童話ミルミル地蔵

地蔵を磨いたら詩才がグングン増える草を貰ったマリンくん。こりゃもう詩をバンバン書いて売って退職まった無しか~~???
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女児クローズドフォレスト @clo_naegi

昔々、山奥の観木という村に、マリンという若者が住んでおったそうな。マリンはあまり仕事をしたくない若者だったが、持ち前の器用さでほどほどにこなしながら生きておった。

2017-07-09 00:52:20
女児クローズドフォレスト @clo_naegi

ある日のこと。マリンはいつものように、ややサゲ感のあるムードで仕事先に向かっておった。道中の険しい峠の麓には五体のふるぼけた地蔵があった。マリンは清潔には一家言ある若者だったので、テンションがピリついてくるとこの地蔵を輝くまで磨くクセがあった。

2017-07-09 00:56:52
女児クローズドフォレスト @clo_naegi

特に、手前にやや出てきている、表情にアゲ感のあるお地蔵は磨きやすく、マリンは顔が映るまで磨いてやることがよくあった。

2017-07-09 00:58:36
女児クローズドフォレスト @clo_naegi

仕事先の同僚のミスが原因で上司にお小言を言われた帰り道。静かに限界に達したマリンは「詩人になりてえ」と呟きながら抉れんばかりに地蔵を磨いたのであった。 その日の晩のこと。

2017-07-09 01:02:30
女児クローズドフォレスト @clo_naegi

『アー アー テステス。ンッゴホン アーアーただいま念話のテスト中ミル。 マリンくん、マリンくん聞こえますミル?』 うとうとするものの眠れないなあ、などと思いながら25回目の自発的な寝返りをカウントした頃、マリンの耳に声が届いた。 「幻聴? マリンやばい? クスリ増える??

2017-07-09 01:05:22
女児クローズドフォレスト @clo_naegi

幻聴じゃないミル! わたしはミルキー地蔵。マリンくんがいつも磨いてくれてる美肌地蔵ミル。いつも磨いてくれてアリガト!でもミルキー敏感肌だから、磨くときはシルクがいいミル♥』 「やばい本格派の幻聴」 『幻聴じゃないミル!』 二回目。 『今日はマリンくんにプレゼントがありますミル』

2017-07-09 01:08:03
女児クローズドフォレスト @clo_naegi

『マリンくんは詩人になりたい。アタシそういうの分かっちゃうミル』 「直接言ったもんね」 マリンは諦めて、幻聴の相手をすることにした。

2017-07-09 01:11:57
女児クローズドフォレスト @clo_naegi

それ以上もミルキー分かっちゃうんだな~ミル』 「それ以上。」 『詩をバンバン書いてビルボードでTOP40に入りまくって爆儲けしてマリン御殿を立てて美少年をはべらせて仕事辞めたいミルね?』 「外れだし、詩への理解が甘いのはすごく気になるけど、マリンはその提案に興味があります

2017-07-09 01:14:03
女児クローズドフォレスト @clo_naegi

『そうこなくっちゃ!実はミルキー美肌地蔵の足元には、星型の草があるミル』 「星型の草?」 『そう。その草をよく洗って干して刻んで、炙ってその煙を吸うとあらあら不思議。ミルミル詩の才能が溢れてくるミル』 「つっこんでいい?」 『どうぞミル』

2017-07-09 01:18:21
女児クローズドフォレスト @clo_naegi

幻聴のクセにクスリを勧めてくるの多重構造じゃない?」 「あとそれ合法?」 「野草はばっちいけど、よく洗うというプロセスは気に入りました」 「っていうかそれ、やっぱり詩の才能じゃなくて幻覚だよね???」 『マリンくんは色々なことが気になって繊細な感性の持ち主ミル

2017-07-09 01:21:36
女児クローズドフォレスト @clo_naegi

『まあ、ざっくり言えば今は合法だし、適量なら幻覚じゃないミル。 ただし吸い過ぎ注意!吸いすぎると詩どころじゃなくなっちゃうんだな~一日に草3枚分くらいが適量』 「やっぱクスリじゃん!つきあって損した!!もう寝る!!!!」 『あ、ちょっとまって!ミルキーホントにお礼がしたいの!』

