一様収束の理解とゲーム的意味論

∀∃文をゲーム的意味論で捉えると、一様収束なんかは理解しやすくなるのではないかという気づき.
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学部時代,関数列の一様収束と各点収束の違いがよくわからなくて悩んだ記憶があります.あまりにも昔過ぎて何をどう悩んだのか思い出せません.

論理式で書けば

・閉区間I上で関数列(f_n)がfに一様収束する
⇔ ∀ε >0 ∃N ∀n>N ∀x∈I |f_n(x) - f(x)| < ε.

・I上で関数列(f_n)がfに各点収束する
⇔ ∀x∈I ∀ε >0 ∃N ∀n>N |f_n(x) - f(x)| < ε.

となり,∀x∈I と∃N が同値性を保ったまま入れ替えできないため両者は「おなじこと」ではないことがとりあえずは確認できます.しかし,これ以上論理式を見ていても一様収束性が言わんとしていることが何かはよくわからない感じがするかもしれません.

ところで,教科書や授業を注意深く読むと,もしかしたら
「Nがx∈Iに対して一様に取れるのが大事なのである」みたいな事を言ってるかもしれません.

解析学で頻出する∀∃文は,たとえば∀x∃yならば,「xがどんなものであっても,yを上手く取って~~とできる」と読み下すことができます.これは「任意のxに対してyが存在し~~である」と「同じことを言っている」のですが,前者のような捉え方をすると長く複雑な論理式も(まあまあ)読み下せます.

∀∃文を「どんなxが来ても,yを上手く取ってやれば...」と言った感じで解釈する方式はHenkinが最初に提案したようです.まるで∀と∃で攻守のゲームをしているかのように語れるので,「ゲーム的意味論」などと呼ばれます.(ある意味あまりにも自然なものなので,一番最初に誰が思いついたか,を特定するのは難しいでしょうが).

参考:https://plato.stanford.edu/entries/logic-games/#SemGam

一様収束性に限らず,∀∃文が込み入っていて理解しづらい場合は意識的にゲーム的意味論で解釈すると多少は楽になるかもしれません.

dif_engine@ワサラー団 @dif_engine

「どうやったら一様収束と各点収束の違いがわかるようになりますか?」 「論理式で書けば...こんなふうに量化の順序が違いますよね」 「論理式って私嫌いなんですよね.もっと簡単に説明してください.本当にわかってる人は誰にでもわかるように説明できるはずです」 「???」

2017-06-27 00:06:02
dif_engine@ワサラー団 @dif_engine

色々なアレを刺激してるみたいですが,個人的には「論理式って私嫌いなんですよね」の人を,今はそんなに嫌いになれない感じです.(昔はおこでしたが).

2017-06-28 00:39:27
dif_engine@ワサラー団 @dif_engine

なーにが「おこ」じゃ!まともな日本語を使え!

2017-06-28 00:40:12
dif_engine@ワサラー団 @dif_engine

数学者が口頭で「εに対してNを区間I上一様に取れる」みたいな言い方をすることがあるけど,この「区間I上一様に」という言い回しに現れる「一様」というのはやや独特の数学方言であって,「一様に取れる」という文言をヒントに理解しようとしても難しいと思う.

2017-06-28 20:32:35
dif_engine@ワサラー団 @dif_engine

微積分に出てくる「一様~」でもう一つ有名なのが「一様連続性」だけど,一様収束だとか一様連続を理解した”そのあとで”,数学方言の「一様に」の指示内容がややハッキリする,そんな気がする.

2017-06-28 20:35:07
dif_engine@ワサラー団 @dif_engine

解析学で∀∃文が出てきたとき,黒板に向かって教授が説明してたときの事を思い出すと,わりとHenkinの意味でのゲーム的意味論で考えてる気がする.つまり∀x∃yなら,「xに何を取ってきても,yを上手く取れて...」みたいに言ってた.

