燭へし転生パロその4

記憶なし光忠×記憶あり長谷部。含学パロ。
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天城🔞蜜藤ナ27b @amagi_skhs

転生パロ大好きなのと一途健気受けが好きなのと記憶喪失モノが大好きなので、昨日と似たネタ呟くんですけど、記憶なし✕記憶あり燭へしで長谷部くんが光忠に前世のこと言って電波扱いされるの何度だって読みたいのでください

2017-05-27 18:37:09
天城🔞蜜藤ナ27b @amagi_skhs

そこそこの進学校に入学した光忠。入学式に向かう途中、「光忠!!」と知らない声に名前を呼ばれる。振り返ると、同じ制服を着た同学年と思しき青年がその瞳に涙を湛えながら立っている。「光忠…!会いたかった!やっと見つけた…!」そう言って光忠にぎゅうぎゅうと抱きついてくる青年。

2017-05-27 18:41:06
天城🔞蜜藤ナ27b @amagi_skhs

「ええと、僕、君とどこかで会ったっけ?」「…俺達の前世のこと、覚えて、ないのか…?」あ、これヤバい人だ。光忠は咄嗟にそう判断する。真面目そうな見た目をしているから、受験のストレスで精神を病んでしまったのかもしれない。刺激しないようにそっと青年の腕を外し、困ったように笑う。

2017-05-27 18:44:07
天城🔞蜜藤ナ27b @amagi_skhs

「君、ちょっと誰かと勘違いしてるんじゃないかな。もしくはすごく疲れてるとか。よかったらいい病院紹介するよ?」「本当に覚えてないのか?本丸のことも、歴史遡行軍のことも?共に戦い愛し合った日々を、お前は忘れてしまったっていうのか?」「うん、ごめんね?」いよいよ以てヤバい人だ。

2017-05-27 18:47:34
天城🔞蜜藤ナ27b @amagi_skhs

ホンマルって何だ。レキシソコーグンって何?共に戦い愛し合った?彼と?よくわからないけど、これ以上関わり合いになりたくない。そう思って、「ごめんね、僕急いでるから」と言って振り切る光忠。 ちなみに入学式の新入生代表の挨拶をしたのは彼で、ナントカと天才って紙一重なんだなと思った。

2017-05-27 18:55:52
天城🔞蜜藤ナ27b @amagi_skhs

長谷部国重という名の彼は、奇しくも同じクラスだった。休み時間の度に「光忠、話がある」と迫って来るので、とにかく逃げ回った。おかげで入学一週間目にして光忠は学内の隠れ場所を知り尽くしてしまったし、事情を知らないクラスメイトからは「生き別れの幼馴染なんだって?少しくらい話してやれよ」

2017-05-27 19:17:32
天城🔞蜜藤ナ27b @amagi_skhs

(どうやら彼は周りにはそう説明していたらしい。抜け目のないことだ)と見当外れなアドバイスを受けるし、光忠はいい加減げんなりしていた。長谷部が追いかけてくるせいで、ろくに友達ができないのも苛々のひとつだった。そうしてとうとうある日、光忠は自分から長谷部に近づいて話しかけた。

2017-05-27 19:22:09
天城🔞蜜藤ナ27b @amagi_skhs

「長谷部くん、ちょっと話があるんだけど」そう言ってなるべく人気のない場所に長谷部を連れ出す。「思い出したのか、光忠」期待に満ちた瞳が妙に苛々して、光忠は吐き捨てるように言った。「思い出すも何もないよ!もううんざりだ。いい加減にしてくれ。君の妄想に振り回されて僕は迷惑してるんだ!」

2017-05-27 19:26:17
天城🔞蜜藤ナ27b @amagi_skhs

「…迷惑」「そうだよ。君のせいで僕の高校生活は滅茶苦茶だ!前世だかなんだか知らないけど、もう僕に付き纏わないでくれ!」長谷部の答えを聞く前に、光忠は踵を返してその場を足早に立ち去る。長谷部は、追ってこなかった。 それ以来、長谷部は光忠に話しかけるのをぴたりとやめた。

2017-05-27 19:33:08
天城🔞蜜藤ナ27b @amagi_skhs

光忠に平穏な高校生活が訪れた。友人も出来、休み時間はクラスメイトとテレビやゲームの話題で盛り上がる。ごくごく平凡な日常。時折何か言いたげにこちらを見つめる藤色の眼差しには気づかないふりをして、光忠はようやく「普通の生活」を取り戻した。

2017-05-27 19:42:12
天城🔞蜜藤ナ27b @amagi_skhs

こうして距離を置いてみると、長谷部という青年は、自分に対する一連の言動以外はただの優秀な男子高校生で、学業が優れていることは勿論、運動面も飛び抜けていて、ごく模範的な生徒にしか見えなかった。すこし真面目すぎてクラスから浮いている所もあるけれど、仲間はずれにされるという程でもない。

2017-05-27 20:32:24
天城🔞蜜藤ナ27b @amagi_skhs

やっぱり、あれは真面目すぎる彼がストレス故でおかしくなった結果だったのだろう。そう思いつつも、もう名前を呼ばれないことにもやもやを感じる光忠。それは長谷部が他のクラスメイトと話しているのを見かけた時にも感じていて、内心で必死に否定した。今更寂しいだなんて、そんなことある訳ない。

2017-05-27 20:37:00
天城🔞蜜藤ナ27b @amagi_skhs

そうして数ヶ月が経った頃、光忠の学年で林間学校があった。一日目の夜は生憎の雨で、クラスメイト達と布団の中で雑談を交わしていると、何やら廊下が騒がしい。通りがかった教師に事情を聞いた何名かが戻ってくる。「長谷部が行方不明らしい」「あの真面目くんが?」「嘘だろ」胸騒ぎのする光忠。

