【偶然ではない必然の恋】

りえこ @eighter_rieko83

【偶然ではない必然の恋】 1 金曜日の深夜。 「ぁっ…えぇよ…は…。」 今日も適当な子、連れ帰ってエロい事。 …月曜の子の方が上手かったな…。 「欲しいん？ほんなら自分で入れてみ？」 しょーちゃんは“運命の人”とやらに夢中やし、おーくらもどうやら女できたみたい…。

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2 なんやどんどん置いてかれる感が。 地元の友達はほとんど結婚してもーたし…30越えたら…そんなもん？ なんやねん、運命の人って…。 「はぁ…はぁ……コレ…キレイにしてや？」 こんな俺が、結婚したいとか思える運命の女…そんなんおるの…？

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3 土曜日。 《なんや、亮も休日出勤か。》 「なんやって、なんすか…すばるくんのせいでしょ…。」 きのうすばるくんの仕事手伝ったせい…つか、しょーちゃんに無理矢理手伝わされたせいで…月曜に提出せなアカン書類、まだでけてへん。

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4 すばるくんと２人だけの静かな事務所内に、パソコン叩く音だけ。 …と思ってたら、突然。 『すーばるぅぅぅ♡』 女の声。 《…ちっ…何勝手に入ってきてんねん…。》 うわ…キレイな人やな…。 すばるくんの彼女…？ 大人で…上品なのになんか…エロい…。

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5 『勝手に入ったりしてませーん！守衛さんが入れてくれたんですぅ～！』 《なんやねん、守衛のおっちゃんまでたらし込んだんかい。》 『失礼ね！人をアバズレみたいに！』 《おぉ！ピッタリやんけ、その言葉！》 …彼女…ではない…か…(汗) 『アンタ！それが姉に対する態度？！』

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6 あっ、あぁ…お姉さん…？！ 《えぇ時だけ姉貴ヅラすんなよ！》 『なんやのそれ！お姉さまなんやからしゃあないでしょ！アンタは永遠にあたしの弟くんなんよ！や～い！あはははは！』 お姉さんは笑いながらすばるくんのほっぺたを摘んだ。 ムスッとしてなされるがままのすばるくん。

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7 ぼーぜんと見ていたら、俺に気付いたお姉さん。 『お見苦しいところをすみません。』 にっこり笑った。 …やば！！ めっちゃキレイ！！ 《ほれ見ろ、亮も呆れとるやろが。ほんま何しに来てん。》 『亮くんて言うん？オトコマエやなぁ♪』 《亮に手ぇ出したら殺すぞゴラァ。》

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8 『ちょっと待って、普通逆でしょ？“亮、俺の姉貴に手ぇ出したら”…』 《亮がおまえみたいな珍獣に手ぇなんか出すかぃアホ！》 『誰が珍獣じゃ、ゴラァ！』 俺の話題？やけど、俺のおらんとこで話がどんどん進んでる…。 つか、このお姉さんやったら、手ぇ出されんのアリやけどな…。

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9 『とにかく、早く仕事終わらせてよ！』 《なんでや。》 『だって、誕生日ブレゼント買ってくれる約束やったやん♪』 《…おまえ、いつの話しとんねん…。》 『３ヶ月前♪』 《…やったらもう無効やろ。》 『なんでよ！欲しいもん見つかったらいつでも言うて来いて言うたやん！』

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10 《えぇ～…ちょ、今月ピンチやねんてぇ～！》 『約束したも～ん♪』 なんだかんだ…仲良しやねんな…。 《あ～もぉ、分かったから！ちょ静かにしといて！仕事に集中でけへんやろ！亮にも迷惑やて！》 『あっ…亮くん、ごめんね？』 「はっ、いや、俺は全然…！」

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11 『じゃ、あたし、下のカフェで待ってるわ。早よ終わらせて来てや？』 《あぁ…もぉー…わかったわかった…。》 お姉さんは満面の笑顔で軽くガッツポーズを取ると、俺に手を振って事務所を出て行った。 《はぁ…ほんま、すまんな、亮。》 「いえ！…キレイなお姉さんですね…。」

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12 《…あんなじゃじゃ馬…ホンマやめとけよ、亮。》 「なっ…、何言うてんすか！キレイやって言うただけですやん！そもそも、相手にされるわけないですやん(笑)」 すばるくんの何でも見透かしてるような目に、つい慌ててしもた。 だいたい…もう会わへんと思うし…。

