花を贈る燭台切と長谷部の話

なっすんさんから頂いたお題を元に妄想した一連ツイート
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天城🔞蜜藤F53b @amagi_skhs

もし終わるなら春がいい。古の法師を真似る訳ではないけれど、生き物が皆目を覚まし喜びの歌を歌い、花びらの舞い散る中死ねるなら満足だ。そう言っていた審神者が亡くなった。眠るような死だった。 …から始まる燭へしはっじまっるよー(自分用メモ)

2017-03-09 20:30:05
天城🔞蜜藤F53b @amagi_skhs

@amagi_skhs 長谷部は生前に審神者の遺品整理を主命として託されていた。ほかの刀剣達は譲渡されたり刀解されたりして、ひとりきりで暮らしている。長谷部はあと一月ほどで閉じる本丸と共に終わるつもりだった。

2017-03-09 20:35:16
天城🔞蜜藤F53b @amagi_skhs

@amagi_skhs そんなある日、「すみませーん!」と本丸の門を叩く姿があった。「○○さんから、この本丸の長谷部くんにお花の宅配です!」○○とは審神者の名前だった。生前の審神者が長谷部が寂しくないようにと花の注文を行っていたのだった。驚きつつも花を受け取る長谷部に、

2017-03-09 20:38:02
天城🔞蜜藤F53b @amagi_skhs

@amagi_skhs 他所の燭台切が「こんにちは。今日から一ヶ月、花の注文を受けているんだ。これは今日の分」と二輪草の花を一輪渡す。燭台切の本丸は花で溢れ、たまにこうして他の本丸におすそわけに来るのだという。

2017-03-09 20:44:04
天城🔞蜜藤F53b @amagi_skhs

@amagi_skhs それから、長谷部は毎日燭台切から花を受け取るようになった。スノードロップ、デイジー、カーネーション。燭台切は話好きなようで、来る度に色んな話をした。長谷部は最初は聞き流していたものの、次第にその会話に心惹かれていくようになる。

2017-03-09 20:47:22
天城🔞蜜藤F53b @amagi_skhs

@amagi_skhs 本丸の花瓶が足りなくなった頃、燭台切が長谷部を万屋に誘う。しかし審神者が亡くなって存在が不安定になっていた長谷部はその申し出を断り、燭台切に買い物を依頼する。燭台切はすこし残念そうにしたものの、花瓶と、土産の草餅を買ってくる。

2017-03-09 20:50:10
天城🔞蜜藤F53b @amagi_skhs

@amagi_skhs 燭台切の存在はひとりきりの長谷部にとって唯一の生活の彩りだった。徐々に燭台切を好いていく自分に恐れおののく長谷部。本丸の終わりは自分の終わりで、それももうあと2週間だ。何を夢見ているのだろう。自分は、あと2週間で消えるのに。

2017-03-09 20:52:20
天城🔞蜜藤F53b @amagi_skhs

@amagi_skhs 燭台切は色々な話をしてくれた。空には桜、地面には芝桜が一面に広がる川辺があること。目の覚めるような青いネモフィラの丘。いつか君に見せたいと語る燭台切に、俺は見れそうにない。お前が代わりに見てくれ、と言うと、燭台切は長谷部の手を掴んで言った。

2017-03-09 20:55:27
天城🔞蜜藤F53b @amagi_skhs

@amagi_skhs 「君の事情は知ってる。君の決意のことも。だけど、僕は君と一緒に生きたい。僕の本丸に来てくれないか」 馬鹿を言うなと怒鳴りつけ、追い返す長谷部。その夜見た夢は、燭台切と手を繋いで青い花々が咲き広がる丘を歩く夢で、長谷部はその日審神者が死んで以来初めて泣いた。

2017-03-09 20:57:58
天城🔞蜜藤F53b @amagi_skhs

@amagi_skhs 次の日花を届けに来たのはこんのすけだった。燭台切はどうしたと尋ねると、出陣で重傷を追って手入れ中なのだという。その日の遺品整理はまったく進まなかった。 次の日現れた燭台切に、長谷部は本を投げつけた。「俺の知らないところで倒れるんじゃない!」

