をサポートする。プロ野球は基本的に興行としての開催期間が定められておらず

2017-05-28 14:27:42
生命情報保存研究所 @rodan670

経験則的にみれば今後日本という国によほど大いなる変革が生じない限り半永久的に毎年続けられていくものと考えられる。いわば終わりの想定されないコンテンツである。さらにプロ野球の場合、シーズン中はほぼ毎日、オフ期間もキャンプ、オープン戦、ドラフト、移籍等で連日関連情報を提供してくれる。

2017-05-28 14:34:58
生命情報保存研究所 @rodan670

これほどの時間的連続性、および飽和性を有するコンテンツは、プロ野球以外ではNHKの朝ドラくらいしか類例を見出せないが、NHKの朝ドラは朝ドラで、半年ごとに作品が変わってしまうため、一貫性の上でプロ野球には及ばない。

2017-05-28 14:44:24
生命情報保存研究所 @rodan670

これにより、ある球団を追い続けてきたファンは、ある日西暦何年の何月何日に自分は何をしていただろうと思い返す際、当該日に行われた応援球団の試合のデータを足がかりに、それを見ていた瞬間、及びその周辺の記憶を引っ張り出すことができるし、あるいは今生きている今日という一日が

2017-05-28 14:46:24
生命情報保存研究所 @rodan670

果たしてどのような意味を有するのかはかりかねる場合、その答えを応援チームの試合の推移や、所属選手の活躍の有無に預けることもできる。応援チームや所属選手に夢を託すのではなく、特定の日付の標識を頼み、その時点における自らの立ち位置を確認するための材料とするのである。

2017-05-28 14:52:54
生命情報保存研究所 @rodan670

この場合、ファンらの中で応援チームとは、自らがたどり得なかったサクセスストーリーの代行者などではなく、時を知るための装置であり、もはや生活の一要素である。であればファンらは応援チームがシーズン中、どれだけ夢も希望もない状況に陥ろうとも観戦しに駆けつける。

2017-05-28 15:10:02
生命情報保存研究所 @rodan670

なぜならば勝ち負けや成績を超え、目の前で繰り広げられている試合という現象が、その一部始終が、自らを構成する貴重な財産となっていくからである。もちろんこの場合であっても、自分が生きる一日を自分自身の力で標識することのできない、その意味で才能あるいは努力の欠如した人間の逃げの一手と

2017-05-28 15:14:36
生命情報保存研究所 @rodan670

批判されることはあるかもしれない。しかし一生を通じて自分が生きる毎日に独力だけで意味合いを持たせ他の日付と差別化することのできる才覚あるいは立場を持った人間は世界中を見渡しても極めて少数しかいないだろう。

2017-05-28 15:17:27