2017-05-27 20:41:33
天城🔞蜜藤ナ27b @amagi_skhs

放っておけばいい。そう思うのに、あの日光忠が突き放した時に見た迷子のような顔がどうしても頭をちらついて、気づけば光忠はレインコートと懐中電灯を引っ掴んで宿から抜け出していた。「長谷部くん!長谷部くん、どこだ!」あの真面目な長谷部が道のない所に分け入っていくとも思えない。

2017-05-27 20:45:07
天城🔞蜜藤ナ27b @amagi_skhs

遊歩道沿いをライトで照らしながら歩いていると、藪の中に白いものが落ちていた。ハンカチだ。「長谷部くん!いるんだろ!」この近くにいると検討をつけて、藪の中に分け入っていく。しばらく進んだ所で雨が強くなってきた。これはそろそろ諦めて帰った方がいいのかもしれない。そう思った時だった。

2017-05-27 20:48:39
天城🔞蜜藤ナ27b @amagi_skhs

「みつ、長船…?」ガサ、と茂みの中から長谷部が現れた。「どうしたんだ、こんな所で」「どうしたじゃない!君がいないせいで今宿は大騒ぎだよ!」「…探しに来てくれたのか」「不本意ながらね」それでも、長谷部ははにかむように微笑んだ。「…やはり、おまえは優しい」一瞬その顔に見惚れる光忠。

2017-05-27 20:53:40
天城🔞蜜藤ナ27b @amagi_skhs

ぶるりと振り切るように首を横に振る。「ほら、宿に戻るよ」踵を返そうとしたその時、雨がさらに強くなった。「…一旦雨宿りしよう。この勢いだと、そう長くはないだろう」長谷部の提案を渋々飲むことにして、近くの巨木の下に二人で入る。「…そういえば、なんで宿を抜け出したりしたんだ」

2017-05-27 20:57:17
天城🔞蜜藤ナ27b @amagi_skhs

長谷部は大事そうに握りしめられていた手をゆっくりと開いて、光忠の目の前に示した。「…おまえに、これを見せたくて」そこにあったのは、一房の藤の花だった。「…何か、思い出さないか?」またそれか。光忠はげんなりしつつも、長谷部の瞳があまりに真剣なので少しだけ考えてみる。

2017-05-27 21:01:27
天城🔞蜜藤ナ27b @amagi_skhs

特に綺麗だなとしか思わない。それでもじっと見てくる長谷部の視線をちらりと見返して思わず「あ、」と声を上げる。「…君の目の色と、同じだ」途端、泣き出しそうに顔を歪める長谷部。「どうしてそんな顔するの」「…いや、気にしないでくれ」ふいと顔を逸した長谷部に何も言えず、光忠は黙った。

2017-05-27 21:11:33
天城🔞蜜藤ナ27b @amagi_skhs

ざあざあ、ざあざあ。雨が強い。「…あのさ、君の言う「前世の僕」って、どんな奴だったの?」聞いたのはただの興味だった。初めて会った時以来、ただの一度も長谷部の口から「前世」の詳しい話を聞いたことがなかった。長谷部は少しだけ躊躇いがちに、わずかに頬を染めて口を開く。

2017-05-27 21:16:01
天城🔞蜜藤ナ27b @amagi_skhs

「…かっこいい、奴だった。強くて、優しくて、皆から信頼される、自慢の男だった」長谷部が頬を緩める。「格好をつけ過ぎるきらいもあったが、俺にだけは時折弱い所やかっこ悪い所を見せてくれて、嬉しかった。いつも蕩けるような眼差しで俺を好きだと言ってくれた。俺はそんな光忠を愛していた」

2017-05-27 21:20:14
天城🔞蜜藤ナ27b @amagi_skhs

そうか。唐突に理解した。彼の言う「光忠」とは、きっと彼の中のヒーローの象徴のようなもので、自分はただそれを投影されているにすぎないのだ。長谷部の視線の先に、自分はいない。それがなんだかむかついて、光忠は皮肉げに口の端を上げた。「ふうん。前世の僕って随分とご立派な奴だったんだね」

2017-05-27 21:28:14
天城🔞蜜藤ナ27b @amagi_skhs

「うん、立派だった。立派に皆を守って、最後には折れた」光忠の意図など通じなかったように長谷部がぽつりと言う。「後悔した。あまり好きだと返してやらなかったこと、抱きしめ返してやらなかったこと。してやりたかったことばかりが浮かんで、けれどおまえはいない。気が狂いそうだった」

2017-05-27 21:32:05
天城🔞蜜藤ナ27b @amagi_skhs

「長船、おまえは今、幸せか?」長谷部が静かな瞳で問うてきた。冬の湖にも似た、静謐さがそこにはあった。「…君が、おかしなことを言わなければ幸せなんじゃないかな」「…そうか」長谷部が笑う。「なら、いい。おまえとこうして会えただけで僥倖なんだ。これ以上は望まない。今まですまなかった」

2017-05-27 21:37:15
天城🔞蜜藤ナ27b @amagi_skhs

違うだろう。反射的にそう思う。そんなこと、本当は思ってないくせに。そうやって我慢して諦めて忘れたふりをして。君の悪い癖だ。「…友達にも、なれないのか」気づけばそう口にしていた。「え?」「いやその、君、悪い奴ではないと思うし、ただの友達なら、なれないことも、ないかなって、」

2017-05-27 21:46:53