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13 月曜日、先週から契約更新のあったお得意さまの会社へ向かう。 約束の時間ちょうど。 《僕がね、ちょっと他のことで手いっぱいなのよ。だから、今日から後任つけるから、よろしく頼むね？》 担当の男性が申し訳なさそうに部屋に通してくれた。 《若いけど優秀だよ…すぐ呼ぶから。》

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14 まさかまさか…そんな偶然てある…？ 『後任の渋谷です。よろしくお願いします。』 丁寧にお辞儀をして、名刺を渡される。 スーツのせいか、この前よりクールで清潔感を感じる。 表情も穏やかで前任者の言う通り、仕事のできるイイ女代表みたいな…。

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15 「あっ…あの…っ、」 『どうぞ、おかけ下さい。』 「あっ、はい…。」 涼しい顔で、初めて会ったかのような対応にこっちだけアタフタ…。 もしかして、俺の顔覚えてない…？ 『引き継ぎはきちんとできておりますので、以前の契約と変更になった点を…、』

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16 「あのっ…！」 淡々と進めようとするけど、俺は全然仕事にならない状況。 『…はい？』 「あ、あのっ…もしかして覚えてませんか？」 『…何をでしょう？』 「えっ…、」 まさか、ホンマに覚えてへん？ 一昨日会ったばかりやのに…？ 「いや…あの…っ、」

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17 『冗談(笑)もちろん、覚えてるわよ、りょーくん♡』 にっこり笑って…名前まで覚えとってくれた…。 「あぁ…はは…びっくりした…すごい…普通に仕事始めるから…っ、」 『だって、ここ会社だもーん。』 「いや、ま…それはそうです…けど…。僕が担当って知ってたんすか…？」

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18 『知ったのは今朝。弟の会社と取引があるのは前から知ってたけど…名前聞いてもしかして…とは思った。でも、“亮”なんて、そんな変わった名前でもないし、まさかなーって。』 「あぁ…そうですか…。」 『これってさぁ…運命かもよ？』 「へっ？！」 びっくりしたら、ニヤリと笑う。

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19 『あはは、ねぇ？運命とか信じる人？』 「えぇっ？！やっ…そんなことないっすよ…友達には彼女が運命の人やーとか言うてるヤツおりますけど…俺はそんな…、」 『そんなふうに思える相手に出会ってない。』 「え？」 『ふふ。まぁ、あたしも別に信じてるわけじゃないよ？』

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20 「はぁ…。」 『でもさ、偶然ではないよね？』 「え？何がですか？」 『一度は偶然だけど、二度は偶然じゃないでしょ？』 「…はぁ…。」 『てことは、あたしと亮くんの出会いは必然だったってことよね？』 「そー…なります…？」 『なります！ってことで、』 「へ？」

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21 『ここ！も少し値引きしよーか！』 「はぁっ？！」 『運命かもしれない担当者に、この提示金額はちょっと高いと思うわけ！』 「ちょっ、ちょっ、何言うてるんすか！」 『りょ～ちゃぁ～ん！』 「なっ…！！」 なんて女や…！

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22 火曜日、上司に相談し金額変更した契約書を手に、再び例の会社を訪れた。 「ホンマ…これ以上は無理ですから。」 『…ふふ、ありがと♡』 お姉さんは契約書に一通り目を通して、それをサッと横に追いやった。 そして目の前で頬杖つくと、俺の顔をじっと見つめる。

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23 『ホントにいい男だね、亮。』 え！ いきなり呼び捨て？！ 『表情もコロコロ変わって…かぁわいー♡』 「ちょっ！からかってんすか！///」 『からかってなんかないわよ～。ねっ…飲み行かない？』 「はっ？！」 『もうすぐ仕事終わりでしょ？直帰できないの？』

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24 「それは…まぁ、できますけど…。」 『じゃあ、飲みに行こうよ♪いい男と飲みに行くのって楽しいやん？』 「はぁ？！」 『もう…怒んないでよ…。値下げのお礼に奢らせてって言ってんの！だめ？』 「えっ…。」 『行くの？行かへんの？』 たまに出る関西弁…。 「…行きます…。」

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25 『個室空いてる？』 《おー、空いてるよ！勝手に使って！》 連れて来られた店は、彼女の行きつけらしかった。 『好き嫌いある？』 「…あります…。」 『じゃあ、注文は亮に任せる。』 「えっ？ 」 『キライなもの聞いて注文、これダメだ、これもダメだって、楽しくないでしょ？』