2017-06-28 20:41:36
dif_engine@ワサラー団 @dif_engine

(and とか or のことはとりあえず考えてないのでHintikkaよりはもっと古い形のHenkinぽいかなと)

2017-06-28 20:42:40
dif_engine@ワサラー団 @dif_engine

数学で量化の説明するときに,”正式には”∀x∃yを「任意のxに対してyが存在して...」と説明されることが多い気がする.これに対して「xに何を取ってきても,yを上手く取れて...」は”結局言ってることは同じ”だけど後者はやや物語っぽい脳内風景になるので考えやすいと思う.

2017-06-28 20:47:40
dif_engine@ワサラー団 @dif_engine

(やや日常言語寄りの)述語論理の教科書で,「どんな人間にも,その人を愛する人が存在する」みたいな例があったときに,あまりゲーム的意味論で説明してなかった気がするな.あとでR.ジェフリーとか調べてみよう.

2017-06-28 20:53:37
dif_engine@ワサラー団 @dif_engine

@spacegoats14 自分が受けた解析学の授業やゼミの様子の記憶では,たいていゲーム的意味論が使われていました.しかし,学部の最初の方では,「任意のxに対しyが存在し」式で説明されたような記憶があります.導入時の説明と運用のされかたにギャップがあるのではないかというのがツイートの趣旨です.

2017-06-28 21:19:41
dif_engine@ワサラー団 @dif_engine

R・ジェフリー「記号論理学」p.85 で∀∃文の解釈が扱われている.ここでは「任意のxに対して」+「yが存在し,それがどのようなyかと言うと」方式で解釈しており,ゲーム的っぽくはない.

2017-06-28 21:30:23
dif_engine@ワサラー団 @dif_engine

Quine「Methods of Logic」は「∀x」が「(x)」で「∧」が「.」なのでモダンボーイの僕にはメッチャ読みづらい.ざっとみたところ∀∃(というか(x)∃?)文についての特段の注意はなさそう.多分...

2017-06-28 21:46:32
dif_engine@ワサラー団 @dif_engine

嘉田勝「論理と集合から始まる数学の基礎」は,量化を含んだ文を日本語に置き換えるときに「」や『』を使って(日本語の文法上生じがちな)曖昧性を回避する,という流儀.ゲーム的意味論を∀∃文に使う話は扱われてないっぽい.(扱われないからダメ,と言いたいのではない).

2017-06-28 22:13:55
dif_engine@ワサラー団 @dif_engine

仮説:授業や教科書の方で「任意のxに対しyが存在し...」方式で説明されていても,教師の口調や教科書での証明を読んでいるうちに自然とゲーム的意味論を身に着けた人は溺れ死ぬ確率が低くなる.

2017-06-28 21:49:31
dif_engine@ワサラー団 @dif_engine

@spacegoats14 『数学に慣れてしまうと「任意のxに対しyが存在し...」と書かれていても心の中では「どんな風にxを取られてもyを上手く取って...とできれば優勝」と無意識に読み替えてしまう』という仮説を立てたところです.(無意識に関するものなので,この仮説の検証は難しそうです).

2017-06-28 21:54:52
dif_engine@ワサラー団 @dif_engine

ゲーム的意味論は,古典的な意味論と「自明に等価」ように思いがちだが,plato.stanford.edu/entries/logic-… にあるように,Henkinの意味論的ゲームは,量化の列の右端が確定していなくても行えるので,古典的な意味論と全く等価とは言えない.

2017-06-28 22:01:17
dif_engine@ワサラー団 @dif_engine

数学者が一様収束について口頭で「どんなεに対しても自然数Nを区間I上一様に取れて...」というとき,これゲーム的意味論で説明してるよね.

2017-06-28 22:03:26
dif_engine@ワサラー団 @dif_engine

ここでも言ったように,どうも数学に慣れてくると「任意のxに対してyが存在し」と活字で書かれていても,心の中で自動的に「xをどんな風に取られてもyを上手く取れて」と言い換えてるらしい. twitter.com/dif_engine/sta…

2017-06-28 22:06:05