2017-07-09 01:24:40
女児クローズドフォレスト @clo_naegi

幻聴にキレ散らかして疲れたその日は結果としてよく眠れました。

2017-07-09 01:25:25
女児クローズドフォレスト @clo_naegi

さて、話は飛んで、長雨の日が続き、一週間後のマリンの次の休みの日。 ちょっとだけあの幻聴が気になったマリンはミルキー美肌地蔵(仮称)の元へフラリとたちよってみた。すると。

2017-07-09 01:29:12
女児クローズドフォレスト @clo_naegi

「うっわ もじゃもじゃじゃん」 見ると、表情にアゲ感のある例のミルキー美肌地蔵の足元に、草、草、草星型の葉のついた妙な草が生え散らかっていました。

2017-07-09 01:31:46
女児クローズドフォレスト @clo_naegi

「うわ~これか~~なんかたくさん同じのがこんなにあるとグロいっていうか集合体恐怖を感じてヤだな~」 幻聴で聞いた草がこれほどたくさん生えているとは思わず、やや引いて帰ろうとすると、ふと日が陰り、ミルキー美肌地蔵に影を作った。 「絶対持って帰って欲しいミルって聞こえてきそうな顔」

2017-07-09 01:35:03
女児クローズドフォレスト @clo_naegi

マリンは完全防備で軍手を二枚装着して草を摘んで帰り、よく洗うというプロセスを楽しんだ。そして陰干しして3日程が過ぎた。

2017-07-09 01:37:10
女児クローズドフォレスト @clo_naegi

「うーんこれ燃した煙吸うのか~~大丈夫かな~ おくすり手帳に書いたほうがいいかな~」 マリンの脳裏にクスリを増やしたがる主治医の顔が浮かんだ 「ええいままよ」 一吸い、二吸い。 「うーん、香りはいいけど、全然変わらないや」

2017-07-09 01:42:51
女児クローズドフォレスト @clo_naegi

「まあ、幻聴のいうことだし仕方ないか。日記書いて、いまのちょいがっかりした気分を詩にまとめてタンブラーに上げよ

2017-07-09 01:44:40
女児クローズドフォレスト @clo_naegi

3ヶ月後。 マリンのポエムタンブラーはいつのまにか爆ヒット。2ヶ月後には書籍化の話が来て、まとめるだけでいいですから!先生は新作をさあさあ!という押しの強い編集が書籍化し、あっというまにミリオンヒット。時代の寵児になって、眠たげな目の美少年がおしかけ弟子になったのだった。

2017-07-09 01:47:36
女児クローズドフォレスト @clo_naegi

「まあじ?」 ポエムを書きながらマリンは未だに自分の身に起きたことが信じられない。そもそも自分の書くポエムが良いのか悪いのか自分でも判別がつかないまま、口座の桁が増えていく。後ろの座卓では、自分の詩を印刷した紙を口に含んでとろんとした顔の美少年。まるで幻覚のようだ。

2017-07-09 01:52:43
女児クローズドフォレスト @clo_naegi

『先生、先生!新作の調子はどうですか』 「よくもわるくもないですけど、今日は4本くらい書きました」 『ンッんんんん~~~!!先生ッ最ッ高ッッッ!もう次の宣伝打っちゃいますね!ますね!』 LINEの向こうの編集の興奮した顔が浮かんでくる。 やはり幻覚では。

2017-07-09 01:55:42
女児クローズドフォレスト @clo_naegi

そのときだった。 「ピンポーン!」「バァン!!!」 チャイムの音と共に破裂音 「久しぶりだなマリン!!!私のことを覚えていますか!!!」 勢い込んで入ってきたのは 「あ、前職の上司」 一月ほど前に辞めた職場の上司だった。

2017-07-09 01:57:31
女児クローズドフォレスト @clo_naegi

「そうとも!君がやめてからシフトのバランス、全体の統制が乱れて仕事がミスりがち、作業量が落ちがちで正直僕は限界です!!」 細いメガネをクイクイしながら元上司は興奮した。 「あ、なんかすいません」 「いや、その件はもういいです!随分景気良くやってるようじゃないですか」 「はあ」

2017-07-09 02:00:24
女児クローズドフォレスト @clo_naegi

「見ましたよ!!君が地蔵を擦り、草を摘んで炙って煙を吸ってポエムを書き、そして爆ヒットを続けているというそのプロセスを」 「先生ぇ」 眠たげな目の弟子。 「たぶんストーカーだと思うので通報しておきましたぁ」 「グッドジョブだよ、弟子」 「クッ!では時間がないな。手短に。」

2017-07-09 02:02:56