2017-03-09 21:02:02
天城🔞蜜藤F53b @amagi_skhs

@amagi_skhs 八つ当たりだ。わかっている。そんな長谷部に、ごめんねと笑う燭台切。燭台切から花を受け取ると、長谷部はぼろぼろと泣き出した。 「おまえがいると、俺はおかしくなるんだ」「うん」「この本丸と共に終わらなければならないのに、その先を夢見てしまう」「うん」

2017-03-09 21:07:14
天城🔞蜜藤F53b @amagi_skhs

@amagi_skhs 「お前の話してくれた桃色の川辺が見たい。ネモフィラの丘を歩いてみたい。お前と一緒に」「長谷部くん」燭台切がそっと手を差し出した。「君が好きだよ。僕と一緒に来てくれないか」長谷部は手を伸ばしかけ、ゆっくりと拳を握る。「でも、駄目だ」

2017-03-09 21:10:50
天城🔞蜜藤F53b @amagi_skhs

@amagi_skhs 「俺は、この本丸の最後を見届けなければならない」そう言って、長谷部は門を閉じる。「もうお前とは会えない。明日から花は門の所に置いていってくれ」「長谷部くん!」ドン、と拳をぶつける音がしてしばらくすると気配がなくなった。長谷部はそのままずるずると座り込んだ。

2017-03-09 21:13:59
天城🔞蜜藤F53b @amagi_skhs

@amagi_skhs これでいいんだ。そう無理やり自分に言い聞かせ、次の日から門の外に置かれた花を回収する日々が始まった。本丸の終わりは、あと一週間に迫っていた。

2017-03-09 21:15:51
天城🔞蜜藤F53b @amagi_skhs

@amagi_skhs そして最後の日。本丸の消滅は静かだった。空間がかすかに震え、さらさらと端から崩れていく。何もない空間がじわじわと侵食していく。皆と走り回った庭も、何度も寝起きした屋敷も、すべて。そんな時に長谷部の頭に浮かんだのは審神者ではなく燭台切だった。

2017-03-09 21:18:50
天城🔞蜜藤F53b @amagi_skhs

@amagi_skhs 燭台切。どうか、幸せにー。そう思い目を瞑った長谷部の耳を鋭い声が打った。「長谷部くん!!!」

2017-03-09 21:19:46
天城🔞蜜藤F53b @amagi_skhs

@amagi_skhs 振り返って燭台切の姿を確認して、長谷部は目を見開いた。「馬鹿、お前、なんで」このままでは燭台切も共に消滅してしまう。長谷部が慌てて門の方へ駆け寄ると燭台切が長谷部に手を伸ばした。 「長谷部くん、やっぱり僕は君のことを諦め切れない!僕と一緒に生きてくれ!」

2017-03-09 21:21:45
天城🔞蜜藤F53b @amagi_skhs

@amagi_skhs 躊躇する長谷部だったが、ぐずぐずしていれば本当に2人とも消滅してしまう。燭台切をそんな目に合わせる訳にはいかない。咄嗟に伸ばした手は力強く握り返され、ぐんと強い力で引っ張られる。 「長谷部くん、君が好きだ!君は?」「…俺、も、」

2017-03-09 21:24:50
天城🔞蜜藤F53b @amagi_skhs

@amagi_skhs お前が好きだ。言葉は互いの唇の中に吸い込まれた。 「このままじゃ危ない。こっちだ!」燭台切は長谷部を抱き上げ崩れかけた門を出た。 門の外には散り際の葉桜が生き生きと若葉を茂らせていて、これから来る夏の訪れを思わせた。「…春に、終わるのだと思っていた」

2017-03-09 21:28:02
天城🔞蜜藤F53b @amagi_skhs

@amagi_skhs 「終わらないよ。僕が終わらせない」そう笑う燭台切を長谷部は眩しそうに見つめ、泣き笑いの表情で告げる。 「責任は、取ってくれるんだろうな」「勿論」長谷部の額にキスをして、燭台切が前を示す。 「さあ行こう!僕達の本丸へ!」 〜HAPPY END〜

2017-03-09 21:30:36
天城🔞蜜藤F53b @amagi_skhs

@amagi_skhs これ裏設定として実は長谷部の籍は審神者の生前燭台切の本丸に引き継ぎされていて、花の配達は長谷部の神気を燭台切の本丸に馴染ませる&向こうの近侍の燭台切との顔合わせを兼ねていたって設定があります

2017-03-09 21:32:43